伊沢拓司「プレーヤーの実力を見えるかたちにしたかった」特注の30人早押し機も登場『ハイスクールクイズバトル WHAT 2024 presented by ランドマーク税理士法人』レポート
2024年8月31日(土)、都内でQuizKnockが主催する競技クイズ大会『ハイスクールクイズバトル WHAT 2024 presented by ランドマーク税理士法人』の2nd dayが開催された。
8月4日(日)に行われた1st dayは、東京会場、大阪会場、オンラインの3つで開催され、2007人が参加。その中から勝ち抜いた30人が挑んだ、2nd dayの様子をレポートする。
目次
セミファイナルステージは駆け引きや戦略性が重要
2nd dayは「セミファイナルステージ」、「エクストラステージ(敗者復活戦)」、「ファイナルステージ」の3つで構成されている。
セミファイナルステージでは、30人一斉に早押しボードクイズを実施。より早くボタンを押した5人は正解すれば5点、不正解ならマイナス5点。ボタンを押していない人にも解答権があり、正解すれば2点、間違えてもマイナスはナシというルールの中で、より多くのポイントを獲得した9人がファイナルステージへ進出する。
ボタンを押すとハイリスク・ハイリターン、押さないとローリスク・ローリターンとなるこのルールについて、大会長の伊沢拓司は「駆け引きや戦略性が重要になってくる形式かと思います」とコメント。
生配信で大会を見届けた山本祥彰は、「特殊な形式のため、あやふやな段階でつられて押してしまうということがないようにするのが、序盤の戦い方かなと思います。後半は、自分の順位を意識した上で、攻めていくか守りに入るのかという判断をしないといけない」と戦い方のポイントを述べた。さらに須貝駿貴が、最近の自身のクセとして「隣の人がボタン押したら勝手にボタン押しちゃうようになった」と話すと、伊沢が「少なからぬ人にクセがついてるんですよ。これが参加者からすると、悔しい結果になることもあるかなと思っています」と、今回のクイズ形式だからこそ気をつけたいポイントを指摘した。
セミファイナルステージが始まると、生配信で解説を担当する3人は誰が最初にボタンを押したかに注目。その学生の意気込みや得意ジャンルを紹介するほか、出題された問題の特徴を伊沢と山本が中心に解説し、須貝が「山本さんだったらここで押しますか?」と聞くなど、配信はクイズプレーヤーでなくても大会を楽しめる構成になっていた。
戦いの中盤からは、早押しした上で正解すると、小さくガッツポーズをしたり、喜びが表情に表れるプレーヤーも。その姿を見て、3人も盛り上がる場面が多く見られた。セミファイナルステージ終了後には、伊沢が今回のクイズの形式を踏まえ「今まで以上にクイズ的な総合力の高い感じのする、上位9人になったかなと思います」とコメントした。
その日一番輝いている人が「エクストラステージ」を制す
エクストラステージでは、ふたつの早押しを経て、最終的にひとりを選出する。伊沢は「その日一番輝いている人になれないと復活するのは無理なので、今までの戦い方を捨てて勝負に出る。負けちゃったらしょうがないな、ぐらいの勝負をする必要がある」と述べた上で、「セミファイナルステージからここまでの間で、上手に自分の気持ちを整理して、ここでちゃんと勝負のメンタルに入った人が勝つかなと思います」と分析した。
ファーストラウンドは、21人が7人ずつに分かれて早押しクイズを実施。ボタンを押して答えを述べる形式のため、ボードクイズとはスピード感が異なり、伊沢、山本、須貝の3人が「早い……」「カメラが寄るより早く答えていた」とこぼすことも。また、誤答してしまったプレーヤーが出ると、3人も悔しがり、「よくチャレンジした」「攻めたね」と、ボタンを押しにいったがんばりを称えていた。
各ブロックからふたりずつが進んだセカンドラウンドについて、伊沢は「2✕(誤答がふたつで脱落するというルール)あるから、誤答を使っていくようになるでしょうね。1✕まではガンガンいくと」と予想。実際、誤答ひとつで即脱落だったファーストラウンドよりも押しが早く、プレーヤーの攻めの姿勢が見られた。
