『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中のマンガ『呪術廻戦』(作・芥見下々)を『ジャンプ』大好きライター・さわだが、映画公開(今年の冬らしい)を待ちながら、1巻から隔週で読み直していきます。若手呪術師全員集合、クセキャラ全開の5巻の魅力を考察(5巻までのネタバレを含みます)。
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呪術高等専門学校の交流戦
『ONE PIECE』でいえば、麦わらの一味の成長した力が描かれた「魚人島編」の決着。『グラップラー刃牙』でいえば、最大トーナメントの「全選手入場です!」の回。呪術高等専門学校・京都姉妹校交流会がメインの『呪術廻戦』5巻は、若手呪術師たちの選手名鑑のような一冊となっている。
年に一度の呪術高等専門学校の交流戦の1回戦は、学校が放った呪霊を多く倒したほうが勝ちとなる団体戦。しかし内容は、両校による呪霊なんてお構いなしの潰し合いだった。さらに京都校の生徒たちは、両面宿儺(りょうめんすくな)を宿す虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)を抹殺する命令を受けていた。
存在しないはずの記憶
ストーリー進行を度外視して計6組のバトルが描かれた交流戦。主人公である虎杖悠仁と京都校のボス的存在の東堂葵(とうどう・あおい)というメインイベントから始まった。このふたりといえば、東堂による「存在しない記憶」だろう。
存在しない記憶とは、ありもしない過去を脳内が勝手に作り出してしまうこと。東堂は初対面の虎杖に対して、「どんな女が好み(タイプ)だ?」(正確には4巻のラスト)と問う。これは、東堂にとって呪術師としての資質を測るテストのようのなものらしい。ちなみに東堂の好きなタイプは、「身長(タッパ)と尻(ケツ)がデカイ女がタイプです」だ。
「尻(ケツ)と身長(タッパ)のデカい女の子」
質問に対して虎杖の答えが上のセリフだ。同じ趣味でさらに身長をタッパと呼ぶなど表現方法まで似ていた虎杖に、東堂はいたく感銘を受ける。ここから年も違えば出身地も違うはずの虎杖との青春の思い出を追憶。大好きな高身長アイドル・高田ちゃん(彼女も同級生の設定)に告白し玉砕した東堂は、親友である虎杖にラーメンを奢ってもらうのだった。
こう振り返ればただのギャグ的要素にしか見えない存在しない記憶。しかし、作者である芥見下々がありもしない回想に3ページも使ったこと、「存在しない記憶」というワードが必殺技っぽかったこと(『HUNTER×HUNTER』の念っぽい)、のちにこのワードが再登場することなどから、読者の間で「存在しない記憶」は虎杖の自覚していない術式だと推測された。
結局これは芥見下々が公の場で否定しているのだが、虎杖の特別な能力でなかったともちょっと言い切れない。好きな女性のタイプが一緒だったのは偶然かもしれないが、そもそもバトル前にその質問をする東堂がおかしければ、まじめに答えちゃう虎杖もちょっとおかしい。妙な緊張感のなさや人懐っこさが虎杖の魅力であり、それが東堂の心を動かしたのだ。これにより東堂は、先輩として虎杖に指導するようなかたちでバトルを開始する。
しかし、東堂が一方的に虎杖を気に入っていたのかというとそうでもなさそうだ。呪力の使い方について東堂は、「俺たちは全身全霊で生きている」と表現。この抽象的な言葉から虎杖はコツを掴んで成長する。若いのに身長をタッパって言ったり尻をケツって言ったり、似た言語感覚を持つふたりだ。
きっと違う出会い方をしていたら本当に親友になれていたのかもしれない。
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