男パク・ソクド、ここにあり
男気を見せたのは、かつてバベル・グループの企業舎弟だったが、今はすっかりクムガ・プラザの一員となったパク・ソクド(キム・ヨンウン)。侵入者に果敢に立ち向かい、得意の柔術で捕獲する。
「パク・ソクドをなめるなよ。クムガ洞のヌートリアだ。狩りの本能と生命力に優れてる」
カッコよくキメたつもりだったが、ホン・チャヨン(チョン・ヨビン)に「ヌートリアは大量に駆除された」と血も涙もないツッコミを入れられるのはご愛嬌。真犯人のアジトを襲撃するときも大活躍を見せ、ヴィンチェンツォには「バイバイバルーン」のチラシのモデルになってくれと懇願する(嫌がりながらモデルになるヴィンチェンツォの姿がたまらなくおかしい)。第1話の登場シーンから、まさかこんな友情が育まれるとは思わなかったよ。
パク・ソクドを演じるキム・ヨンウンは、韓国で“演劇界のアイドル”と呼ばれるほどの人気と実力の持ち主。実際、80年代には舞台に立つ彼のファンクラブがあったそう。現在は脇役として活躍中で、期待の新作ドラマ『ハピネス』への出演も発表されている。
クリーニング屋のホンシク社長(チェ・ドムクン)も頼りになる男だ。次々にピンチを背負うヴィンチェンツォに対して、他人のために働いてばかりいるからだと声をかけるホンシク社長。彼自身、ヤクザ組織から足を洗ったのは、「誰の役にも立ってないと気づいたから」だったという。彼はヴィンチェンツォにこう声をかける。
「頼みがあるんだ。足を洗うとか、やり直すとか、言わないでくれ。今のまま必死に生きてこそ、誰かの役に立てる」
自分たちの利益を追求し、自分の立場を守るために仲間割れをするバベルグループの面々を「利己的」だとすると、他人のために役に立つことに喜びを感じ、他人の幸せを自分の幸せのように喜ぶクムガ・プラザの人たちは、「利他的」と言える。利己的だったヴィンチェンツォとチャヨンも、クムガ・プラザに居を構えてから、徐々に利他的になっていった。彼らの心の中心にいるのは、誰よりも他人のために汗をかいていた今は亡きチャヨンの父親、ホン・ユチャン(ユ・ジェミョン)なのだろう。
30年越しに通い合う母と子の愛
ヴィンチェンツォはただの善人ではない。紛れもない悪党である。「オ社長が殺されると予想してたわね」とチャヨンが言うと、あっさり肯定してみせる。何食わぬ顔で人殺し(殺したのは自分ではないが、殺したも同然だ)の話をしたあと、出かけた先はヴィンチェンツォの本当の母、オ・ギョンジャ(ユン・ボクイン)が入院している病院。悪の部分と善の部分がひとりの人間に同居している。
母親と一緒に出かけたのは写真館だった。チャヨンがヴィンチェンツォを無理やり引っ張って3人で撮り、最後は親子ふたりで写真を撮らせる。自然に目が潤む母。ヴィンチェンツォもいつしか目頭を熱くしている。
ふたりきりになり、生き別れた息子への愛を語る母。いつか息子と会えたら話したいことがあるのだという。
「“迎えに来ると約束したのに、守れなくてごめんね。あなたのことを、1日だって忘れたことはなかった”と」
30年越しの告白を聞き、こんなに泣くかというぐらい声を殺して泣くヴィンチェンツォ。車椅子の背後にいるから、母親からは彼の涙は見えないというのがうまい。病室では初めてのハグ。しかし、穏やかな時間は、すべて悲劇の序曲だった。
ここからは首筋に鋭利なナイフを当てられているような気分で、ドラマの展開を見守ることになる。
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