福井俊太郎(GAG)連載「指が輝いてる人はピザ食べた人」第16回【飯田橋×Coffee&Snackカウベル×このピザトースト変態ですねっ】

文・撮影=福井俊太郎(GAG) 編集=福田 駿


福井俊太郎(GAG)による連載「指が輝いてる人はピザ食べた人」。総武線沿線の旨いグルメを、福井お得意の“決めつけ”を挟み込みながら紹介していく決めつけグルメ連載だ。今回降り立つのは飯田橋駅。そこで経験した連載初の危機的状況。しかしそこで助けの手を伸ばしてくれるのもまた総武線。ありがとう、総武線。ありがとうタモンズ大波さん。中堅芸人きっての褒め上手、タモンズ大波さんも登場する指輝16回のはじまりです。

【連載】福井俊太郎(GAG)記事一覧

総武線、いつもありがとう

どうもぉ総武線はいつも私を正しい方向へ導いてくれます、、

先日、、「髪を切りに行くのめんどくさいなぁ」と人前に立つものとしては良くない怠惰な考えが勝ち、、クレヨンしんちゃんのボーちゃんみたいに口を開けながら電車に乗っていたら中野駅に停車したんですね、、すると駅前のビルが完全に建て替わっていて「お?風邪引いたら必ず通っていた木原クリニックって新しくなったビルにも入ってるのかな?」とビルのテナントを目で追っていると、、その視界の先に、、無駄に伸びた前髪、、が入り込んできたんですね、、「ちょっと見にくいなぁ」と前髪をよけていたら電車は動き出しました、、結局お世話になった病院を探しきれなかったんですよね、、もし前髪さえ目にかかっていなかったら探し出せてたかもしれない、、

その悔しさからその足で散髪へ行きました、、もちろん目的は清潔感を出す為ではなく、、総武線から見えるビルのテナントを思う存分に目で追えるようにですが、、ただそのおかげで、、この直後に急遽入った映像のお仕事にも手入れの届いた頭髪でのぞむことができましたし、、

メイクさんに「オン眉いいですね?」言われ、、ちゃんと聞き取れず「温玉?、、ですか?」と聞き返し「ハハハ違います」と一笑いをいただけましたからね、、総武線いつもありがとう、、

それでは、、恒例の、、OPV(オープニングVTR)の代わりとなるOGP(オープニンググルメピクチャー)を、、ザ・マスミサイルさんの「喫茶店ラブストーリー」が流れているイメージでどうぞ!

♪タバコの吸える汚い喫茶店 君が「もう帰る」と言い出さないかと 僕は息つく暇もなく喋り続けた♪

ちょーと亭さん

JR飯田橋駅から徒歩3分くらいにある、、ちょーと亭、、さん、、

街を歩いてると、、なにやら指輝グルメレーダーにひっかかるお店が現れまして、、お店の看板にはイタリアンパブBuonCuoreさんの文字が、、ただ、、入り口に置かれた木の看板と垂れ幕には「ごはん処ちょーと亭」と記されている、、この時点でワクワクが止まりませんでした、、

何故なら私は何を隠そう、、間借り共感者、、なんですよね、、【間借り】とは本来営業されているお店さんが使っていない時間帯に別のシェフがお店を借りて営業する形態のこと、、

私は多分この営業形態に今の自分を重ね合わせているんですね、、新しいメンバーを迎え新トリオになり、、さあ今からやるぞ、、という鼻息の荒い我々は自分たち主催のライブを頭を下げて多々やらせてもらっている、、それは今まだ外からの仕事のオファーがほぼないから自分達で劇場を【間借り】して腕を磨かせてもらっているんですね、、

だからほんと勝手にですが間借りスタイルのお店さんの、、今からのし上がってやるよ感、、に共感しながらパワーをもらっているんですね、、店先ですぐ、、ちょーと亭さんを調べてみると、、月曜日〜土曜日11時〜14時営業、、若きシェフが腕を振るう、、と書かれている、、間借り確定ぃぃ!!!、、ということで即入店させてもらい、、

ちょーと亭さん メニュー写真

シンプルな洋食メニューにワクワクしました、、「あなたも今はコントのことしか考えなくていいよ」と背中を押されているように受け取れたから、、そして私の大好物があったのでチョイス、、

トンテキ定食

トンテキ定食ぅぅぅ激旨ぁぁぁぁぁ(低くねっとりした声で)

エースのトンテキと捕手の白ご飯がバッテリーを組めばどんな強打者(味にうるさいお客さん)も完全試合で抑え込めると思いますぅぅ後ぉトンテキのソースが旨すぎて手がベチョベチョになるのも覚悟の上で胴上げしようかと思いましたねぇぇ後ぉ塩分控えめなお味噌汁もすごい好感度高かったですぅぅ(低くねっとりした声で)

やはり間借りの飲食店さんって味に勢いがありますね、、置きにいってない攻めの姿勢がお客さんを魅了する、、ワンオペで料理から接客から会計など孤軍奮闘されている姿に心を動かされました、、やっぱ汗をかかないとですね、、

♪無様でもいいかい?ださくてもいいかい?夢があるけどいいかい?この僕を好きになって♪

NYT、連載初の危機的状況

飯田橋、、私にとって馴染みのない街なので、、とにかくご飯を食べに行ってみようと、、午前中に仕事が終わり、、急いで総武線へ繋がる乗り馴れない電車に駆け込むと、、普通に乗り間違えてました、、結構逆に進んでました、、

確かあの日は、、ちょうど寒くなった日で、、年に一度ある、、SNS界隈で「いきなり冬始まったんだけど」的な投稿がタイムラインを埋め尽くす日、、昔なら、、かじかむ手、、白い息、、で冬を感じていたのに、、ここ数年は「急に冬やん」のSNS投稿が私に冬の到来を感じさせてくれます、、

