9人組メインダンサー&バックボーカルグループ・超特急が、1月28日、29日に神奈川・横浜アリーナにて、アリーナツアー『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2024-2025 “Joker”』の最終公演を開催した。

多岐にわたるジャンル／アーティストを取材してきたエンタメ系ライターが「こんなに世界観にどっぷりと引き込まれたライブは、もしかしたら初めてだったかもしれない」ともらすほど“楽しさ”とエンタテインメント性にあふれていたという、29日の公演の模様をレポートする。

いい意味で裏切られた、初めての超特急ライブ

実をいうと、筆者は今回初めて超特急のツアーへ足を運んだ。ライブを観るまでは、超特急=“会場を絶対に盛り上げる超絶楽しいボーイズグループ”のような印象が強かった。超特急と聞いてパッと思い浮かぶ映像は、アップテンポな曲に合わせてメンバー全員が激しいダンスをガムシャラに全力で踊っている姿だ。ひと言で表すと、“お祭り騒ぎ”のような。なので、「とにかくきっと楽しいんだろうな〜！」とワクワクしていたのだが、実際にライブを観たらその予想はいい意味で大きく覆された。

もちろん大前提としてめちゃめちゃ楽しかった！　でも楽しいだけじゃない。なんだかいろんな感情が湧いてきて、終演後も「すごいものを見せてもらった……」としばらく余韻から抜け出せなかった。

太陽のように明るいシューヤのオーラが会場全体に浸透

本ツアーはタイトル通り「Joker」がコンセプトなのだが、まず、セットが超豪華。赤を基調とした洋館風のセットには、扉やソファ、階段、輝くネオンサインなどが設置されている。どこか仄暗い雰囲気が漂っていて、本当にジョーカーが現れそうな雰囲気だ。

いよいよライブが始まると、その豪華なセットからメンバーがひとりずつ目まぐるしく登場。「次はどこから誰が出てくるの!?」と、この時点でワクワクが止まらない。しかも最後のタクヤはまさかのアリーナ席から現れたのでビックリした。メンバーが集結すると、未発表曲の「POKER FACE」でいよいよライブは幕を開けた。

横浜公演の2日間はボーカルのタカシが体調不良のため欠席だったが、シューヤがタカシのぶんまでフルパワーで美声を轟かせた。シューヤの圧巻の歌声と、まるで太陽のような明るいオーラが会場全体に浸透していき、会場のボルテージがどんどん上がっていくのが感じられた。シューヤのボーカルに合わせて思いっきり踊るダンサーメンバー7人の姿も頼もしい。「No.1」ではセットのあちこちに散らばったメンバーが、それぞれソロダンスを披露して会場を大いに沸かせた。

あっという間に魅了されてしまった「Joker」の世界

先述のとおり、超特急のライブはただ楽しいだけじゃなかった。今回のツアーはライブ全編が、まるで一本の名作映画のようにストーリーが作り込まれているのだ。最初のあいさつが終わりメンバーが一度ステージをあとにすると、会場のスクリーンに、ジョーカーから我々へ何やら不穏なメッセージが映し出される。

「君たちがこの街にやって来るなんて。この街で僕と遊んでいかないか？」「もしこの世界から早く抜け出したいなら、僕を見つけるといい」と告げるジョーカー。いったいどういうこと!?　まさかメンバーの中に、ジョーカーが紛れ込んでるということ？　なんだこの世界観は……おもしろすぎる！　さらにジョーカーは、「4つの扉を開けばいい」と、意味深なヒントもくれた。

その言葉どおり“ダイヤの扉”が開かれ、スクリーンに「閉ざされた世界」と文字が浮かび上がると、赤い衣装に身を包んだメンバーが登場。「On & On」のパフォーマンスで、先ほどまでのステージとは雰囲気をガラリと変えた。

さらに衝撃的だったのが、「UNKNOWN…」だ。ステージ上に8つの光る箱が出現し、メンバーがその箱の中で切なげな表情で踊る。まるで「ここから出してくれ！」と言わんばかりに、強く、しなやかに踊り続ける姿に胸を打たれた。それはまさに、“閉ざされた世界”から抜け出せず苦しんでいるさまを描いているようで、あっという間に「Joker」の世界に魅了されてしまった。

記者席で叫びそうになった、かわいすぎる「クリスマス・イブ」カバー

“ハートの扉”では、メンバーカラーのカジュアルな衣装に着替えた8人がラブソングを多幸感満載でパフォーマンス。「Fantasy Love Train」ではキュートさ全開の超特急を見ることができた。

また「Love Song」では、タクヤとカイが投げキスをしたり、ハルがほっぺハートしたりと愛嬌爆発！　あまりのかわいさに会場からは喜びの歓声が沸き起こっていた。さらにシューヤが「ここにいる8号車全員で一緒に歌いましょう！」と呼びかけ、会場がひとつになり大合唱。8号車（超特急のファンネーム）の完璧な歌声にも感動した。

「みんなの歌、俺らにも届いてるし、タカシくんにも届いてるよ〜！」とシューヤが叫ぶと、温かな空気が会場を包んだ。そして筆者が思わず「かわいい〜〜〜！」と記者席で叫びそうになったのが、山下達郎の「クリスマス・イブ」をカバーしたパフォーマンスだ。マフラーをくるくる巻いたハルや、アロハとユーキのハグなど見どころ満載で、セットをうまく使いこなしてミュージカルのように動きまわるメンバーから目が離せなかった。

