『キングオブコント2018』で優勝し、現在テレビで引っ張りだことなっているハナコ岡部大。キャッチーな動きと表情で人気を博し、宝島社から絵本も出しているひょっこりはん。無名の状態から一躍『キングオブコント2017』で準優勝に輝いたにゃんこスター・アンゴラ村長。実は、上述した彼らはみな、「早稲田大学お笑い工房LUDO(ルード)」というお笑いサークル出身である。
LUDO出身の芸人はほかにも、『平成30年度NHK新人お笑い大賞』で優勝したGパンパンダや、『ワタナベお笑いNo.1決定戦2021』で優勝したゼンモンキー・荻野将太朗、『NSC大ライブTOKYO 2020』で優勝したゴヤ、ウッディのモノマネで注目を集めてYouTubeチャンネルの登録者が5万人を超えるラパルフェなど、テレビ、劇場、YouTubeと多方面で活躍している。
なぜひとつのサークルから、こんなにも多くの人気芸人が輩出されるのだろうか。現役のサークルメンバーたちから取ったアンケートも交えつつ、その理由について考察したい。
そもそもLUDOとは?
お笑い好きの間では徐々に浸透しつつあるものの、世間から見れば未だ小さなコミュニティである「大学お笑い」という世界。そこからさらにひとつのサークルに絞って取り上げるのは、ニッチなテーマだと理解した上で書きたいと思う。いや、書かせてほしい。
「早稲田大学お笑い工房LUDO」ができたのは1998年。サークル員の数は現在300人を超え、主な出身者にはハナコ・岡部、ひょっこりはん、にゃんこスター・アンゴラ村長などがいる。サークルの活動としては、4月の新歓ライブから始まり、5月には1年生のお披露目ライブ、夏の合宿ではスタッフ演者交えてのネタ披露があり、冬のクリパ(クリスマスパーティー)でもネタを披露する場が……
……と書きたいことは山ほどあるのだが、今回はそういった横並びの情報ではなく、LUDOがなぜ多くの人気芸人を輩出しているのかという理由について考えたい。「これをすれば売れる10カ条」的なやたらタイトルの字が大きいビジネス本のようなことは言いたくないが、LUDOには、大学お笑いという狭い世界だけではなくプロの世界でも人気芸人を生み出すという点において、大切な要素が詰まっているのではないかと思うのだ。
縦のつながりが深く、先輩が後輩の“個性”を見出す環境
現役のLUDO生に「LUDOの魅力は?」という質問をしたところ、「先輩とのつながり」に言及するコメントが多く寄せられた。たとえば以下のようなものだ。
・先輩方みんながよりおもしろいものを作れるように環境づくりをしてくださっている(1年 モクテル 高塚)
・OBが豊富(4年 朝飯亭かれゑ)
・多くの人とコンビを組める(2年 フジヤマ/裏町トレモロ イシカワ)
お笑いサークルでは在学中に、ひとつのコンビだけではなく複数のユニットを組むことが多く、その中で自分にどういったネタが向いているかを自然と学んでいく。私自身も青学のお笑いサークル所属時代には男女コンビや4人組の集団コント、女の子コンビなど、さまざまなユニットでネタをしたことがあるのだが、LUDOは特に先輩後輩でユニットを組む人が多いように思う。
定期ライブや大会、他大学との対決ライブなど、ほかのお笑いサークルと比べてライブ数の多いLUDOでは、ユニットを組む機会自体が多い。中でも学園祭はいい機会だそうで、ゴヤのやまじくんが4年生のときに早稲田祭で後輩と10組近い数のユニットを組んだという話を聞いて震えたことがある。
先輩とユニットを組むメリットは多い。ネタの構成や漫才の所作など基礎的なことを教えてもらえるということもあるが、何より大きいメリットは、先輩が後輩の個性を見出してくれるということである。
