初のワンマンツアー『REIKO 1st One-man Tour “Love you deeper”』の追加公演を、2025年7月3日に東京・品川ステラボールで行ったREIKO。
BE:FIRSTやMAZZELなどBMSGの仲間たちの楽曲はもちろん、久保田利伸や清水翔太など“日本のR&B”を担ってきたアーティストたちの楽曲も見事にカバーした。
“日本のR&Bの歴史を継承する”というREIKOの強い意志を感じることができた、“グルーヴと愛と感謝とリスペクト”に満ちた一夜をレポートする。
目次
“歌”をストレートに届けることを意識したパフォーマンス
“楽曲と声を通して深い愛を伝える”。そんなテーマを掲げた初のワンマンツアー『REIKO 1st One-man Tour “Love you deeper”』。“R&B 3部作”(「Take It Back」「君のせい」「LOVE DEEPER」)を軸にした同ツアーの追加公演(7月3日、東京・品川ステラボール)でREIKOは、自らの音楽的なルーツ、そして、なめらかさ、力強さ、豊かな感情表現を共存させたボーカルの魅力をダイレクトに体現してみせた。
ライブの前のBGMはブルーノ・マーズ、清水翔太など、REIKOがフェイバリットに挙げているアーティストたちのヒットチューン。最後に自身の楽曲「So Good」をスピンすると観客のテンションが一気に上がり、まずはバンドメンバー(ドラム、ベース、鍵盤の編成)がステージへ。さらにREIKOが登場すると凄まじい歓声が沸き起こる。
オープニングを飾ったのは“R&B 3部作”の第1弾「Take It Back」。プロデューサーにヒップホップ~R&Bをメインに活動しているSam is Ohmを招いたこの曲は、90年代初めのUS系R&Bのサウンドを反映したナンバー。
古きよきトレンドと現代的なビートを結びつけ、“今”のR&Bポップへと昇華した「Take It Back」は、現在のREIKOのモードを最も端的に示している。ダンサブルな機能を持ち合わせた楽曲でもあるのだが、ステージ中央から一歩も動かず、“歌”をストレートに届けることを意識したパフォーマンスも印象的。“最大の武器は声”というスタンスが明確に伝わってくる。
さらに自身初のオリジナル曲「No More」のしなやかなグルーヴで観客の身体を揺らし、「次の曲、歌える人は歌ってください」と誘った「BUTTERFLY」では<You make me wanna><love you>でREIKOとオーディエンスの声が響き合う。音楽を介した純粋なコミュニケーションが気持ちいい。
90年代J-POP最高峰のひとつ「決戦は金曜日」を見事にカバー
「『REIKO 1st One-man Tour “Love you deeper”』追加公演にようこそ! ラストだよ! 行けますか!」というあいさつを挟み、J-POPのカバーとオリジナル曲を織り交ぜたシークエンスへ。
まずは90年代前半のDREAMS COME TRUEのヒット曲「決戦は金曜日」。タイトなビートとソウルフルなボーカルが共鳴し、会場をダンスフロアへと変えていく。70年代後半~80年代前半のソウル、R&B、ディスコのテイストを反映させ、誰もが楽しめる日本語のポップスへと結実させたこの曲は、90年代以降のJ-POPの最高峰のひとつ。そのプロダクションのあり方は“R&B 3部作”にもつながっている。
曲の最中に「今日はこの4人だけでステージをやっていきます」という言葉を放ったREIKO。それはいうまでもなく、“演出に頼らず、歌で勝負する”という決意の表れだ。

“REIKOの声”で届けた清水翔太の楽曲
ツアータイトル『Love you deeper』に込めた意味を改めて説明し、「愛は与えることだと思っています……と言っているんですけど、求めちゃう自分もいて。そういう自分も肯定してあげようと思って書いた楽曲を歌わせてください」という言葉から“R&B 3部作”の第2弾「君のせい」へ。
REIKOが生まれた2000年代前半のサウンドをモチーフにした音像も印象的だが、楽曲の軸を担っているのはやはり声そのもの。理性では抑えられない、滲み出るような心の機微を感じさせるボーカリゼーションは、次の楽曲「366日」(HY)によってさらに豊かさを増していく。
そして、ライブ前半のハイライトは、「花束のかわりにメロディーを」と「First Christmas feat. JUNON(BE:FIRST)」の2曲だった。「花束~」はREIKOが影響を受けたことを公言している清水翔太の2015年のヒット曲。
