タイトルのとおり、テレビ東京のゲームバラエティー『勇者ああああ』の放送枠が、木曜1時30分から土曜22時30分に昇格する。MCは引きつづき、アルコ&ピースの平子祐希、酒井健太。
時間帯が早くなると、合わせて内容も変わっていくことが多いものだが、『勇者ああああ』の場合はどうだろうか。演出・プロデューサーを務める板川侑右が、番組の今後についてMCのアルコ&ピースと共に考える。
10月から『新美の巨人たち』の次に始まる『勇者ああああ』
深夜番組がゴールデン・プライム帯(夜の看板番組が並ぶ時間帯)に昇格すると、「深夜時代のほうがおもしろかった」と言われることがある。
とにかくコントがおもしろかったあの番組は、ゴールデン帯に昇格した途端にただのスタジオバラエティーになってしまったし、過酷なロケが視聴者の目を引いたあの番組は、プライム帯になった途端に生活に役立つトピックスを紹介するただの情報番組になってしまった。
僕もこの仕事を始めるまでは、そんな番組のことを「すっかり丸くなっちゃって」などと揶揄していたが、今ではだいぶその考え方も変わった。そもそも深夜とゴールデン・プライム帯では視聴者層が違う。ターゲットが違うんだから内容だって変えなきゃいけない。高視聴率獲得のため環境に合わせた戦い方を臨機応変にするのがプロのテレビマンである。
出演者にしたってそうだ。深夜番組でトガった笑いを追求していた芸人が、ゴールデン・プライム帯でおいしいラーメンを食べてリアクションしているのを、バカにする視聴者もいるだろう。だけどその仕事が成立しているのは、その芸人がほかの現場で実力を発揮し圧倒的な知名度を獲得したから、すなわち「スター性」を手に入れたからにほかならない。「この人が出ているからとりあえず観る」という思いを視聴者に抱かせるだけのタレントパワーがなければ、ゴールデン・プライム帯には出られないのである。
だから弊社の総合編成局員に突然、こう言われたときはマジでビビった。
「10月から『勇者ああああ』の放送枠が、
毎週土曜の夜10時30分からになるから」
急なプライム帯への昇格。しかも週末の夜10時30分というバラエティー激戦区。あまりのびっくり人事に、まあまあ先輩の総合編成局員を、東京セントラル証券に出向を命じられた半沢直樹ばりに睨みつけてしまった。
先述したように、ゴールデン・プライム帯で戦っていくためには「スター性」のあるタレントが必要不可欠だ。しかしこっちのMCは、スターはスターでもラジオスター。「倍返し」できるだけの戦闘力があるとは到底思えない。それにもともとの視聴率が0.2パーセントの番組なので、倍にしたとて0.4パーセント。最低でも「100倍返し」ぐらいはしないと各所に申し訳が立たない。
もちろん問題はそれだけではない。僕らが担当する放送時間の前枠は、なんとテレビ東京で20年つづく長寿番組『新美の巨人たち』。ホームページの番組紹介によると
旅人=アートトラベラーが、毎回作品が展示されている美術館や建築物、ゆかりがある場所などへ足を運び、作品の秘密や、アーティストの人生に迫り、より豊かな美術鑑賞の旅へと視聴者を誘います。
というスーパーアカデミック番組である。つまり美術鑑賞に興味のある視聴者がそのままP1層の巣窟『勇者ああああ』に流れ込んでくる可能性もあるということだ。「ゴーギャン」からの「ですよ。」っていう嘘みたいな編成にお茶の間がちゃんとついてこられるのか甚だ疑問である。やはり今後は番組同士の縦の流れもより意識していかなければいけない。
と、このようにキャスティング、番宣施策、予算の見直し……など枠移動について考えなければいけない案件は山ほどあり、そのリニューアル施策を考えるのが演出・プロデューサーである僕の今の仕事である。
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