とにかく急に寒くなったから注意力が散漫になってたんだろう、、と自分を慰めながら、、予定到着時間より45分遅れの14時に飯田橋駅に着きました、、ただこの時点でグルメマンとして、、致命的なミスを起こしています、、

なぜなら、、グルメ界での14時って、、ドラキュラで例えたら朝日が差してくる時間帯なんですよね、、ランチタイムを終えた飲食店が一斉にディナータイムまでお店を閉める、、14時から17時、、通称NYT、、ノンヨダレタイム、、そんな不毛の時間に足を踏み入れてしまったので、、これはまずいと、、目を泳がせながら、、できるだけ早足でお目当てのお店へ直行しましたが、、1軒目も2軒目もCLOSEの札がかけられていて、、次こそと突撃したお店にもCLOSEの札が、、その瞬間に自分の体が【お笑い】という概念に蝕まれていることに気づきました、、なぜなら、、お笑い芸人という生き物は、、3つ目に落とす、、という独自のルールに縛られながら生きているんですよね、、落とすというのは笑いを取るという意味、、一般社会での、、成功する、、と同義語なので、、1軒目2軒目のCLOSEは全然フリとして捉えれるし、、これは3軒目で成功する為のフリなんだと力が湧いてくるんですが、、3軒目のCLOSEを見た瞬間、、「もう取り返しがつかない」、、と絶望を感じる体になってるんですよね、、酸っぱいものを見ると唾液が出る条件反射と同じで、、3回目でうまくいかないと目に涙が溜まる、、もしかすると、、宇宙人にチップを埋め込まれるように、、お笑いのルールを作った人にチップを埋め込まれているのかもしれません、、そのチップを埋め込んだ人は「まぁ君に埋め込んだのはポテトチップやけどな(笑)」とこの後に及んでボケてきそうです、、

また少し違う角度ですが、、福井家に去年産まれた息子の、、4ヶ月検診、、という行事があった時も「なんで3ヶ月ちゃうねん」とよくわからないツッコミを心の中で入れたのには自分でも引いてしまいました、、

芸人が使う最大級の褒め言葉

とにかくもう今日はダメだ、、落とせなかった、、家に帰ろうと、、お腹を南アフリカのラッパであるブブゼラくらい鳴らしながら歩いていると、、いきなり目の前に、、

カウベルさん

んぅ???(低くねっとりした声で)

待て待て待てぇぇこのパターンがあったかぁぁぁ(低くねっとりした声で)

14時〜17時もフルスイングしてくれてる飲食店があったぞぉぉぉ(低くねっとりした声で)

砂漠のオアシスゥゥ喫茶店やぁぁぁぁ!!!!(低くねっとりした声で)

お腹を押さえながら入店、、昼は喫茶店、、夜はスナックになるという『Coffee&Snackカウベル』さん、、その数あるメニューの中から頭で考えず感じるまま頼んだのがこちら、、

ピザトースト

ピザトーストォォォォ(低くねっとりした声で)

味がとても複雑でめちゃくちゃ旨いぃぃホットスナックではなく創作小麦料理のカテゴリーィィィィ(低くねっとりした声で)

まず具沢山だしぃぃ想像もしてなかったキノコの旨みとかも感じれるしぃぃ焼き方が匠すぎてカウベルのママさんでしか出せない味なんだよぉぉぉぉ(低くねっとりした声で)

これピザより旨いピザトーストなんじゃないぃぃ??(低くねっとりした声で)

と、、自分の心の中で思っておいて、、ん?、、あれ?、、とその言葉に違和感を感じたんですよね、、ちょっと待って、、だって、、このピザより旨いと思ったピザトーストがあるのも結局はピザがあったからこそ、、まずピザの存在がなければこのピザトーストも存在してないのに、、ピザへのリスペクトもなくピザを下げてピザトーストを上げる手法はナンセンス過ぎるだろ、、今の『M-1』が面白いのも師匠方の漫才があったからこそ、、そこに想いを馳せれず、、言葉を商売にしてる人間として恥ずかしい、、褒めるのって意外と難しいんですよね、、こんな時、、物事を褒めるのが吉本中堅芸人で一番上手な、、タモンズ大波さん、、だったらどう言うんだろう?、、と想像してみました、、一瞬で答えは導き出せましたね、、彼は何かを褒める時に、、魔法の言葉を持っているから、、これです、、

タモンズ大波(康平)

このピザトースト変態ですねっ(相手にリスペクトを持ちながら半笑いで)

はい、、魔法の言葉、、褒め言葉としての、、変態ですね、、【変態】の称号を渡すことにより、、あなたは普通じゃないんですよ、、すごいです、、と一瞬で伝わる、、しかも直接的に媚びてくる言葉でないので褒められるのが苦手な人でもスッと入ってくるんですよね、、

それでは最後に、、ユビカガダムスの大予言を、、

ダウンタウンの浜田さんに頭を叩かれたい、、みたいに、、タモンズ大波さんに「変態ですね」と言われたい、、世界はすぐそこ、、

【連載】福井俊太郎(GAG)記事一覧

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福井俊太郎(GAG)

(ふくい・しゅんたろう)お笑いトリオ・GAGのネタ作り担当。『キングオブコント』では過去4度決勝進出を果たす。2023年から「福井俊太郎(GAG)プロジェクト」始動。GAG活動は「GAG福井」、個人としての脚本・執筆活動などは「福井俊太郎(GAG)」として活動する。低くねっとりとしたボイスが持ち味。

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