トキメキが足りてないんじゃない?【平成はLOVEだった#3】

トキメキが足りてないんじゃない?【平成はLOVEだった#3】

文=奈都樹 編集=山本大樹


平成ひと桁生まれの“みんなのギャル”ライター・奈都樹が駆け抜けた平成の時代のすべてをLOVE一本槍で語り尽くすエッセイ連載。恋に恋したあのころを、もう一度みんなで見つめ直そう!

トキメキが足りてないんじゃない?

2007年、小栗旬に恋をしていた。なんで好きになったかといえば、2年間片思いしていた初恋男子に見切りをつけようとしていたころに、ぼんやりテレビを見てたら小栗旬が井上真央に唐突にキスをしていて(1)、それが小学生からしたらまあまあ刺激的で、なにかとチョロい私は「この人を好きになろう」と決めたのだった。好きな男を忘れるには次の男ということです。とはいえ好きになれば夢中になるタイプで、矢口真里、田中美保、さらにはスカヨハにまで嫉妬したり(2)、最終的には小栗旬出演ドラマの名シーンを解説する「小栗旬ブログ」(3)を立ち上げたりと、すっかり初恋を忘れて忙しい日々を送っていた。ちなみに使っていたブログサービスはFC2。今となっては大きな声で言えない。

2000年代の小栗旬といえば『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ)ですよね。当時はイケパライケパラ言ってたけど、改めて文字にするとなんかすごいサブタイトル。でもその名のとおり日本中のイケメンが集まる全寮制男子校を舞台にしたラブコメディで、小栗旬のほか、生田斗真、水嶋ヒロ、岡田将生、山本裕典、五十嵐隼士などなど、あのころ輝きを放っていた俳優がずらり(4)。とある事情で男子生徒を装って紛れ込む堀北真希(5)をめぐって恋をしたりしなかったり、男子校ノリ風にわちゃわちゃ延々盛り上がったり、イケメンたちが高頻度で上裸になって視聴者をときめかせたりする。まあそれだけといえばそれだけのドラマだし、メッセージ性は皆無だし、コメディ要素もおもしろいとはいい難くて、とにかくこれはおバカという類の何かではあるのだけれど、それでもあのころ、クラスメイトのほとんどが火曜日21時を楽しみにしていて、みんなまだフジテレビが好きだった。

当時中学生だった私たちの夜の過ごし方なんて限られていて、携帯で前略プロフ→掲示板→リアルの順で1時間ごとに巡回したり(6)、『Popteen』(7)を読んだり、たまに好きな異性にメールを送ったり、女友達には鬱々とした長文メールを送ったりと、本当にそれぐらいで、そんな日常におけるテレビドラマというのは、好きな異性からの返信の次に強力なエンタメだった。だからかこのころは『ごくせん』、『野ブタ。をプロデュース』(ともに日本テレビ)、『花より男子』、『ROOKIES』(ともにTBS)(8)と、学園ドラマが異様にヒットしていた記憶。全部、好きだった。なぜならそのほとんどが、男子に囲まれる女子が主人公だから。頭の中は男子のことでいっぱいなわりに触れるどころか話しかけることすらできなかった思春期に、男子たちがひとりの女子をめぐって恋愛をする様子はとてつもなく刺激的だった。

人生の先輩方の昔話を鼻で笑ってごめんなさい

『イケパラ』もまたそのひとつで、2話での小栗旬と堀北真希のキスシーンは何回も繰り返し観たし、生田斗真が堀北真希にわかりやすく好意を寄せて特別扱いするような様子にはドキドキさせられた。いくら子供だからって、合間に挟まれるあの変なノリのコメディにはついていけなかったけど、ラブストーリーにあまりに夢がありすぎてほかのことはすべて許せたのだった。

『イケパラ』を観返してそんなことを思い出した。今時はスマートフォンで簡単にインターネットに入り込んで、いくらでも遊ぶことができるし、好きな男子とも簡単につながれるし、返信はポンポン返ってくるし、あまりにドキドキにあふれていて、テレビドラマに刺激を求めなくてもトキメキなんてたくさん摂取することができる。暇な時間なんて全然ない。そりゃ、ラブコメ学園ドラマの需要なんて減ってしまうだろうなとも思う。

ただ平成リバイバルで再び『イケパラ』が話題になっていることを考えると、引き続き大人にはトキメキが足りていないのかもしれない。私たちは仕事もプライベートもあまりに忙しすぎるのと、男とか女とかの現実を目の当たりにしすぎてなかなか恋愛に夢を持てずにいたりする。誰かの思わせぶりな振る舞いにドキドキしても、それが薄さ0.01ミリ程度だとすぐに気づいてしまえるほどに目がよくなってしまっているし、自分自身もだいぶ軽薄になってきていたりもする。というか恋愛するなら金銭面でも気になることはけっこうあるし、あのころよりもっといろんな条件がチラつくし、そうやってほかのことを考えていくうちに恋愛自体が非常にハードルの高いものになっていることに気づかされる。じゃあもうそれならせめて完全フィクションの中で陶酔したい……きっと平成一桁ガチババア(9)のみなさんもそんな感じなのではないでしょうか。

あぁ、こうやって私たちは昔のエンタメを愛でていくんですね。人生の先輩方、昔話ばっかりしてることを鼻で笑ってすみません。いや、これは大人にならないとわからないことだった。大人になると未来のことを考える気力も体力もほとんどなくなるけど、過去になら駆け足で戻れるものなんですね。いや、戻れるというより戻りたい。

注釈

(1)『花より男子2(リターンズ)』(フジテレビ)。前作から小栗旬の花沢類解釈が変わったのか王子キャラが少々過剰に……とイジりたくなってしまうのは好きだった証拠

(2)数多の浮き名を流してきた小栗旬。当時雑誌のインタビューで、“好きなタイプは顔がかわいい子”と答えたあとで、“最近はスカーレット・ヨハンソンが好き”と公言。さすがにスカヨハに近づくことは無理なので3日ほど落ち込んだ

(3)小栗旬について興奮気味に語るブログ。週2更新。クラスメイトにバレかけて中1の夏に運用終了

(4)気づいたら小説家・実業家・YouTuberと肩書が増えてる水嶋ヒロ、気づいたらホストになってブチギレたり説教されたりなにかと忙しそうな山本裕典など。出演者たちの今を一人ひとり検索してみると「人生」が見えてくる

(5)クラスの男子が全員一致で好きな伝説の女優

(6)当時のJCにとってインターネットは誰も見てないという“体”でなんでも書ける場所だったし、浮いた話がない私はそこで数多くの校内スキャンダルを見守る側だった

(7)2008年2月号で過去最大の売り上げを記録。誰もが益若つばさに憧れていた

(8)『ごくせん』は松(本)潤派、『野ブタ。』は山P(山下智久)派、『花男』は小栗派、『ROOKIES』はイッチー(市原隼人)派。狙った女に積極的な男が好き

(9)ババアと言われて盛り上がれるうちはまだ余裕あり

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奈都樹

(なつき)1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターとして活動しながら、クオーターライフクライシスの渦中にいる若者の心情を様々な角度から切り取ったインタビューサイト『小さな生活の声』を運営中。会社員時代の経験や同世代としての視点から、若者たちのリアルな声を取材している。