非日常を求め、鮮魚専門スーパーでなじみの薄い魚介類を買ってみる。気分は漁港(パリッコ)

2020.5.15

コウイカの甲の不思議

自転車で「魚市場 旬」にやって来た。よく考えると、ここにはほぼ年末にしか来たことがなく、いつもすごく混雑している印象があったんだけど、平日の日中ということで店内は比較的空いている。ずらりと並ぶ鮮魚類が思う存分鑑賞し放題でテンションが上がる。

広い店内の中央に、加工場というんだろうか、作業着を来た店員さんたちが注文の入った魚を捌いたりする場所があって、作業風景がよく見えるから、なんだか漁港の近くの市場にでも来たような気分になる。その周囲には、加工前の魚介類が水槽やカゴに入って並ぶ。一番の目玉コーナーというわけだ。

店内に入って左側は、処理されてパックに詰められた魚介類。右側は、冷凍物や乾物、瓶詰めなどの加工品。正面奥は、寿司や天ぷら、惣菜などのコーナーになっている。

今日はせっかくなので、なるべく珍しい、これまで家では食べたことのないような食材を中心に買ってみたい。殻つきのウニや牡蠣、ドジョウや沢ガニ、丸々一匹のホウボウ、毛ガニくらいのサイズで1杯500円の「クリガニ」なんてのも気になる。目移りし過ぎて売り場を何周もしてしまい、店員さんから見れば完全に不審者だったことだろうが、それでもなんとか選び終える。会計をし、自由に使っていい発泡スチロール箱と氷を使って梱包する。ギリギリ自転車の前カゴに収まった。

市場帰りの荷物の風情

自宅で、改めて買ってきたものたちを眺める。

目玉は、とりあえず駅前のスーパーなどでは一度も見たことのない、生の「コウイカ」。それから、青緑色の卵を抱いた刺身用甘エビ。北海道産の「本ます」のアラのパックには、たっぷりの身とともに、卵も入っている。カレイのエンガワもスーパーにしては珍しい気がして選んでみた。

さぁ、これらを捌き、盛りつけ、鮮魚晩酌としゃれこもう。

アラとは思えないほどたっぷりと身がついている

まずはネットで「マス 卵 食べ方」などと検索し、気になる魚卵の処理を試みる。すると、40度くらいのお湯で洗いながらほぐし、醤油漬けにするのがオーソドックスなようだ。しかし試してみると、1粒1粒がかなり小さく、それらをまとめている膜が非常に強力で、まったく思いどおりにいかない。10分くらい奮闘してみたものの、卵はただただ霧散してゆくばかり。とても残念だけど、これを食べるのは諦めるしかなさそうと判断した。本ますよ、ごめん。しかしこれ、正解はどうだったんだ。

家のキッチンではあまり見ないタイプのビジュアル

気を取り直し、コウイカ捌きにかかる。

僕は料理が嫌いではなく、たまには興味本意で魚を捌いてみることもある中でも特にイカを捌くのは楽しいものなんだけど、それは一般的なスルメイカあたりの話。胴体にカッチカチの「甲」が入ったイカと対峙するのは初めてだ。というわけでこれまた検索。すると、胴体正面の甲の部分に縦に1本、包丁でピーッと切れ目を入れると、スルッと甲が抜き出せるらしい。ほんとかよ。半信半疑ながらもやってみると、驚くべきことに、ほんとだった。

スルッ

半透明のプラスチックのような材質で、軽く、それでいてものすごく堅牢。すごい生物だな。どういう進化だ。おもしろいけど使い道はなさそうだと思って捨ててしまったけど、あとから調べてみたところ、なんとこの甲、カルシウムが豊富で、小鳥の餌としての需要があるんだそう。知らないことっていくらでもあるな。

ともあれそこからは割と一般的なイカと同じノリで捌くことができた。ものすごく肉厚な胴体はイカ刺しに。それ以外の食べられそうな部分は、キモとスミと合わせてフライパンに放り込んでおいた。あとでバター醤油で炒め、イカゴロ焼きにしてやろう。

買ってきた鮮魚を堪能し尽くす夕べ

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