「First Christmas」は昨年、清水がREIKOのために書き下ろしたバラードナンバー。2000年代後半からの日本のR&Bシーンをアップデートさせ続けている清水と、その楽曲に強くフィールし、自らのボーカルスタイル/アーティスト性へと結びつけてきたREIKOのつながりを生々しく感じさせるステージは、今回のツアーの大きなポイントだったと思う。
REIKOの歌の表現も間違いなく向上していた。耳に入ってきた瞬間に“REIKOの声だ”とわかる個性を備えていると同時に、スッと身体になじむような素直さがある。ピッチもタイム感も素晴らしいのだが、けっしてテクニックをひけらかすことがない。その結果、曲の魅力がまっすぐに伝わってくる──その浸透率の高さこそが、彼のシンガーとしての最大の武器だろう。
BMGSの仲間たちと作り上げた楽曲をソロで披露
「Tokyo Night Dreaming feat. No Rome」(SKY-HI × REIKO × No Rome)からダンスチューンをつなげたメドレーに突入。「OVERDRIVE」(BMSG POSSE)、「Girlfriend」(BMSG POSSE)、「ICE feat. REIKO」(MAZZEL)といったアッパー系の楽曲を続け、会場全体のテンションをさらに引き上げる。
BMGSの仲間たちと作り上げた楽曲をREIKOのソロボーカルで体感できたのも今回のツアーの見どころ。歌をじっくりと聴かせたコーナーから激しくステージ上を動き回るシーンへの変化も見事だ。デビュー後の軌跡を感じさせるメドレーのあとは、BE:FIRSTのプレデビュー曲「Shining One」。いうまでもなく、この曲も彼の大切なルーツだ。

REIKOの中に息づく、久保田利伸のイズム
「今日が終わってしまうのがマジで悲しくて。一曲ごとに終わりに近づくのが寂しくてさ。でも、楽しんでますか?」というキュートすぎるMCからライブは後半へと向かう。
「ルーツの話をしていて、この人(の曲を)歌わないのは僕らしくないので、歌わせてください」という言葉から始まったのは1996年の楽曲「LA・LA・LA LOVE SONG」(久保田利伸 with ナオミ・キャンベル)。木村拓哉&山口智子の主演ドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ)の主題歌に起用され、久保田利伸が初めてオリコンランキング1位を記録したエポックメイキングなナンバーだ。
<まわれ まわれ メリーゴーラウンド>という冒頭のフレーズをアカペラで歌い始めた瞬間、心地よいグルーヴが放たれる。日本の音楽シーンにR&Bの波を持ち込んだこの曲が、彼の血肉になっていることがはっきりと伝わってきた。
さらに「流星のサドル」(久保田利伸のメジャーデビューアルバム『SHAKE IT PARADISE』収録曲、1986年)のカバーを挟み、「LOVE DEEPER」へ。
“R&B 3部作”シリーズのフィナーレとなったこの曲のサンプリング・ソースである「流星のサドル」とつなげることで、“日本のR&Bの歴史を継承する”という意図がさらに強く際立つ。「LOVE DEEPER」におけるファンキー&ソウルフルな歌声を体感できたことは、今回のツアーの最大の収穫だったといっていい。
「音楽で、声で伝えていきたい」
ラテンのフレイバーを投影した「Neverland」で開放的な音楽空間を作り上げたあと、ゆっくりと語りかけるREIKO。1stツアーの最終公演に集まってくれたことへの感謝、音楽を作ることで自分を愛せるようになったこと、ここにいる“あなた”にも自分の音楽を聴いて「ああ、よかった」と思ってほしいこと、自分の声で“あなた”の力になりたいと思っていること──。
「みんなに届けたい曲がたくさんあるんです。ステージに立つたびに思うことなんですけど、伝えきれないこと、たくさんたくさんあります。“もう言うことないよ”と思えるくらいまで、音楽で、声で伝えていきたい。どうかこの声についてきてください。よろしくお願いします」
涙と笑顔を交えながら真摯に語ったREIKOに、この日一番大きい拍手と歓声が送られた。
爽やかさと切なさが響き合うポップチューン「So Good」でライブは終了。1stソロツアーによって自らのスタイルと音楽的なルーツをダイレクトに体現したREIKO。久保田利伸、清水翔太をはじめとする日本のR&Bの系譜を受け継ぐアーティストとして、その存在はさらに強くクローズアップされることになりそうだ。
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