【写真たくさん】剣持刀也ソロライブ『虚空狂宴』は、特大の“人生賛歌”。葛葉・ピーナッツくん・星街すいせいと刻んだ「VTuberの新たな歴史」
ずいぶん遠回りな、捻(ひね)りに捻ったかたちではあるけれど、これは彼なりの特大の人生讃歌であると思った。
10月11日にKアリーナ横浜で開催された『剣持刀也リアルソロライブ【虚空狂宴】』のことだ。

長年バーチャルライバー界の第一線に立ち続け、ROF-MAO(ロフマオ)やVACHSS(ヴァックス)といったユニットとしても数多くの大舞台を経験してきた彼だが、音楽を主体にしたソロライブは意外にも今回が初開催となる。
今年発売の1stミニアルバム『Augment』を引っ提げ、“狂宴(フェス)”と銘打って、同じくVTuber界を牽引し続けている3人のアーティストをゲストに招いた。
目次
“エゴイズム100%”で届ける初のソロライブ

ライブの冒頭、モザイク調に積み上げられたモニターに『Augment』のキービジュアルが投影され、画面が切り替わると、モニターの奥に佇んでいる剣持の姿が見える。
後方からゆっくりと歩いてきた彼が手を伸ばし、スクリーンを通り抜けてKアリーナの舞台上に現れると、悲鳴にも近い声援が会場を包んだ。

1曲目はファンメイドのイメージソングであり、リスナーからも根強く愛されている「Sharpness…」。生バンドの疾走感あふれる演奏の中で歌い上げ、会場の熱を一気に高めていく。
「今日はソロのフェスでございます。僕のエゴイズム100%をもってブチかましていくので、みなさん盛り上がっていきましょう!」

そんなMCとともに始まった「エゴロック」では、がなりの効いた歌声で会場を盛り上げ、続く「怪々々々!」ではエレキギターの演奏も初披露。圧巻のステージングと多才ぶりを序盤から遺憾なく発揮してくる。

一切の緊張も危なげも感じさせないのは数多のステージの経験値ゆえだろうけれど、その気負いのない堂々たる振る舞いにはやはり惚れ惚れしてしまう。
星街すいせい・葛葉・ピーナッツくんがゲスト登場!
ゲストパートでは、星街すいせい・葛葉・ピーナッツくんの三者を招いてそれぞれ2曲ずつを披露。
ホロライブとにじさんじをそれぞれ代表するライバーである星街と剣持が” U R MY SPECIAL”と互いに向かって歌いかける「SPECIALZ」では、今まさにリアルタイムで更新されているVTuberの新たな歴史を目の前で見届けている感覚があった。

続いて盟友である葛葉がステージに現れると、割れんばかりの歓声が会場に沸き起こる。「銃の部品」では、荒々しくも力強い葛葉の歌声と、伸びやかな剣持の歌声の相性のよさを存分に堪能した。

白眉だったのが、ピーナッツくんとのステージだ。登場するなり、(剣持が今年ROF-MAOを修了したことを受け)「Cellmates(セルメイツ)もやめなよ~!」と、彼にしかできないいじり方で会場の爆笑をかっさらっていく。
「一ラッパーとしての剣持刀也にフィーチャリングのオファーを出した」というMCを受けて始まった「未来NEXTメシ」は、ビートもリリックもライブ用にアップデート。
VTuberとしてのピーナッツくんが“ご主人様”である中身を皮肉る原曲に対し、剣持がひとつのアンサーとして提示した“あるがままもマトリョシカもやることなら変わらねぇ 洗い立ての外っツラで今日も街まで”というバースからは、彼の美学を感じた。
客席と同じ目線の「人類観測」で伝わる切実なエール
ライブが中盤に差し掛かると「ここからは自分らしい曲を歌っていこうと思います」と宣言し、ステージの上方から会場を見下ろしつつ「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」を披露。

続く「人類観測」もそのままのポジションで披露する──かと思いきや、舞台上に備えつけられたエレベーターで元のステージ位置まで降り、客席と同じ目線で会場を見渡しながら歌い上げた。
原曲からは、あたかも“上位存在”である剣持が人類の歴史を俯瞰しているかのような印象を受けていたが、等身大の肉体としてステージに立つ彼に“人類の分際でエンディング決めんな”と歌われると、この曲のエールがより切実な熱を伴ったものとして伝わってくる。思わず胸が熱くなった。
剣持だからこそ起こせる“虚空教”による一体感
ここからライブの終盤にかけて、ステージの様相が少しずつ変化していく。舞台左右にそびえていた大樹のセットが怪しく光り出すと同時に会場が紫色に染まり、一面の藤の花をバックに“教祖”である剣持が語り出す。
「虚空教、音楽の祭典へようこそ」

そして彼が「同じ阿呆なら踊らにゃ損、そう思って歌っていただければ」と呼びかけると、会場は声をそろえて「儀式の唄」を歌い出す。
虚空、つまり無を信仰する宗教の集会というかたちをとってはいるのだが、なかなかにギリギリの世界観でありながらもあまり危うい感じがしないのは、これがあくまで一体感を演出するための仕掛けであることが、剣持の言葉や所作から伝わってくるからだろう。

虚空教という架空のフィルターを一枚挟むことで、ごっこ遊びだからこそ全力で楽しんでしまおうという空気を浸透させ、結果的に彼にしか起こせないグルーヴを会場に生み出している。
こういったエンタメ性のバランスの取り方が抜群にうまいのも、剣持のすごさだとつくづく思う。
「今後もいつだって、愛すべき日常でお待ちしております」
「ANTI-HERO」「メトロノーム」といった彼らしい楽曲が続いたあとは、剣持が考案した架空のライバーである「夜風ユイ」が映像で登場する一幕も。
「祝祭!無スティバル」「セカイ再信仰特区」で最終盤を盛り上げ、ラストは眩しく輝くステージを背景に「屈折率」を伸び伸びと歌い上げた。この曲の間奏で彼が語った言葉が、何よりすばらしかった。

「これでライブは終了となりますが、僕は今後もいつだって、愛すべき日常でお待ちしております。本日は本当にありがとうございました!」
あるときはアーティストでありラッパー、そしてあるときは教祖と、とても巧みにペルソナを使い分けるエンターテイナー。
しかし、剣持刀也という人物の軸にあるのはあくまで輝かしい世界に期待しているひとりの好奇心旺盛な高校生なのだろう。そう感じさせる、美しい幕の下ろし方だった。
彼の目に映る世界のまばゆさの一端を分け与えてもらったような、2時間のステージだった。
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