自分の好きな系統のネタが自分に合っているとは限らない。学生芸人になりたてのころは、好きな芸人のテイストに近いネタをする人が多いが、ウケるネタは、その人が好きなものというよりはその人に合っているものだということが多い。私自身も中学生のころから囲碁将棋に憧れつづけ、1年生のときは文田(大介)さんを意識したようなボケをしていた時代もあったのだが、最終的にウケるようになったときには、めちゃくちゃイロモノ系のツッコミをしていた。
同期とだけでユニットを組んでネタ見せをしていると客観的視点に欠けることが多いが、先輩が一緒にいると、より俯瞰的に自分のことを知ることができる。
LUDOが配信しているWEBラジオ番組『元気モリモリ!もりもりラジオ』の第5回で、ゼンモンキーの荻野くんが「自分が言ったらいいセリフのボキャブラリーは、だいたいダダダダンス(先輩と同期と組んでいたトリオ)でもらったものの延長線上にある」と言っていたのがとても印象に残っている。「自分がどんなキャラクターでどんな言葉を言ったらいいのか」というのを学生時代に会得していることは、プロの世界で活躍する上で大きな強みになるのではないだろうか。
お笑いサークルは、その大学に通う学生しか入れないものと、どの大学に所属していても入れるものがある。私が所属していた青山学院大学ナショグルお笑い愛好会は、(基本的に)青学生しか入ることができないのだが、LUDOはどの大学であっても入ることが可能だ。
その結果、LUDOの所属人数は他サークルと比べて圧倒的に多く、現役生へのアンケートを見ても、人数の多さがサークルとしての魅力度を増し、いい循環を生んでいることがうかがえる。
・インカレなので、他大でも入りやすそうだった。(2年 クラシキ/フジヤマ 大竹)
・人数が多いので幅広い芸風の人に出逢えて刺激が大きい。(1年 イズミ 高瀬)
・いろいろなお笑いを受け入れてくれる。(4年 おみそしる。 渡辺)
さらには、こんな意見も。
・人が多く、コンビを自由に組み替えることができるため、多少揉めてもなんとかなる(3年 笹口二丁目 堀)
・いろいろな人と接することができるので、変な人への耐性がつき、奇人でも許容できるようになる(4年 スタッフ ホリウチ)
人数が多いことでいろんなタイプの人に会い、いろんなタイプの芸風が生まれる。幅広い芸風の人に会うというのは、ただ「こんな人もいるのか」と世界が広がるだけでなく、「自分の強みはどういうところにあるのか」と考えるきっかけにもつながるのではないだろうか。
現在LUDOからプロになって活躍している芸人の多くは、学生時代から自分の強みを知っていたように思う。たとえば、「R-1ぐらんぷり」でアマチュアながら決勝に進出したカニササレアヤコさんは、LUDO時代から雅楽という唯一無二の武器を活かしたネタをしていた。現在YouTubeチャンネルの登録者が5万人を超えるラパルフェ都留(拓也)さんも、学生時代から“ウッディに似ている”という、ほかに類を見ないモノマネを発見していた。
ひとつ目の理由とも重なるが、自分を客観的に見ることができるというのは、プロの世界で活躍している人に共通しているポイントだ。LUDOでは、先輩に意見をもらえるだけでなく、いろんな人の存在を通じて自分を俯瞰することにもつながり、自分を生かすにはどのような方法を取ればいいのか、早い段階で気づけるのではないかと思う。
また、「気づき」が早いことは賞レースでもプラスに作用している。オードリーの若林(正恭)さんがラジオで「最近の若手芸人は自分に合うネタの型を見つけるのが早い」と言っていたのを覚えているのだが、LUDOはまさにそれが顕著で、賞レースで結果を出すのも早い。
大学お笑いで一番大きい大会『NOROSHI』では、毎年LUDOの学生芸人が多く決勝に上がっている。もちろん母数が多いというのも大きいのだが、「型を見つけるのが早い」というのも大きいのではないだろうか。実際に大学お笑いで見つけた型を使って、プロの賞レースで結果を出している人も多い。
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