茶髪のストレートヘアに黒のライダースジャケット、隣にはスーツ眼鏡の相方(安部紀克)。
お笑い芸人、納言・薄幸を想像したとき、みなさんの頭に浮かぶのはこの姿ではないでしょうか。
今でこそイメージが定着していますが、芸歴11年の間で幸さんの風貌はかなり変化しています。
今回は、過去の宣材写真と共に、その歴史を振り返ってもらいました。
2010年〜2015年:移りゆくオーブ
最近、宣材写真を撮り直した。
宣材写真というのは、芸能事務所が所属タレントの売り込みの際に使ったり、テレビ番組等の出演者紹介に使われたりする、タレントの名刺代わりになる写真の事。
私も気付けば芸歴11年目。
何度か宣材写真を撮り直してきた。
今でこそ事務所がプロのカメラマンさんを呼んでくれて、ピカピカな照明や、シワひとつないバックスクリーンを使って、綺麗な宣材写真を撮ってくれる様になった。
でも、芸人になりたての頃は携帯で撮った簡易的なものだった。
一番初めの宣材写真は、事務所所属オーディションの為に事務所に履歴書と共に送った、自分達で撮った写真だった。
「朝一番」という、昔組んでいたコンビのもの。
酷い。とにかく酷い。
記憶が正しければ、私の一人暮らししていたワンルームのボロアパートで、カラーボックスの上に携帯を置いて、セルフタイマーで撮った写真だ。
背景の白い壁は、白の中で一番きったねえ。
白と呼んで良いのかも危うい。
床には、たんぽぽの綿毛の出来損ないみたいな謎のごみが落ちている。
あと私、髪の毛がへそまである。
下品が過ぎる髪の長さ。
へそ下のシャツは乱れて、肌が見えている。
腹見せてニコリじゃないんだよ。
いやらしい。
そして、腕うるせえ。
右腕には1本の髪ゴム、左腕には3本の髪ゴムと、怪しい数珠みたいなのをつけている。
落ち着かせろ。腕を。
何より、嘘でも良いから靴履けや。
出来損ないのゴミが落ちている汚れた床のアパート。
靴履いたって脱いだって一緒だろ。
生意気に、土禁です~!じゃないんだよ。
この写真をオッケーとした当時の自分を、高熱出るまで叱り倒してやりたい。
この時の私は18歳位だろうか。
プロ意識のプの字もないお嬢ちゃんは、明日にでも売れるだろうと思っていた。
残念ながら、相方のズボンの柄がオーブにしか見えない様な、心霊写真さながらの宣材写真を使っている芸人を出してやろうだなんていう、偏差値の低いテレビ番組ある訳ないのだ。
もちろん、売れず。
次に宣材写真を撮ったのは、事務所にネタ見せに行った時。
突然マネージャーに
「宣材撮るか」
と言われて撮ったもの。
初めの物よりまだ写りはマシなものの、いくらなんでも、私服過ぎる。
私服過ぎる上に、私服がちょっと、はしたない。
何なんだ。
その中に着ている赤と白の『ウォーリーをさがせ!』のタンクトップは。
ヨレヨレ過ぎるだろ。
ボディビルダーに一回着させたんか。
まあ当時の私はこういった、はしたない私服を好んで着ていた。
思い返すと、まだこれでもマシな位私服がはしたなかった。
Tシャツの袖や、ショートパンツをわざとハサミで大きく切って、腕や足が出る様に、はしたな加工してたりもした。
この上なく私服が、とてつもなく、はしたなかった。
親に土下座案件です!
本当に、ほんの少しだけだけど、芸人というプロ意識を持ち始めたこの頃。
まさかネタ見せついでに宣材写真を撮るとは思わずに、私服で行って、私服でネタ見せをしてしまった事に、流石に深く反省した。
トラウマと言うと聞こえが悪いけど、これがキッカケで、今でもラジオ等姿が見えなくても、衣装なしと指定される現場以外は、一応衣装を持っていく癖がついた。
とても良い経験になった。
この時の私は20歳頃だろうか。
事務所に所属も出来た事だし、そろそろ勝手に売れると確信していた。
だが、またしても残念ながら、相方のオーブが見やすくなり、オーブの数も大量になった宣材写真を使っている芸人を出してやろうだなんていう、べらぼうたわけ者テレビ番組ある訳ないのだ。
もちのろんで、売れず。
その次の宣材写真。
やっとプロのカメラマンさんに撮って貰う事が出来た。
よく覚えている。
若手達が十数組事務所に集まり、1組10分も無い短い時間で次々に宣材写真を撮って貰う。
タイトなスケジュール。
もちろんメイクも自前。
それでも、凄く嬉しかった。
明るい照明に、真っ白いバックスクリーン。
こりゃあ芸能人だ!
いつもより濃いめにメイクをして撮ってもらう。
“売れそう! はい、売れそう! オッケー、もう売れる!”
ハイスペースでカメラのシャッターが切られる。
一回一回、シャッター音が鳴る度に、そう感じていた。
“売れるー!!!!”
ただ。
今見返すと、靴、めっちゃおもんない。
過去2回の宣材写真に比べたら、靴も履いてる。衣装も着ている。
靴も履いて衣装も着ている万全の体制で挑んだこの時の宣材写真。
何で漫才するっつってんのに、ロック歌う時サンダル履いちゃってんだ。
シャッター音の回数以上に、テレビに出られる事を夢見ていた。
でも、やっぱ今回も残念な事に、相方のオーブが、私の全身に移った所で「オーブ宣材芸人大集合!」という番組がない限り、テレビ番組に出られる訳ないのだ。
今は親友並みに仲良くなったけど、この写真を撮って少し経った頃から、当時の相方とのお笑いに対する意識の違いが原因で、解散してしまった。
売れるというのは、そう簡単には行かない様だ。
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