QuizKnock伊沢拓司&須貝駿貴は“正解のない問題”をどう考える?「学ぶことは、迷うようになること」【ゼロエミッションスクール エネルギーの未来を学ぶ夏の特別講習!】

2025.8.9

文=ねむみえり 撮影=中屋 隼 編集=高橋千里


「みなさん、より迷うようになったでしょう。それが学びです」

7月26日に、愛知県在住または愛知県内の学校に在学している中高生・高専生を対象とした『ゼロエミッションスクール エネルギーの未来を学ぶ夏の特別講習! 〜クイズやディベート観戦で楽しくQuizKnockと地球の未来を考えよう!〜』(※)が開催された。

※「ゼロエミッションスクール」とは:日本最大の発電会社である株式会社JERAとQuizKnockが共同で行っているエネルギーに関する情報発信プロジェクトだ。普段はYouTubeでの動画配信や特設サイトでのクイズの出題などを行っているが、夏休みの特別版ということで今回リアルイベントが行われた

QuizKnock ゼロエミッションスクール

冒頭の言葉は、イベントのプログラムのひとつである、伊沢拓司と須貝駿貴による模擬ディベートの締めとして、伊沢が発していたものだ。

学べばすぐに答えが出るものも、もちろんある。学校で出される宿題などは、いかに学習内容を理解しているかを測る指標になるだろう。

しかし、学ぶことでより“迷う”こともある。その一例が、このイベントのメインテーマである、「エネルギー問題」だ。

「チョコミント」と「アンモニアの化学式」が同居するイベント

「QuizKnock編集長の伊沢です」「ナイスガイの須貝です」という、動画ではおなじみのあいさつでイベントはスタート。「『夏休みに入ったよ』っていう人〜」「宿題が多い人〜」とふたりが参加者の中高生に問いかけることで、会場は和やかな空気に。

伊沢と須貝が、宿題で悩んでいる学生にアドバイスをするなかで出てきた「生活作文」という課題に、伊沢が「生活作文ってなに? 俺知らない」とこぼすと、参加している学生からはどよめきが起き、「生活作文って、今の学生には常識なの!?」とふたりが動揺する場面も(ちなみに筆者も知らなかった)。

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イベントは3部構成になっており、最初に環境とエネルギーに関するクイズ&解説、次に伊沢と須貝による模擬ディベート、最後にクイズ大会が行われた。

クイズ&解説パートでは、須貝と伊沢が問題に絡めて「チョコミント、食べたいですけどね」「あなたがいれば最悪どうにかなる」と、SNSのショート動画で流行した「愛♡スクリ〜ム!」(AiScReam)のフレーズを挟むと、会場からは笑い声が。

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その一方で、碧南火力発電所で実験しているアンモニアを燃料とした発電方法について、「アンモニアの化学式、みんな言える?」と参加者に問いかけた須貝が、アンモニアの特性や、アンモニアを燃やしても二酸化炭素が出ない理由を解説していたのが印象的だった。

ショート動画の流行りのフレーズと、アンモニアの化学式や特性が同居できるのは、「楽しいから始まる学び」をコンセプトにしているQuizKnockによるイベントだからこそだろう。

伊沢と須貝のディベート「初期コストがかかるのは、Switch2と同じ」

休憩を挟んで始まったのが、模擬ディベート。エネルギー問題について、伊沢と須貝が異なる立場を代表したやりとりを行う。観客はその様子を見ながら、自分の意見がどう変わっていくのかを意識する、という企画である。

「未来のエネルギーの主役はどっち?」をテーマに、伊沢が「よりCO2排出量の少ない火力発電の追求」、須貝が「再生可能エネルギーへの置き換え」という立場から、互いに意見を出し合っていく。

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ディベートを行う前に、参加者の学生たちに伊沢派か須貝派か、どちらの考え方に近いか手を挙げてもらうと、半々の結果に。

