tofubeatsも推薦!世界が注目する岡山の音楽プロデューサーとは?

2020.1.17
keita_sano

文=小鉄昇一郎 写真=DJ FxJxT


2016年10月に発売された『クイック・ジャパン』発売時には岡山に在住していて、その当時から耳の早い音楽ファンの間で話題になっていた音楽プロデューサーのKeita Sano。現在では10カ国以上のレーベルからリリースをして、2019年の春には自身もドイツに移住するなど、ハウスとテクノ・シーンにおける日本代表と言っても過言ではない活躍を見せている。まだ知る人ぞ知る存在だったKeita Sanoを激推しするtofubeatsのコメントも載ったコラムをお届けします。

※本記事は、2016年10月24日に発売された『クイック・ジャパン』vol.128掲載のコラムを再構成したものです。

岡山のハウスギャングスタ(tofubeats談)、Keita Sano

岡山在住のトラックメイカーKeita Sanoは、耳の早いダンス・ミュージックのリスナー/DJにとって今最も注目すべき存在だ。ピリピリと放電しながら震えるドラムマシーンの刻む四つ打ち、切り口からみずみずしい雫がしたたるようなサンプリングは、シカゴ/NYハウス初期衝動をルネッサンスする近年のアンダーグラウンドなハウス・シーンの中でも、磨かれた革細工のように生々しく輝き熱気を放つ……と、紙面でそのサウンドを再現するのも限界がある。ということで、Keita Sanoに熱いエールを送るミュージシャンのひとりで、今年から岡山のクラブ「エビスヤ・プロ」でレギュラーパーティを始めた神戸在住のプロデューサーtofubeatsに、その魅力をコメントしてもらった。まずはこちらを。

僕がカットアップやヒップホップ、UKガラージを愛好する際に「制限の中で音楽を作っていると気持ちが飛び出しそうになるからそういうところがいい」という表現があるのですが、サノさんはまさに制約の中で飛び出しそうになる楽曲を作るのが素晴らしいです。ライブのとき、小さなmidiコンから骨太なハウスがガンガン繰り出されるように、ハードウェアで1週間くらいでガーッと沢山楽曲を作ってしまうように、何より岡山からダイレクトに世界を席巻しているように、です。初期衝動をガッと小さく圧縮してその反動で爆発する、みたいな。何よりそんな内燃機関がパワフルに持続しているのが強烈! マジ岡山のハウスギャングスタです。
(tofubeats・筆)

Keita Sanoは3年ほど前から海外の様々なレーベルから凄まじいペースで作品をリリースし、特にブルックリンのハウス/ディスコレーベルMister Saturday Night Recordsと、Project Pabloなどが所属するバンクーバーのレーベル1080pからのリリースは、シーンに登場したばかりの、しかも地方在住の日本人アーティストの快挙として話題となった。

KEITA SANO「MAD LOVE」

そして2016年今夏、瀧見憲司のCrue-L Recordsから新たなフル・アルバム「The Sun Child」をリリース。 ヨーロッパ・ライブツアーを敢行、RBMAモントリオール企画に選出されるなど、いよいよ活動は世界へ舵を切りつつあるが、現在も彼は岡山をその拠点としている。

あるインタビューで岡山の特徴を聞かれた彼は(岡山だけの話ではないかも知れないが、と前置きしつつ)「バンドのライブも観に行くし、ヒップホップやトランスのパーティも行く。音楽性とは別でそこの人たちと仲良かったりして」と語る。元々のパイが少ないゆえ、ジャンルやカテゴリーが未分化に混じり合い、それが独特の磁場を放っている、という状態は、瀬戸内海を挟んで四国に住む筆者にも想像できる。フランスのレーベルから作品をリリースしている井上調、ラッパー・やけのはらとスプリットをリリースした4人組バンド・ロンリー(音源には同郷のガールズバンドaapsも参加)など、この数年岡山から現れたユニークなアーティストがいずれもKeita Sanoとの交友関係、音源の参加などでゆかりがある点でも、その「混じり合い」は見えてくる。

アルバム『The Sun Child』
Keita Sano『The Sun Child』

『The Sun Child』アルバムジャケットの、タンポポの綿毛にも似た特徴的なオブジェは岡山駅前の噴水の写真だ。これが世界に向けて発信されることの痛快さは、「日本」という「世界の田舎」を軽々と飛び越えていく彼のポテンシャルそのものと言えるだろう。

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