結婚のほかに新しい男女の関係の形がある
『カルテット』には「愛してるけど、好きじゃない」と言って別離した真紀と幹生(宮藤官九郎)という夫婦が登場したが、とわ子と三人の元夫たちとの関係のような選択肢があれば彼らも救われたのかもしれない。『最高の離婚』には「愛情と生活はいつもぶつかって、なんと言うかそれは私が生きる上で抱える、とても厄介な病です」という言葉が出てきたが、とわ子と三人の元夫たちとの関係は「厄介な病」を解決するものなのかもしれない。30代前半だった『最高の離婚』の光生(瑛太)とも結夏(尾野真千子)とも、30代後半だった真紀と幹生とも違う、40代になってからの、結婚とか恋愛とかセックスが絡まないオルタナティブな人間関係。結婚指輪の代わりに「幸福を運ぶ虫」のカナブンがとわ子の薬指に止まっていた9話のラストシーンは、結婚のほかに新しい男女の関係の形があるという象徴なんじゃないだろうか。
とわ子と元夫たちとの関係は、傍から見るとはっきりしなくて、未練がましくて、ぐじゅぐじゅしたものかもしれない。「3個をきれいに4人で分けるのは無理っしょ」と若者たちがショートケーキをぐじゅぐじゅにして分け合う場面があるが、何もかも数字ですっぱり割り切るのではなく、楽しい思い出を作りながらあたたかな人間関係を作っていければそれでいいんじゃないか。『大豆田とわ子と三人の元夫』は、そんなことを囁きかけているようなドラマなんだと思う。
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