それぞれの立場を選んだ理由も聞いていたが、挙手して発言する学生たちが、前半パートで学んだことを踏まえて、しっかりと自分の考えを言語化していたことに驚いた。前半でも参加者の意欲の高さを感じていたが、改めて彼らの本気を感じたタイミングでもあった。

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模擬ディベートは、「環境への負荷」「これからの電気はどちらが安い?」「未来の生活」の3テーマについて、それぞれ3分間、伊沢と須貝が意見を出し合うスタイルで行われた。

須貝が先攻で始まった「環境への負荷」については、CO2の排出がメインの議題となった。前半のクイズ&解説パートで出てきたワードを交えつつ、「グレーアンモニア(作られる際にCO2が出てしまうアンモニア)」という新しい問題点も提示された。

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伊沢が先攻となった「これからの電気はどちらが安い?」というテーマでは、再生可能エネルギーを導入する上でのコストについて議論が白熱。

「再生可能エネルギーは、発電した電気を分配するためのシステム作りに費用がかかる」と指摘した伊沢に対して、須貝は、Switch2を購入するときも初期コストがかかることを例に出しながら「今から新しいシステムを作ったら、長い目で見れば安くなる」と返す。

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難しい議題のディベートの中でも、Switch2のような身近にあるものを具体例として出すことで、エネルギー問題における課題の解像度が上がるようにしているのには、思わず唸った。

最後のテーマである「未来の生活」では、電気の供給の安定性について話し合われた。「火力は安全で安定性もある」という伊沢の意見に対し、「火力発電の燃料となる石炭は有限なのでは?」と疑問を呈する須貝。

約10分のディベートだったが、異なる立場でふたりが意見を交わすことで、エネルギー問題を解決する難しさをひしひしと感じた。

「正解」がない問題こそ、考え続ける

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ディベート終了後、伊沢と須貝のどちらの意見に賛同するか会場に意見を聞くと、ディベート前と同じような結果となった。

しかしその中には、ディベートを通じて意見が変わったという参加者も。そんな学生たちに話を聞いてみると、自分の考え方がどういう理由で変化したかを、ディベートで出たキーワードに触れながら述べており、会場からは拍手が送られた。

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そしてここで、冒頭の伊沢の発言に戻る。

学ぶことで必ずしも正解が導き出せるわけではなく、むしろ多くを知ることで迷ってしまう場合もある。模擬ディベートをしていた伊沢と須貝でさえ、「(ディベートを)やっててムズいなと思った」とこぼしていたほどだ。

伊沢が「安定の話と、有限・無限の話って、お互いにアンサーができていない」とディベートを振り返ると、須貝は「お互いに突かれると困る弱点があって、それを解決するために研究するのかな、と思ったね」と感想を述べた。

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このふたりの言葉からもわかるとおり、彼らも「正解」は出せていないのだ。

そんなエネルギー問題について、実際の現場ではどのように考え、その時々で一番いい選択をしていくのかを追体験できたのが、このディベートパートだった。

知ってしまったからには、無関心ではいられない

イベントの最後は、参加している学生たちを対象にしたクイズ大会が開かれた。

これまではまじめな空気が漂っていた会場だが、壇上にいる伊沢と、客席に降りた須貝の盛り上げにより、雰囲気が一変。スクリーンに解答が映し出されるたびに、客席からは悲喜こもごもの声が上がった。

私も頭の中でクイズの答えを考えていたが、正答率が低かった問題に正解できると素直にうれしく、「クイズの楽しさってこれか!」とひっそりと実感していた。

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「エネルギー問題」という難しいテーマのイベントだったが、つまらないと思うことはなく、むしろ、知らなかったことをたくさん知れた!と、お土産を抱えてホクホクとした気持ちで会場をあとにした。

知ってしまったからには、無関心ではいられない。今日のイベントで得たものは、QuizKnockからのお土産であり、ともに考えていく宿題なのだろう。

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ねむみえり

1992年生まれ、東京出身。フリーランスのライターとして働きながら、現代詩の創作も行っている。本、舞台、お笑い、ラジオが特に好き。

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