もう還暦!?トム・クルーズの肉体美と超ドヤ顔『トップガン マーヴェリック』ストイック過ぎる男はどこへ行く?

2022.5.28
トム・クルーズ『トップガン マーヴェリック』

文=バフィー吉川 編集=田島太陽


構想から30年以上、紆余曲折ありながら完成したかと思えば、今度は新型コロナの影響によって公開延期がつづくという不幸がつづいてしまった、トム・クルーズ主演作『トップガン マーヴェリック』が5月27日にようやく公開された。

本作では全編を通して、これでもかと「若い俳優には、まだまだ負けませんよ!」と言わんばかりの「ドヤ顔」が炸裂している。そしてなぜかそこにはものすごい説得力がある。

トム・クルーズ『トップガン マーヴェリック』
5月20日にロンドンで行われた『トップガン マーヴェリック』プレミアイベントでのトム・クルーズ

5月28日まで開催中の第75回カンヌ国際映画祭では、長年の功績を讃えられサプライズで“名誉パルム・ドール”が贈られたことでも話題となった。

1962年7月3日生まれでもうすぐ還暦を迎える、トム・クルーズの魅力とドヤ顔の歴史を解説する。

役に対してストイック過ぎるトム・クルーズの魅力

『トップガン マーヴェリック』は、続編のロールモデルのような作品である。「これが観たかったんだろっ!!」と言われているようで癪に障る部分もあるものの、確かに見事なまでに、観客の心の掴み方を理解し尽くしているかのようなシーンの連続だ。

そして間違いなく、トム・クルーズ映画だ。主演だから当たり前と思うかもしれないが、企画段階では、一歩引いた立場から若手を育成する予定だったという。実際に全体的な構成としてはそうなっているものの、誰もがこう思うはずだ「やっぱり、あんたが一番活躍するのか!」と。

トム・クルーズ『トップガン マーヴェリック』
(c)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

日本においてトム・クルーズといえば、トップスターというイメージがあるかもしれないが、アメリカでのイメージは少し違っている。どちらかといえば変人としてのイメージが強い。その理由としては、彼がサイエントロジーという新興宗教の信者でもあるからだ。

トムが信者であることは有名な話であったが、人気番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』(日本でたとえるなら『徹子の部屋』)でふざけて暴れ回ったことをきっかけに、マスコミがサイエントロジーと奇行を紐づけ、ゴジップ誌はこぞってトムを標的にし始めた。そういったマイナスのイメージがつきまとう俳優であることは間違いないが、その一方で、役に対してのストイックさが評価されているのも事実。

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)では、危険なスタントを当たり前のようにこなし、役のためにヘリのライセンスまで取得する徹底ぶり。命をかけたスタントで有名なジャッキー・チェン化しているとまで言われており、実際に彼を意識していることも伝わってくる。

なぜトムは、ここまでストイックに役を演じようとするのだろうか。それは彼の高校時代から始まっていたといえるだろう。

「イケメン俳優」としての名声には満足せず、挑戦をつづけた

映画『トップガン マーヴェリック』 (c)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
(c)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

高校時代はレスリング部のホープとして、新聞に取り上げられるほどの活躍を見せていたが、膝を痛めたことでレスリングは断念。未来が閉ざされたトムを救ったのは、学校の演劇オーディションに合格したことだった。それ以降、演技にのめり込むようになったトムは、アルバイトで貯めた2000ドルを握り締めニューヨークに行き、演技の勉強に明け暮れる日々を送った。

『エンドレス・ラブ』(1981)や『アウトサイダー』(1983)といった、若手スターの登竜門的ともいえる学園コメディに出演しながら、『トップガン』(1986)のヒットに恵まれ、さらに同年に公開された『ハスラー2』も話題となったことで、一躍スターの仲間入りをした。しかし、演技が認められたというより、イケメン俳優として注目を集めたことを自覚していたため、名声に妥協せず、さまざまな役に挑戦しつづけていた。

中でも印象的だったのは、反戦映画『7月4日に生まれて』(1976)で、1年間車椅子に乗って生活することで徹底的に役作りをして、実在する人物ロン・コーヴィックを見事に演じたことだ。その演技が評価され、アカデミー賞にノミネートされたことで実力を見せつけた。

『トップガン マーヴェリック』でも、重力に耐えるために目隠しをされた状態で水タンクに入れられて、そこから脱出するという過酷な訓練を行うなど、ストイックさは健在。それは共演の若手俳優が自分たちよりも「若さ」を感じたほど。

つまりドヤ顔の説得力は、ストイックに突き進んできた俳優人生そのものと、世間に対して「見てみろ! 私はまだまだスターだ!!」という念が込められているからであり、やたら映し出される肉体美を強調した裸のシーンも、若い世代に肉体でも負けていないというメッセージなのだろう。

彼のドヤ顔の歴史を振り返るために、過去の作品を3つ紹介しよう。

これが原点?トム・クルーズの名「ドヤ顔」映画3選

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