「うっせぇわ」のスマッシュヒットにより、一躍脚光を浴びることとなった音楽プロデューサーのsyudou。
日本独自に発展を遂げた宅録文化を下地に、現代の暗部を炙り出すようなリリックの切れ味と、まるで殴り書きのごときスピード感、そして鬱憤晴らし的な痛快感が魅力の音楽家だと感じる。
とりわけ昨年発表されたアルバム 『必死』の表題曲が素晴らしかった。
※この記事は『クイック・ジャパン』vol.156に掲載のコラムを転載したものです。
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笑わせたやつが勝ち

まわりに当たり散らす言葉を過剰に並べて、自暴自棄に陥る歌い手を演じてみせる。ヒップホップカルチャーの影響を色濃く感じさせるエッジの効いたリズムとの相性も抜群だ。「うっせぇわ」にしても、あの乱高下するメロディの破天荒っぷり~やけくそ感と、それを表現するAdoの歌唱力が見事にマッチしていてクセになった。
ボカロシーンのなかでもかなりの異端児であろうが、曲も言葉も歌声も、すべてのパラメータが同等に振り切れているため多くの人々に届いたのだと思う。
さて、そんなsyudouの新曲「爆笑」は、本人がリスペクトを捧げるとある実在の人物をモチーフに、その人物についての“テーマソングを作った的なノリ“で制作したという。
ネットではそれが誰のことなのかと考察が広がっているが、お笑いコンビのマヂカルラブリーだとする説が濃厚のようだ。『M-1グランプリ』の入場曲のオマージュであったり、野田クリスタルが数年前に発表したアルバムのタイトルが歌詞に使われているため、おそらくそうなのだろう。
決勝で最下位を経験してからの悲願の優勝という、“結果で見返した“マヂラブに目をつける着眼点も、物議を醸す作風でありながらヒットを飛ばした今の彼だからこそ説得力が増す。
サビのキャッチーさは言うまでもなく、途中で三拍子に切り替わる大胆な展開や、語感の気持ち良さ、ボーカルの細かい表現方法など、ディテールにも特筆すべき点は多い。
だがなにより、型破りなネタで漫才論争を巻き起こしたマヂラブに、シンパシーを抱いているということそれこそが、彼の音楽に対するある種のアティチュードの表出であり、リスナーから音楽関係者、ひいては表現者一般をも含めた“圧倒的に多数の人“へ向けた己の生き様を誇示する一曲として受け取れる。
どんなネタでも笑わせた者勝ちのお笑いの世界。どんな曲でもヒットした者勝ちの音楽の世界。音楽でオーディエンスの“爆笑“を掻っさらったsyudouの、高らかな雄たけびがここにある。
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