ですよ。は『勇者ああああ』プライム帯進出と共に復活を遂げるのか


ですよ。の初登場とこれまで、そしてこれからの可能性

『エンタの神様』(日本テレビ)で一世を風靡した“0.5発屋芸人”ですよ。が『勇者ああああ』に初めて登場したのは、約2年前に放送した「二郎会VSハリウッド軍団」という企画である。ハチミツ二郎率いる野武士集団“二郎会”とハリウッドザコシショウ率いる地下芸人集団“ハリウッド軍団”がゲームで激突。お笑いを拗らせた一部のおっさん視聴者狙い撃ちのこのコーナーに、ですよ。は二郎会の一員として参加していた。

二郎会。右からハチミツ次郎、関太(タイムマシーン3号)、ですよ。、お侍ちゃん、菊タロー

ですよ。の出番は「ネタ対決」のコーナー。ハリウッドザコシショウと互いにゲームをテーマにしたショートネタを披露し合い、より多くの笑いを取ったほうが勝利というルールである。とはいえ相手はこの手の企画をやらせたら右に出るものはいないハリウッドザコシショウ。当然、ですよ。のポジションは“かませ犬”だった。

次々と笑いを取るザコシショウに対し、おなじみ過ぎるネタで勝負を仕かけていく、ですよ。

「『信長の野望』で吹いてるホラ貝を見つけたからさぁ
そのホラ貝を吹いてみたんだけど……」

その場にいる全員が「チョココロネ」って言うんだろうなと確信。TBSの『東大王』なら「『信長の野望』で吹い……」ぐらいでボタンを押すレベルのサービス問題である。しかしそんな現場の空気を読めない、ですよ。はお構いなしでネタを続行。

「全然音が鳴らないから、おかしいなあ〜と思って
持ってるホラ貝をよ〜く見たんで・す・YO!
そしたら〜SO!チョココロネだったんだYO!
あ〜い!とぅいまて〜ん!」

スタジオに虚しく響く「あ〜い!とぅいまて〜ん!」。笑いをまったく取っていないことに対する謝罪とも受け取れるギャグが終わり、そのままエンディングというタイミングで、ですよ。をチームメンバーに推薦したハチミツ二郎が動いた。

二郎「ですよ。は見えないほうがいい。遠ければ遠いほどおもしろいから」

長年の付き合いで、ですよ。の扱い方を熟知している二郎の言うことである、何か秘策があるに違いない。「遠ければ遠いほどおもしろい」というその言葉を信じ、収録現場から10メートル以上離れたトイレの中に僕は、ですよ。を閉じ込めた。

二郎「じゃあ今から5秒後に叫んで!」

静寂に包まれるスタジオ。

ですよ。「………………………あ〜い…とぅいまて〜ん…」

隣町の運動会ぐらいの音量で聞こえてくる、ですよ。の絶叫。正直何がおもしろいのか言葉で説明はできない、だけどなんだかおもしろい。トイレの中で中年男性がひとり、大声を出している姿を想像するとさらにおもしろくなってくる。

「近所の頭おかしいやつじゃん」

ハリウッドザコシショウがそう呟いた。「あんたが言うなよ」とは思ったが、「あ〜い!とぅいまて〜ん!」の一本槍でテレビの現場にやってくるハートの強さは確かに芸人として常軌を逸している。しかしそれと同時に、「あ〜い!とぅいまて〜ん!」にはまだ無限の可能性があるのかもしれないと僕は感じた。このギャグからはまだまだ味が出る、そんな予感がしたのである。

それから2年間『勇者ああああ』スタッフは、ですよ。の「あ〜い!とぅいまて〜ん!」と言うギャグについてあらゆる可能性を研究してきた。

  • 葬式に列席するときの“ですよ。”
  • 水中を泳ぐときの“ですよ。”
  • 殉職する七曲署の刑事“ですよ。”
  • 武道館公演でアリーナ席を盛り上げる“浜崎ですよ。”

など、あらゆるシチュエーションにおける「あ〜い!とぅいまて〜ん!」を量産。いつしか、ですよ。は確実に笑いを取れる飛び道具として番組になくてはならない存在となった。

もちろん今夜放送するプライム枠1発目の企画にも、ですよ。は出演している。ネタバレになるので内容は伏せるが、今回も、ですよ。は唯一の武器「あ〜い!とぅいまて〜ん!」だけで次々と爆笑をかっさらった。もはや今のですよ。にハリウッドザコシショウの“かませ犬”だったあのころの姿はない。

かつて日本テレビの土曜夜10時台で「神様」として持てはやされた芸人が、今度はテレビ東京の土曜夜10時台で「勇者」として復活を遂げようとしている。偶然にしては、よくできた話だと思うんですよ。

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  • 『勇者ああああ』芸人キャスティング会議

    #【連載】『勇者ああああ』芸人キャスティング会議

    アルコ&ピース平子祐希が番組内で「むせかえるほど安いギャラ」と公言する、テレビ東京の低予算ゲームバラエティ『勇者ああああ』。

    予算がなくたって、テレ東には「金がないなら企画を考える、有名人が出せないなら素人をおもしろく撮る」の伝統芸能がある。

    この連載では、同番組の演出・プロデューサーを務める板川侑右氏が、過去に呼んだ芸人や今呼びたい芸人と、その理由などを明かす。

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