元19のメンバー326が『勇者ああああ』準レギュラーになった理由

2020.8.6

めちゃくちゃ明るくてめちゃくちゃおもしろくない準レギュラー

このようにキャスティングの意図を誰かに問われることはたまにある。たいていの場合、適当な理由を考えて返答するのだがマジでなんの理由もないときは本当に困る。

「『勇者ああああ』はなんであんなに326を呼んでるの?」

今年だけで『勇者ああああ』の収録にすでに3回も参加しているイラストレーター326。フリートークが抜群におもしろいわけでもないし、ゲームが取り立ててうまいわけでもない。理由はないけどなぜか番組に不思議とハマっている彼の魅力を合理的に説明する方法を僕はまだ見つけられていない。

2000年前後にフォークグループ「19」のメンバーとして活躍、さらにイラストレーターとして大ブレイクを果たした326は間違いなく時代の寵児だった。僕の記憶が確かならば、326が描くイラストがプリントされたクリアファイルやペンケースを当時クラスの女子の半分近くが使っていたように思う。今では信じられない話だが世の中の若者が326に夢中だった時代は確かに存在したのである。

そんな「あの人は今!?」案件が大好物の僕たちが326をゲストに呼ぶのは自然な流れだったと言えるだろう。さっそくキャスティングのため現在の所属事務所であるタイタンに連絡、2019年に「いぐちんランド事件」を引き起こし、これまた時代の寵児となったウエストランドとセットで呼ぶことになった。

※いぐちんランド事件
ファンを名乗る女性に騙されたウエストランドの井口浩之がツイッターのDMで自身の局部の写真を送りつけたことで、その画像がSNSや掲示板で拡散された事件

左から、ウエストランド(井口浩之、河本太)、326

まったく面識がない326の起用に不安がなかったわけではない。

「めちゃくちゃ気難しい人で、“あの人は今!?”的なイジリに怒る人だったらどうしよう……」
「でも爆笑問題も所属するタイタンのタレントだし、意外とそのへんはおもしろく対応してくれるんじゃない?」
「そもそもそんな心配をしてまで呼ばなきゃいけない人なの?」

会ったこともない326の性格パターンを想定し、ギリギリまで脳内で収録のシミュレーションを行うスタッフ陣。しかしいざ迎えた本番当日、オープニングトークでの326の立ち居振る舞いは我々の予想とは大きく異なっていた。

「僕めちゃくちゃアルピーさんのファンで〜!
だからこの番組もめちゃくちゃ観てるんですよ〜!
……っていうかちょっとなんすかこの空気〜!
俺がスベってるみたいじゃないっすか〜!」

326はめちゃくちゃ明るくて、めちゃくちゃおもしろくない人だった。テンション最高潮のお笑いファンがただただ無鉄砲にしゃべっている、そんな状態である。とはいえアルコ&ピースのファンで番組ファンだというならこちらも遠慮はいらない、平子も酒井も初対面の326にガンガン噛みつく。

「うるせえよ。お前は黙ってゲームだけやってろよ。
そんな感じだから19もクビになったんだろ。
っていうか、お前誰だよ」

次々に繰り出される辛辣なツッコミ。が、めちゃくちゃ明るい326はそんなことは意に介さずニコニコと「ちょっと勘弁してくださいよ〜」と返すばかり。強いワードで攻撃を仕かけるアルコ&ピース、それを無邪気な笑顔でかわしつづける326、「いぐちんランド事件」の件をすっかり忘れられたウエストランド。トークはまったく噛み合っていないのに不思議と収録が盛り上がり始めた。結局その日、台本で用意していた「大ブレイク時の326エピソード」を披露する機会はほとんどなく、“変にかかってる今の326”をイジっているうちに収録は終了した。

この人は本当にお笑いが好きなんだな、そう思った。現場でもずっと笑顔で収録を心から楽しんでいるのがよくわかる。先述したように326はフリートークが抜群におもしろいわけでもないし、ゲームが取り立ててうまいわけでもない。だけどあんなに楽しそうに振る舞われたら「もう1回ぐらい呼んでみようかな」って思うのが人情である。まさか「トレジャーハンター326」などという冠コーナーができるとは、このときは夢にも思っていなかったけれど。

『勇者ああああ』準レギュラー陣の中で唯一「ただのお笑いファン」という不思議な立ち位置で出演をつづける326。だから誰かにそのキャスティングの意図を問われても

「いるだけでなんとなく現場の雰囲気が明るくなるんすよね〜」

というフワッとした表現でしか、僕はその出演意図を説明できない。


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