写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優による連載「QJカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
渋谷区の交差点で
第144回。
鞭を打つような寒さで固まる身体に、甘い西陽が差す渋谷区交差点。
凍えて停止していた嗅覚が嫌なタイミングで復旧し、マンホールから立ち込める下水のぬるく生々しいヒトの臭いが鼻腔にまとわりついた。
信号待ちの数分間。
左からは何種類ものショップバッグを擦らせ跳ねたリズムで交わされる中国語。
右からはやけに圧を感じさせる中東の派手なコミュニケーション。
すべてに関与したくなさそうにうつむく日本語。
ゴミのまわりを愉快に走るネズミの群れが目に入り、とっさに少しうらやんだ。
が、すぐに気持ち悪がった。
目の前に曖昧なルールで走行する自転車が通り過ぎようとしている。
まぶしさで何も把握できないまま、とりあえずシャッターを切ってみたが、そこには嘘みたいなまとまりが生まれていた。
人間界は歪に回っているようだった。
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NAOYA(ONE N’ ONLY)、セントチヒロ・チッチ、工藤遥、RUI・TAIKI・KANON(BMSG TRAINEE)、森田美勇人、蒼井嵐樹が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。