さんまさんは、絶対に目が8個ぐらいある|納言・薄幸の酔いどれコラム#7

2021.10.31

芸人をやっていると、“まさか”と思う出来事に遭遇する事がたまにある。

今年の10月から、NHKで子供達にも分かりやすくSDGsを説明する『リフォーマーズの杖』という番組にレギュラーで出させて貰う事になった。
他のメンバーは、さらば青春の光の森田さん、ランジャタイの国崎さん、空気階段のもぐら、おかずクラブのオカリナさん、ゆにばーすのはらさん、そして私の6人。

第七世代のヤニカス女ダルマ代表として活動している私が、まさかNHKの教育番組に出られる日が来るなんて、思いもしなかった。
3年ほど前までは、NHKに出禁をくらっていると思っていたけど、そうじゃなかったみたいだ。
NHKに出られなかったのは、シンプルに全然売れていなかったかららしい。

『リフォーマーズの杖』の収録の日は、森田さん、もぐら、私という、煙草の事しか脳みそに入っていない愉快なニコチン3人組が、NHKの喫煙所を占領する。

NHKの食堂では、番組から配布される食事券を満額まで使い切ろうと、レギュラーメンバー大の大人6人が、指を折りながら絶対に足が出ない様、飯の値段を計算しながら注文する。
満額を目指すあまり、ラーメンだけだと余ってしまうから、味噌ラーメンに味噌汁という、奇妙奇天烈、味噌過ぎ注文をしてしまった。
なっちゃうかな~とは思っていたけど、案の定、食後はお腹ちゃっぽんちゃぽんに、なっちゃった。

とてもじゃないけど教育番組とは思えない、光景とメンバー。
芸人をしているとそういう“まさか”の事もあるんだな、としみじみ思う。


“凄い嫌なタイプの関西人”の正体は……

大阪での仕事を終え、帰りの新幹線での事。

新幹線での私は、席に座っている分数とちょうど同じ分数、喫煙所で立っている。
新大阪から乗車してすぐ、喫煙所に向かう。
セブンスターメンソール12ミリを吸い終わり、席に戻る途中、明らかに自分の席から私をジロジロと見てくる人がいた。

普段街なんかで、私に気付いた人が声を掛けてくれる事は、凄く嬉しい。
しかし、一年ほど前に新幹線で寝ていて、ふと目を覚ますと、チュウされてた?って位の至近距離で、バシャバシャと写真を撮られていた経験がある。

私が目を覚ました事に気付くと、そのカメラ小僧は
「ギャー! びっくりした!」
そう言って、アニメの様に逃げて行った。

何でお前がびっくりしちゃうんだよ。
私にもびっくりさせてくれよ。
そんなちょっとしたトラウマがある為、新幹線で顔がバレるのが少し苦手だったりする。

なるべく下を向いて、そのジロジロと見てくる人の席を通り過ぎようとすると
「やっぱお前やな!!!」
その人が、そう声を掛けてきた。

“やだーー。凄い嫌なタイプの関西人だー”

仕方ないから返事をしようとパッと顔を上げると、なんと、めちゃくちゃさんまさんだった。
本を開きながら眼鏡をかけた、明石家さんまさんが座っていた。

「ギャー! びっくりした!」
流石にこの時ばかりは、いつかのカメラ小僧と同じリアクションを取ってしまった。

お疲れ様です、と挨拶をすると、さんまさんは
「何してたん?」
そう質問してきた。

「大阪で『座王』でした。大喜利番組です」
私が質問に答えると
「ハーッハッハッ!! ヒー! ハッハ!」
何がおもろいんだか分からないけど、ウケた。

ひと通り笑い終わると
「ほな、また宜しくー」
いつもの最後の楽屋挨拶の時と同じ言葉を掛けてくれて、私も自分の席に戻る。

さんまさんだったなあ。
ずっとテレビの中の人、雲の上の存在だったさんまさんの方から気付いてくれて、声を掛けてくれるだなんて、少し前だったら考えられない事だ。
席に戻ってからもしばらく、心臓がバクバクいっていた。
嬉しいけど、よくよく考えると何でさんまさんから気付いちゃうんだ。
本を開いてたって事は、読書中だったはずなのに、どうして喫煙所から戻る私を発見出来たのだろうか。

この日、私は気付いた。
さんまさんは絶対に目が8個ぐらいある。

さんまさんが同じ車両に居ると思うと、ずっと軽く緊張していた。
東京に着き、その日はもう1本NHKのネタ番組の収録があったので、NHKに向かう。
ネタの収録中、初めてネタをぶっ飛ばした。
軽飛ばしとかそんなレベルじゃない、超絶ぶっ飛ばし。
街の悪口を言う訳でもなく、無言でただただ煙草を吸うポーズを取っているだけの、謎時間を作ってしまった。
それは、ただの煙草休憩だ。

まあコレは仕方がない。

大阪で収録1本、東京で1本。
事務所のスケジュール的には収録2本だけど、新幹線の同じ車両にさんまさんが居たから、実質、収録12本撮った計算に、なる。
絶対に、なる。

1日で収録12本の12本目だ。
疲れが出て、多少ネタを飛ばすのも、仕方ない事だとしよう。

そんな、ネタをぶっ飛ばして、ネタ中に煙草休憩を取ってしまったのにもかかわらず、レギュラー番組を持たせてくれたNHKに、恩を返せる様に『リフォーマーズの杖』は精一杯頑張りたいと思う。

連載納言・薄幸の酔いどれコラムは、毎月1回の更新予定です。


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薄幸(納言)

(すすき・みゆき)お笑い芸人。1993年生まれ、千葉県出身。安部紀克との男女コンビ「納言」のメンバー。「三茶の女は返事が小せえな」「渋谷はもうバイオハザードみてえな街だな」など“街ディス”ネタが人気のコンビ。バラエティでは薄幸のヘビースモーカーっぷりや大酒飲みのやさぐれキャラクターにも注目が集まって..

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