3年半の深夜放送に終止符を打ち、2020年10月から毎週土曜日22:30というプライム枠での放送をスタートしたゲームバラエティ番組『勇者ああああ』(テレビ東京)。
MCのアルコ&ピース(平子祐希、酒井健太)はもちろんのこと、ひと癖もふた癖もあるお笑い芸人や文化人たちがゲスト出演することも、うっかりゲームとあんまり関係のない企画だけで放送が終わることも変わらない。
ところが最近、同番組出演者の中で、大きな変化があった人物がいる。同番組の演出・プロデューサー板川侑右が、最近シュッとしたクイズ王の人柄と出演回の思い出を語る。
驚くべきクイズ王の人気ぶり
子供のころからクイズ番組が好きだった。家族全員でテレビを観ているときに親よりも早く正解を叫び、「ゆう君は本当に賢いねえ」と褒められるのが何よりうれしかった。
「勉強ができる」というだけで海外旅行に行けたり、大金が手に入ったりする夢のような世界、それがクイズ番組である。賞金の100万円を手に大喜びするタレントを観ては「芸能人って楽な仕事だなあ、うらやましいなあ」と昔はずっと思っていた。なぜなら、「勉強ができる」だけでチヤホヤされるのはテレビの世界だけ。運動神経が悪く音楽的なセンスもない“受験に必要な5教科のみにステータスを全振り”したガリ勉は、学校の中ではスクールカーストの2軍、いや、3軍にいるしかなかった。少なくとも僕の子供のころは。
しかしここ数年、そんな状況は大きく変わった。日本テレビの『頭脳王』やTBSの『東大王』を観ればわかるが、最近のクイズ王は美男美女ばかり。しかもそれぞれがアイドル的な人気を博しており、「メガネでぽっちゃり」といったステレオタイプのクイズ王はレッドデータブックに載るレベルの絶滅危惧種になっている。
実際、『勇者ああああ』の人気企画「工業高校生クイズ」に『QuizKnock』の伊沢拓司をゲストで呼んだときには、普段ほとんど連絡をしたことがない同期の女性社員からこんなメールをもらった。
「伊沢さんが収録来るなら教えておいてよ!私、めっちゃファンなのに!」
どうやら彼女は伊沢拓司きっかけで『勇者ああああ』を初めて観たらしい。ちなみに、企画をご存じない方のために一応記しておくが、「工業高校生クイズ」というのは “早押しボタンの壊れた回路を早くはんだづけして修理したプレイヤーが勝利”というもはやクイズでもなんでもない純然たるバラエティ企画である。当然、伊沢氏が鮮やかに正解を言い当てて拍手喝采が起きるといったクイズ番組でよくあるシーンは皆無だ。
しかし彼女曰く「内容はどうでもいい、とにかく伊沢さんが出てればそれだけでいい」とのこと。普段はまったく番組を支持してくれない女性視聴者をも取り込んでしまうクイズ王の人気ぶりに僕は驚かされた。勉強をしっかりすればスクールカーストの上位に入れるかもしれない、そんな時代に世の中は突入したのである。