『勇者ああああ』神回5選

2021.3.24

文=かんそう 編集=鈴木 梢


2021年3月で放送が終了するゲームバラエティ番組『勇者ああああ』(テレビ東京)。番組が始まってから4年間、ほぼ毎週録画してハードディスクに永久保存するほど「人生の一部」となっていた番組が終了すると聞き、数日は心にポカンと穴が空いていた。しかし、情報解禁後の放送で爆笑しながら「地獄ですよとにかく最終回は。乞うご期待」と終了を伝えるアルコ&ピースの平子祐希と酒井健太やスタッフたちを観て、「ああ、これこそ俺が好きになった『勇者ああああ』だ」と心から安心した。

最後まで適当で、粗暴で、地獄。ハリウッドザコシショウが言うところの「珍棒」のような番組。だからこそP1層(ハチミツ二郎が言った「パチンコ屋に行ってるような奴ら」という意味の造語)に刺さる。かくいう筆者もゴリゴリのP1層だった過去があるので、どこまでもニッチな笑いを追求するこの番組は、パチンコ屋の新台入れ替え日に朝早くから抽選券をゲットにし並ぶような背徳感と中毒性があった。

そんな『勇者ああああ』の4年の放送の中でも個人的に特に好きな回を5つほど紹介したい。

2017年7月14日放送「にわかゲーマー一斉摘発 芸能界ゲーム風紀委員」

アイドル業界にはびこる“にわかゲーマー”を面接形式で追求していくという、現代の魔女狩りとも言うべき悪魔企画。

最初は丁寧に接しながらも核心を突くような質問で徐々に本性をあぶり出していく平子と、相手のことなどおかまいなしに上からガツガツ叩き潰す酒井、自分より格下のタレントに対するアルコ&ピースの攻撃力の高さを存分に味わうことができる。

……のだが、この回のゲスト水沢柚乃は、今までの『ストII』のキャラや『ドラクエ』の呪文も答えられないにわかゲーマーたちとはひと味もふた味も違った。「個体差がある音ゲーの良台を譲りたくなくて、ずっとやりつづけていたら膀胱炎になった」、「学生時代は夕方に起きてゲームセンターに行き、閉店まで過ごして帰って、朝までゲームをやってから寝る生活をつづけていた」など、正真正銘のガチエピソードを披露。「学校から逃れるための手段がゲームだった」と話す水沢に、アルピーのふたりが共鳴。「俺らが守るから」「ひとりじゃない」と励まし、摘発するどころか謎の感動さえ生まれる回となった。

2017年11月3日放送「クイズクロスフェード」

新旧ハードの微妙な移行期間にリリースされたゲームソフトに注目する、クイズ企画の第3回。『勇者ああああ』ではおなじみのハチミツ二郎とハリウッドザコシショウのコンビが生まれた回。ちなみに、前述した「P1層」もこの回に初めて発言された。

初っ端から、『ドラクエ』の敵キャラと見せかけた松居一代や、豊田真由子元議員のモノマネを披露し暴れ狂うザコシショウだが、肝心のクイズは大まじめ。

  • 『スーパーゲームボーイ2』
  • 『糸井重里のバス釣りNo.1』
  • 『スーパーファミリーゲレンデ』
  • 『牧場物語』
  • 『ときめきメモリアル』
  • 『ロックマン&フォルテ』

といった6本のスーパーファミコンソフトから1本だけ紛れている、NINTENDO64より「前に」発売されたソフトを推理するのだが、タイトルの微妙な違和感や衛星放送対応(サテラビュー)の有無など、異常な知識量と洞察力で正解を導き出していくザコシショウ。彼の底知れなさを存分に味わえる回だった。

2018年8月10日放送「輝け!メダル王への道」

メダルゲームのVTRをパチンコ・パチスロ番組のように見せるというP1層のみを刺しにいった「輝け!メダル王への道」。

VTRのMCにP1層知名度100%の木村魚拓と安藤遥を迎え、お侍ちゃん&アイアム野田の芸人チームと制限時間1時間で出玉を競い合い、その様子をアルピーとハチミツ二郎が観るという大渋滞の狂企画で、テロップほぼゼロ、設置機種の紹介、射幸心をバリバリに煽る演出など、MONDO TV視聴者にしかわからないような小ネタの数々に、脳が焼き切れる感覚になった。

今考えると、普通にテレビゲーム目当てで『勇者ああああ』を観ていた視聴者を完全に置き去りにしたこの放送を2018年にしてそれから約3年も番組がつづいたのは紛れもなく「奇跡」としか言いようがない。

2018年12月14日放送「名作ゲーム人狼 クロノ・トリガー」

あるゲームについて話し合うガチファン5人の中から、一夜漬けで情報を詰め込んだふたりのにわかゲーマーを見つけていく「名作ゲーム人狼」の第2回。地上波ではめったに観られないゲームの深い話を聞けるといううれしさと、「狼は誰なのか」を推理する楽しさが両立した良企画。

この回では、ゲストの中になぜかラーメン評論家の石神秀幸がいたことで趣旨がブレかけるのだが、圧倒的なトーク力で場を支配したザ・シーツ降りしきる雨の中で瀬尾、熱量はあるのにそれが伝わらないキズナ武田裕司、ベタな場面ばかり挙げるウルトラトウフのマリッジスターこうもと、ゲーム開発者のような見た目と暗記力で最後まで正体を悟らせなかったひみつスナイパー健ふじこ、と5人全員がそれぞれの役割をまっとうし、ゲームとしてもクイズとしても非常に濃密な回だった。

2020年2月28日/3月5日「勇者ああああ ゲームオブザイヤー2019」

本家ゲーム・オブ・ザ・イヤーに習い、今年一番おもしろかったゲームを各々が発表する「勇者ああああ ゲームオブザイヤー」。

2018年につづき2回目となったこの企画の一番の見所は、なんといってもマヂカルラブリー・野田クリスタルのチョイス。ペンギンズ・ノブオやエレキコミック今立進、放送作家の岐部昌幸、フリーアナウンサーの田口尚平がガチガチの話題作を挙げるなか、野田クリスタルがノミネートしたのがゴリゴリのギャルゲー(エロゲー)『となりに彼女のいる幸せ ~Two Farce~』と『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?2』。放送できない内容がほとんどのなか、ゲームのおもしろさと興奮ポイントをしっかり語る野田クリスタルのギャルゲーに対する熱量とトーク力はもはや松本人志のそれ。

野田クリスタルやハリウッドザコシショウをはじめ、ほかの番組では絶対に観ることができない出演者たちのディープな部分を見られるのが、『勇者ああああ』の大きな魅力のひとつだった。

終了後は配信番組として復活するという。「媒体は未定。視聴率は取らないが金は取る」の言葉どおり有料配信ということだけは決まっており、本当にどこまでもこの番組らしいなと思った。でも、そんな『勇者ああああ』が大好きです。パチンコのサンドに金を突っ込むくらいなら『勇者ああああ』に課金したい。

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