『リモ止め』『12人の優しい日本人』『でんぱ組.inc』NHK『テレワークドラマ』……進化するリモートエンタメの勢いを止めるな

2020.5.8

テレワークで製作したリモートドラマをNHKがぶっ込んできた。
単独ドラマ3本を、3夜放送する構成だ。
『今だから、新作ドラマ作ってみました』の第1夜「心はホノルル、彼にはピーナツバター」(5月4日)。
ハワイでの結婚式が中止になった婚約中の神林五郎(満島真之介)と森本千明(前田亜季)。
ふたりはそれぞれ自分の部屋で、ビデオチャットを使って、結婚式ごっこをやっている。
が、どうしてもノレない五郎の様子を察した千明が不満を漏らし始めたところから、話題は、いつもなら話さない内容に。
離れ離れでありながらビデオチャットで顔を見て話すという、今までにはあまりない状況がゆえに、リアルな場で会うと話せないことを話してしまう。
翌日の第2夜「さよならMyWay!!!」(5月5日)は、宍戸道男(小日向文世)の画面にテレビチャットが入ってくるところからはじまる。相手は、妻・舞子(竹下景子)。
だが、「彼女は脳卒中で亡くなっているはず!」と道男は驚く。何度も繰り返すループの果てに明かされる真相に、シド・ヴィシャスの「マイウェイ」が重なる。
2話とも、リモートで話すことで、いつもなら話せなかったことをじっくりと話す機会になっている姿を描いて、「今だから」描けることを繊細にドラマにした。
第3夜「転・コウ・生」は今夜(5月8日)NHK総合で23時40分から放送。
脚本は、『義母と娘のブルース』の森下佳子。柴咲コウ×ムロツヨシ×高橋一生が主演で、体と魂が入れ替わるファンタジー・コメディーをどのようにリモートで展開するか、期待している。

最後に紹介したいのが、ミュージックビデオ。でんぱ組.incテレワークMV「なんと!世界公認 引きこもり!」だ。

テレワークで製作し、エンタメの火は消さないというメッセージを伝える引きこもり賛歌であり、ポップで元気の出る歌声だ。メッセージと製作方法と音楽が三位一体になった傑作。
ビデオにちらっと映るツイッターやそのほかのやりとりから製作背景のドラマが見えてくることもグッとくるポイントだ。

人と人が出会うことを困難にしたこのコロナ禍で、映画、演劇、テレビドラマ、音楽、ありとあらゆるエンタテインメントが、一度デジタルの空間を経由することで、融合し、新しい体験を生み出している。
激変した環境に対峙するように次々と製作される作品を、ぼくたちは、ただ傍観者として眺めているわけじゃない。
もちろん今までだって、ただの傍観者ではなかったはずだ。
だが、失敗も、ぎこちなさも含めて、ぼくたちは、新しいチャレンジに参加して楽しむ姿勢をよりはっきりと習得している。
コロナ禍が収束して、また現場で会えるようになったとしても、それは「元の平穏な世界」に戻るのではない。
何かが変わる。
新しいエンタテインメントへと進む。
エンタメの火は、消さない。

イラスト/まつもとりえこ


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米光一成

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米光一成

米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

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