心に深く刺さった「見えているもの全てが真実とは限らない」

“ハートの扉”パートが終始かわいくて忘れかけていたが、そういえば我々はジョーカーの世界に閉じ込められているのだった。“ハートの扉”が終わると再びジョーカーから「君には真実が見えているかい？」と、ドキッとさせられるメッセージが届く。“クローバーの扉”のテーマは、「見えているもの全てが真実とは限らない」。

ユーキ、シューヤ、アロハがセンターステージでパフォーマンスをして、カイ、リョウガ、タクヤ、マサヒロ、ハルがトロッコに乗り、スタンド席にいる8号車のもとへ。真っ白な衣装に身を包んだメンバーは、「Burn!」「Shake bady」と盛り上がる曲を立て続けに披露した。

カイとアロハがアクロバティックな腕立て伏せを披露すると、さらに会場は大盛り上がり！　「キレてる！キレてる！」という8号車のコールもバッチリだった。そのあとのMCではタクヤが、「ピュアで純粋でいい子のタカシが、なんでこんな運命なんだっていうね。ほんとキレてるよ、神様に」とタカシへの熱い想いをのぞかせると、会場からは拍手が送られた。

さらに昨年11月にリリースした最新シングル曲「AwA AwA」など盛り上がる曲が続き、会場中を思いっきり楽しませた。「そうそう、ライブを観るまではこういうアップテンポの曲を歌う超特急ばっかりイメージしてた！」と思った瞬間、「見えているもの全てが真実とは限らない」という、このステージのテーマを思い出した。

もしかして“クローバーの扉”には、「超特急ってこういうグループだと思ってたでしょ？　でも見えているものだけが全てじゃないんだよ」という意味が込められているのでは……？と、ハッとした。真相はわからないが、今回超特急のライブに初めて足を運んだことで、これまでの彼らのイメージを覆すようなパフォーマンスをたくさん目にしてすっかり魅了された筆者にとって、この「見えているもの全てが真実とは限らない」というジョーカーからのメッセージは、心に深く刺さった。

横浜アリーナがざわついた衝撃のラスト

「僕が誰なのかわかったか？」「真実へのカウントダウンが始まる」というメッセージとともに、“スペードの扉”が開かれる。グレーのスーツでクールに決めたメンバーは、「Spice」「Typhoon」など激しいダンスナンバーで会場を圧倒した。

そして物語の最後、ジョーカーから「最後の手がかり」が届く。大きなフードつきのコートを羽織り、誰が誰だかわからない状態で踊る彼らは怪しくも妖艶で目が離せない。ラストソング「JOKER FACE」では、なんとステージに大雨が実際に強烈に降り注ぎ、雨に濡れた状態で8人が踊り狂う。

そのあまりに劇的で美しいクライマックスに、もうどんどんのめり込んでしまう。ジョーカーはいったい、誰だったのか…？　ついにここで、その答えが明かされる。ジョーカーの正体はユーキだった。ステージにひとり残ったジョーカー（ユーキ）は、真っ黒な傘をさして切なげに踊ったり、なにかに怯えた様子を見せたりと、思わず息を呑む圧巻の演技で会場を掌握した。

「なんてすごいものを見てしまったんだ……！」と感動していたのもつかの間、まだまだ物語は終わっていなかった。カイ、リョウガ、タクヤ、ユーキ、タカシ、シューヤ、マサヒロ、アロハがカードを引き裂く様子がスクリーンに映し出されたあと、そのカードを配った仮面の男が実は“真のジョーカー”であることが判明。会場中から悲鳴が上がり、ざわつくなか、ステージ上に現れた仮面の男……その正体は、ハル。衝撃のラストに、会場からは大きな拍手が送られた。

こんなにすごい演出を考えた天才は……!?

こんなに世界観にどっぷりと引き込まれたライブは、もしかしたら初めてだったかもしれない。パフォーマンスだけでもじゅうぶん楽しませることのできる彼らが、それだけに留まらず、さらに「Joker」の世界観をこんなにも丁寧に作り上げ、熱量を持ってライブに臨んでいる姿にとても感動した。

「8号車をもっと楽しませたい、もっともっと魅了したい」という彼らの真摯な想いがあるからこそ、8号車もその気持ちに応えるように、常に熱量高く彼らを応援しているのだなと思った。

そして、こんなにすごい演出を考えた天才はいったい誰なんだ？と気になって調べたら、なんとメンバーのユーキではないか……！　ちょっと、天才すぎやしないか!?　いったい次はどんな物語を見せてくれるのだろう？　そして次こそはタカシもいる完全体の超特急を絶対に見たい！　もうすっかり超特急の沼にハマってしまった。

超特急『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2024-2025 “Joker”』セットリスト（2025年1月29日＠横浜アリーナ）

M1：POKER FACE(未発表曲)
M2：Re-Booster
M3：No.1
M4：On & On
M5：UNKNOWN…
M6：Fantasista
M7：Fantasy Love Train
M8：Love Song
M9：クリスマス・イブ
M10：Steak a Kiss ⇄ Kiss Me Baby
M11：星屑のダンスフロア
M12：Burn!
M13：Shake bady
M14：AwA AwA
M15：ジュブナイラー
M16：Spice
M17：Typhoon
M18：Countdown
M19：Beasty Spider
M20：JOKER FACE
──アンコール──
EN1：Rail to Dream
EN2：バッタマン