最終的に敗者復活を決めたのは、セミファイナルステージで10位の成績を残した土岐龍惺(灘中学校3年)。伊沢はこの結果を受け「本当にここまで来ると全員のレベルが高い。知識も早押しも両方優れている。今まで以上に、このTOP10からナンバーワンを決めていくのにふさわしいメンバーが集まったと思っています」とコメントした。
優勝にふさわしいクイズを見たファイナルステージ
3ラウンド制のファイナルステージは、ファーストラウンドで10人一斉クイズを行い、勝ち抜けた6人がセカンドラウンドに進出。セカンドラウンドでは1on1が行われ、そこで勝った3人がファイナルラウンドに進み、優勝者を決定する。
山本が「声の大きさや表情を見て、みんながどんな気持ちでクイズをしているのかにも注目したいです。これまでのクイズ人生とかが表れるんじゃないかと思います」とコメントしたファイナルステージは、ファーストラウンドから、プレーヤーがボタンを押してから答えを思い出すような素振りを見せたり、誤答した際の悔しい気持ちが前面に出ていたりと、今までとは違う空気が感じられた。
セカンドラウンドに進んだ6人は、伊沢が「上位陣は派手に強い」と述べるほどの実力者で、試合が3戦中2戦連続でデュースに。これには伊沢と須貝からも、「惜しかった!」「追い上げてきた!」「決めた!」と熱のこもった感想が出てきていた。ファイナルラウンドは、3人での早押しクイズとなっており、全員が20ポイントを持ち、正解すると自分以外のふたりのポイントがひとつ減るというルール。誤答すると2問休みで、ポイントが0になった時点で脱落となる。
最後の戦いというのもあり、よりプレーヤーの緊張感や集中が感じられ、思わず3人が「よくこれで」と驚愕する早押しで正解する場面も。優勝した西村結人(長野県松本深志高等学校3年)について、伊沢は「追い込まれてもなお自分を信じていたのかなという感じがしたので、優勝にふさわしいクイズを見たなと思います」、山本は「決めるべきときにしっかり決める。ここで正解するとかなり有利だぞというポイントをわかっている押しができている印象でした」とコメント。どんな場面でも安定感のあるプレイが、優勝に結びついた大会となった。
『WHAT』が「なんだこの文化は」と思ってもらえるきっかけに
大会後には、大会長の伊沢からコメントが到着。出場したプレーヤーへの敬意、そしてクイズの新たな楽しみ方について語った。
「よりクイズ大会に参加しやすい環境を整えながらも、出されるクイズは手加減しないという、クイズの本質を損なわないかたちで新しい挑戦ができた、という点がよかったです。
クイズはやるだけじゃなくて、見て楽しむこともできますし、クイズをきっかけに何かを学ぶこともひとつの楽しみ方だと思います。まさに、タイトルにあるような『WHAT』ですね。『なんだこれは』『なんだあいつは』『なんだこの文化は』と思っていただけるきっかけを与えられていたらいいなと思います。
今回はセミファイナルステージを早押しボードクイズという、早押しが絡む形式の50問にしたので、参加者30人それぞれのよさが出たなと思いました。これをやるために30人が参加できる早押しボタンを特注したんですが、そこまでしたいくらい、じっくり見せられる形式で彼らが培った実力をたっぷりと感じてもらいたかったんです。YouTubeでの生配信を通じて応援したいプレーヤーを見つけてもらえたり、Xのハッシュタグも盛り上がってくれたりしたので、クイズのおもしろ味をより深く出すという点では、今回のセミファイナルステージはすごくおもしろかったかなと思います。
今回特に進化した点を挙げるなら「見せる」部分だと思いますし、それは『WHAT』らしい真剣勝負をそのまま貫けたということもであるので、今後もより参加しやすく、楽しみやすい実力勝負の舞台を作っていきたいですね」