ついに訪れる悲劇
ヴィンチェンツォにやられっぱなしのバベルグループ会長のチャン・ハンソク(オク・テギョン)と悪徳弁護士のチェ・ミョンヒ(キム・ヨジン)は、クムガ・プラザの爆破を狙うも失敗。いよいよ、ヴィンチェンツォにとって大切なもの──家族を狙う。
まずはオ・ギョンジャに自ら接近するハンソク。たっぷり彼女の身の上話を聞き出した上で、手にかけようとするのだから真性のサイコパスである。
主要登場人物たちの親子関係は三者三様だ。生まれて初めて母親を大事にする機会を得たヴィンチェンツォ。父親を大事にすることができないまま失ってしまったチャヨン。父親に憎まれつづけ、その父親を自らの手で殺したハンソク。
チャヨンがヴィンチェンツォの親子関係をいち早く見抜き、親孝行するように世話を焼くのは自分が父親にそうする機会がなかったから。ハンソクがヴィンチェンツォの母親を虫を殺すかのように殺してしまうのは、親の愛情をまったく知らないからだ。
そしてついに悲劇が訪れる。ミョンヒは刑務所から出所したばかりのカン・ホチョル(イ・ギュソプ)を操ると、オ・ギョンジャを殺害してしまったのだ。ハンソクもサイコパスなら、一緒に喜びのダンスを踊るミョンヒも明らかに異常者だ。ダブル・サイコパス。
病院を訪れるヴィンチェンツォがスローモーションになる。彼の顔を包む青い光。動かない母親を覆った白い布。数値を示さないバイタルセンサー。床に落ちている親子の写真。ヴィンチェンツォは、ベッドにゆっくり跪き、温もりを失った母の手を握り締める。
しかし、ヴィンチェンツォは悲しみに暮れることはない。すぐに復讐の準備を行う。襟を大きく開き、オールバックに固めたヴィンチェンツォは、イタリアで暗殺者を虫のように殺していたときのような殺意の塊と化した。カンを容赦なく殴りつけ、ライターを使って生爪をひとつずつ潰す拷問を行う。
「理解してくれ。俺は母親を殺されたんだ」
カンに先導させ、血まみれのまま、たったひとりでハンソクの屋敷に乗り込むヴィンチェンツォ。しかし、その姿は魂を失った夢遊病者のようにも見える。アクションの爽快さより、暴力の痛みを強く感じさせる。
屋敷の中で祝杯を上げながら、内輪揉めをつづけるハンソク、ミョンヒたち。そこへ外から飛び込んできたのは、血まみれのカン。ヴィンチェンツォはうしろから脳天を銃で撃ち抜く! 返り血を浴びて絶叫するミョンヒ。銃口はまっすぐハンソクに向けられる。
これだけハードな演出を施しているのが、韓国でも希少な存在である女性演出家のキム・ヒウォン監督だということに、あらためて驚かされる。繊細さと激しさに魅了されつつ、ドラマはつづくのである。デデン!
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