「思ったから歌いたい」を表現し、広く世に届く幸福
じゃあ何を歌うか。自分が本当に思ったことだ。なぜ。それしか歌えないミュージシャンだからだ。本当はネコとか興味ないけど歌ったわけではないし、ネコ飼いたいって歌ったらウケそうだから歌ったわけでもない。ネコ飼いたいと思ったからそう歌った、ということだ。
って、「何を書いているのか俺は」という気がだんだんしてきたが、つまり、「強くそう思った」以上は曲にする、それが「そんなこと歌にしてどうする」と言われるようなしょうもないことであっても、逆に「そんな重たい内面を赤裸々に晒さなくても」というようなしんどいことであっても、等価に、貴賤をつけず、すべて歌う、ということだ。
『You need the Tank-top』には、たとえば、珪藻土マットは水洗いできないことを知ったときの絶望を歌った曲が入っている。何年も貸しっぱなしのDVDを早く返してほしい、と訴える曲も入っている。
というのが、「思ったこと、歌いたいこと」の右端だとすると、左端には、新型コロナウイルス禍の中で、それでもやっぱり自分たちにとってパンクロックは必要なものだと確信する曲(「Give me the Tank-top」)や、祖母が行方不明になり、亡くなったことで、「生と死」というものに向き合った曲(「寿命で死ぬまで」)も入っている。
というふうに、過去の作品の中で最も、「思ったから歌いたい」ことの両端まで、フルレンジで表現することに成功しているアルバムなのである。この作品が、これまでのヤバイTシャツ屋さんのアルバムの中で、最も広く世に届いている、というのは、バンドにとっても、リスナーにとっても、とても幸せなことだと思う。
あとひとつ。というようなリリックのテーマ設定の仕方といい、京都弁丸出しの完全口語体な言葉の綴り方といい、今、日本語ヒップホップとタメ張れる、数少ないロックバンドがヤバイTシャツ屋さんである、という聴き方もできます。
『クイック・ジャパン』vol.152
【表紙&40ページ特集】ヤバイTシャツ屋さん 日常に愛あふれてるやん
▼SPECIAL PHOTO in サンリオピューロランド
▼ヤバイTシャツ屋さんインタビュー「それでも、おもろいことをやる」
▼個人インタビュー「好きなことひとつあればええやん」
こやまたくやと「映像」
しばたありぼぼと「アイドル」
もりもりもとと「バイク」
▼対談
こやまたくや×岡崎体育「真面目に音楽の話をしよう」
▼全国ツアー初日レポート
▼イラスト「Tribute to ヤバイTシャツ屋さん」可哀想に!
▼タナカヒロキ
▼初出し!公式裏設定「タンクトップくんのひみつ」
▼こだわりのアー写アルバム
▼ヤバTの歌詞で振り返る 2010年代のキーワード
▼寿司くんコメント付きMV名鑑
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