世界でブレイク&賛否!韓国移民のラーメン王、デイビッド・チャンとは?
ドラマやアニメ、映画など膨大な作品が集合しているNetflixの中でも、グルメドキュメンタリーが根強い人気を得ていることは知っているだろうか?
特に、ひとりの男性を複数の料理番組で見かけることに気づく。名前はデイビッド・チャン。『マインド・オブ・シェフ』『アグリー・デリシャス:極上の“食”物語』『デイビッド・チャンの世界を食べつくせ!』と、これまで3番組の案内役を務め、番組の構成にも彼の視点が強く活かされている。
日本料理としてのラーメンなどをアメリカに広めた人物でもあるデイビッド。しかし、日本での知名度は極端に低い。一体、彼は何者なのか? 3つのポイントで紹介しよう。
1:料理業界からは賛否両論、その理由
彼を知るには『アグリー・デリシャス:極上の“食”物語』を見るのが手っ取り早い。ピザやフライドチキン、中華料理など、いわゆるアメリカのB級グルメとして定着しているフードを特集した番組だが、彼の振る舞いはかなり過激だ。
中華特集では、わざわざ現地の高級店に入りながら、それらのメニューを「口に合わない」と吐き出す。ピザ特集では「ドミノ・ピザ」を一流シェフたちのいる前で激賞。化学調味料否定派のセミナーを取材して参加者に反論したり、討論番組に出席してイタリア人シェフ相手に「イタリアンでも食材がアジアならアジア料理だ!」と突っぱねたりもしている。
ボイルしたザリガニ料理を出す店で「蒸したほうがおいしいのに、なぜ茹でる必要が?」と迫ったり、アメリカの伝統的なバーベキュー特集の締めくくりで日本の焼き鳥店を訪れて「最高だ!」と熱く語ったりと、あえて挑発的な演出を見せる。
エリート主義とか気取った連中は嫌いなんだ。自分が好きなものを否定されたくないんだ。「やるな」と言われるとよけいやってやろうと思う
『アグリー・デリシャス:極上の”食”物語』#1「最高のピザとは」より
実際こうした彼の振る舞いは賛否両論らしく、別番組の『マインド・オブ・シェフ』第1シーズンでは彼に冷ややかな目線を向ける人たちがいることも紹介されている。
2:ミシュランの星も持つ、アメリカのラーメン王
彼はアメリカのレストランチェーン「モモフク」の経営者でもある。この名前にピンと来る人もいると思うが、これは日清食品の創業者、安藤百福(あんどう・ももふく)の名前をオマージュしたもの。実際、彼が世に知られるようになったきっかけはニューヨークへのラーメンレストラン出店だったのである。
彼は1977年、アメリカバージニア州生まれのアメリカ人。韓国移民(父方が北朝鮮、母方が韓国)の家庭に育ち、子ども時代はゴルフを学び、大学では宗教学を専攻。料理とは無縁の青年期を送っていた。
しかし大学卒業後、訪日して英語教師をしているときに日本料理の魅力を発見。アメリカで料理専門学校に通いながら日本をたびたび訪れ、特にラーメンを熱心に研究。そしてマンハッタンで4つ星を獲得したこともあるレストラン「Café Boulud」で本格的な修行をしたあと、2004年に「モモフク・ヌードル・バー」をオープンした。
この店は開店直後、ニューヨーク・タイムズ紙の「ラーメンがやって来た、世界中でラーメンをすする音がする」という特集で取り上げられ、たちまち大ヒット。「ベーコンや豚、鶏などからとった濃厚な出汁がアメリカ人の舌にマッチした」と評価されている。
※参考:ジェトロ(日本貿易振興機構) 「外食産業の動向 ‐ 本物志向の日本食レストランとフレンチレストランの成功」
その後、デイビッド・チャンはラーメン店だけでなく、ベーカリー専門店「モモフク・ミルク・バー」やフライドチキンサンドイッチ専門店「フク」などを幅広く展開。特に高級レストラン「Ko」は、フランスの伝統料理と日本の懐石料理をミックスさせ、2009年にミシュラン2つ星を獲得。一流レストランの仲間入りを果たしている。
現在はアメリカだけでなくカナダやオーストラリアなどにも進出。『Bon Appétit』誌の「アメリカで最も重要なレストラン20」に選ばれるだけでなく、本人も『TIME』の「2010年100人の最も影響力のある人々」に選出された。
高級フランス料理からラーメンまで、幅広い経験を活かしたレストラン作りをしているデイビッド。特に日本や韓国、中国といったアジア系レシピをフレンチの技術でアレンジして、アメリカ人の味覚に合うよう調整している点が、人気を獲得している理由と言えるだろう。
『マインド・オブ・シェフ』の第1シーズンでは、ラーメンのインスタント麺を使ったパスタ作りや、鰹節のアイデアを元にした“豚節”を考案するなど、さまざまなレシピを実践。常に伝統的な調理法に疑問を持ち、さまざまな可能性を試そうとする、異端の料理人なのだ。
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