50年を超える『妖怪人間ベム』シリーズの歴史を振り返る

1968年にシリーズの第1作のテレビ放送がスタートし、無国籍風のダークな世界観と「はやく人間になりたい」という3人の妖怪人間の願いの言葉と共に後世まで語り継がれる名作シリーズとなった『妖怪人間ベム』。ここでは、50年を超えるシリーズの歴史を紹介する。

『妖怪人間ベム』（1968年）：人間になるために過酷な旅をつづける異形のヒーローを描いた伝説的アニメ

記念すべきシリーズ第1弾。科学者の実験室で生まれた妖怪人間ベム、ベラ、ベロが各地を放浪しながら邪悪な者に立ち向かう。行く先々で冷たい仕打ちを受けながら、人間のために戦いつづける妖怪人間。

その悲劇性と無国籍なテイスト、主題歌のフレーズ「はやく人間になりたい」も話題を呼んで最高視聴率20.6％のヒット作となる。ベム役の声優は『ルパン三世』の次元大介でおなじみ小林清志。放送後も繰り返しリピートされ、時代を超えて高い人気を獲得した。

『妖怪人間ベム パートII』（1982年）：パイロット版のみで終了した“妖怪人間のその後”を描いた幻の続編

70年代後半よりアニメブームが巻き起こり、根強い人気を誇る『妖怪人間ベム』の続編企画がスタート。13年ぶりの放送に向けパイロット版が製作された。アニメーション制作は海外との合作アニメを数多く手がけ、のちに『風の谷のナウシカ』を生むトップクラフト。

基本設定はそのままだが、キャラクターデザインは優しいタッチになっている。小林清志ら声優陣は続投、オリジナル版スタッフも参加し、2エピソードが完成するが放送は実現しなかった。

『妖怪人間ベム -HUMANOID MONSTER BEM-』（2006年）：38年ぶりに帰ってきたベム、ベラ、ベロの新たなる戦いを描いた新シリーズ

オリジナル版から38年の時を経て復活した、全26話の新作。衣装を含めキャラクターデザインはオリジナル版をベースにしており、続編的なイメージが強い。ただしベムたちは各地を放浪することなく、日本をベースにした架空の都市に定住。この街に出現する妖怪や怪物たちを退治する。

ドラマ的にはベロの比重が大きく、彼と街の子供たちの交流を中心にストーリーが展開される。シリーズ構成は『NARUTO -ナルト-』シリーズの武上純希が手がけている。

実写版『妖怪人間ベム』（2011、2012年）：妖怪人間が豪華キャストでまさかの実写化！メッセージ性も盛り込んだ異色作

全10話の実写シリーズ。とある街に流れ着いた妖怪人間ベム、ベラ、ベロは、そこはびこる悪に戦いを挑む。ベムに亀梨和也、ベラに杏、ベロに鈴木福と人気スターを起用。メッセージ性を持ったドラマも評価され、最高視聴率18.9％を達成した。

ナレーションは初代ベムの声を演じた小林清志。スーツによる妖怪バトルも盛り込んだ意欲作で、特殊メイクは大野智主演の『怪物くん』の梅沢壮一が担当した。完結編となる劇場版も製作された。

『俺たちゃ妖怪人間』（2017、2018年）：炎上商法すれすれながら“妖怪人間魂”をしっかり持った奇跡のお下劣ギャグアニメ

オリジナル版放送開始50周年のリブート企画で製作された、1話約2分半、『俺たちゃ妖怪人間』25話、『俺たちゃ妖怪人間G』25話のショートアニメ。新宿・歌舞伎町に似た歓楽街「歌魔羅町」を舞台にベム、ベラ、ベロが奮闘する。

ベロの職業はホストで源氏名は“辺露”。下ネタ満載のギャグアニメだが、人間を目指し真摯に生きる姿や社会風刺はオリジナルを踏襲。ベムを杉田智和、ベラを倉科カナ、ベロを須賀健太、主題歌アーティストは人気ラッパーのDOTAMAと豪華な布陣がそろった。翌年、同じキャストで『俺たちゃ妖怪人間G』も製作された。

『BEM』（2019、2020年）：オリジナル版のコンセプトはそのままに、生まれ変わった50周年リブート作

50周年リブート企画として製作された全12話のシリアスな作品。巨大な湾岸都市「リブラシティ」で邪悪なヴィランと戦いつづける妖怪人間ベム、ベラ、ベロは、街を影で操る秘密結社の陰謀に巻き込まれていく……。

オリジナル版の精神を受け継ぎながら大胆にアレンジし、作品設定からキャラクターデザインまで一新。3人の内面描写を盛り込んだ、本格ダークヒーローものとして完成した。テレビ版の最後で姿を消したベムたちのその後を描く『劇場版BEM～BECOME HUMAN～』が2020年10月2日に公開される。