アルコ&ピースがMCを務めるテレビ東京のゲームバラエティ番組『勇者ああああ』。有名無名問わず数多くの芸人たちがゲームを使って(時にゲームを使わずに)笑いを取る番組だが、「ヤバい芸人」が混ざっていることがある。
演出・プロデューサーの板川侑右が同番組の出演者たちについて語る本連載。今回は、とんでもないスターに化けそうな「ヤバい芸人」とのヤバい出会いについて振り返る。
三四郎・小宮浩信、アルコ&ピース・平子祐希のヤバさ
「この人、一般人だったらまともな社会生活を送れていなかったのでは?」と思う芸人さんがたまにいる。そんな常識では考えられない行動や言動をする「ヤバい芸人」に出会うと僕は「とんでもない逸材」を見つけたような気がして、とてもワクワクしてしまう。
7年前に僕が『ゴッドタン』のディレクターをしていたとき、まだそれほど有名ではなかった三四郎の小宮が収録の打ち合わせに遅刻してきた。電車の遅延がその理由だったので「まあそういうこともあるよなあ」とのんびり待っているとゼーゼー息を切らした小宮が半ベソで部屋に飛び込んできた。あまりにテンパっているので「小宮さん大丈夫ですか!?」と声をかけると
「本当に電車が遅れてたんで…遅延証明書をもらおうとしたんですがぁ……
東京モノレールに乗り換えたらJRじゃなきゃもらえないって言われてぇ……
で、諦めて駅からタクシー乗ろうと思ったんですけどぉ……
でもそうすると“あんまり焦ってないように”思われるんじゃないかと……
だから駅から全速力で走ってきたらめっちゃ遅刻しちゃいましたぁ……
これって遅刻になりますよねぇ……?」
この人はずっと何をしゃべってるんだろう。絶望的な滑舌で繰り出される支離滅裂な言い訳は翻訳するのにあの戸田奈津子でも数十分はかかるだろう。結局、時間もなかったのでほとんど打ち合わせもしないまま本番を迎えたのだが、小宮はスタジオでいつもどおりに大爆笑を取っていた。出演者の笑いで大いに揺れるスタジオの端で僕は「芸能界でスターになる人って意外とこういうヤバい人だったりするのかもな」と思った。
『勇者ああああ』のMCであるアルコ&ピース平子もそんな「ヤバい芸人」のひとりだ。世間的には愛妻家で子煩悩なパパとして知られているが、根っこの部分では相当ヤバい。先日、平子がツイッターに子供と雪遊びをしたときの写真を載せていたので「あの写真見ましたけど、平子さんはちゃんと家族サービスをしていて偉いですよね」と楽屋で話しかけたら
「新型コロナウイルス問題でただでさえ不安なのにすげえ大雪が降ってさ
やっぱり人間の本能なのかな……命の危険を感じてるんだろうね
気づいたら俺、自分でも信じられないぐらいギンギンに勃ってて
このままだと変になっちゃうと思ってそのエネルギーを
腰がイカれるまで雪かきにぶつけてみたらとんでもない雪の量になってさ
せっかくだからすべり台を子供に作ってあげたらとっても喜んでくれたよ」
前半の「絶倫サイコ」ブロックのインパクトが強すぎて、後半の「心優しき巨人」エピソードが完全に霞んでいる。しかも笑わせる気など一切なく「ちょっといい話」ぐらいのスタンスで僕に話しているのがまたおっかない。巨大すべり台を建造できるほどの平子のほとばしる性欲に恐怖を感じた僕はそっと部屋をあとにした。