俳優・清水尋也が語る若手芸人・エバースの魅力「彼らの漫才が日々のモチベーション」

2024.8.2
清水尋也

文=清水尋也

編集=梅山織愛


映画『東京リベンジャーズ』や『さがす』などに出演し、今秋には⾼杉真宙とのW主演映画『オアシス』の公開も控える俳優・清水尋也。お笑い好きの一面を持つ清水が最も夢中になっているのが、漫才師・エバースだ。いちファンとして、彼らの魅力を語る。

『Quick Japan』のコンセプト「Dive to Passion」にちなんで、「私だけが知っているアツいもの」について綴るコラム企画「DtP」。

エバースの漫才が日々のモチベーション

今、板の上に立てば、たちまち爆笑をかっさらうふたり組がいる。彼らの名前は「エバース」。吉本興業所属、芸歴9年目のお笑いコンビだ。

ボケの佐々木隆史、ツッコミの町田和樹からなるエバースは、『M-1グランプリ2023』の敗者復活戦において強烈なインパクトを残し、今年に入ってから飛ぶ鳥を落とす勢いでファンを増やしている。さらに今年2月に行った『エバース単独 60分漫才ライブ「末締め」』では、配信チケット3063枚を売り上げており、“今一番勢いのある若手漫才師”と言っても過言ではない。そしてこのエバースこそが、私が今最も熱中し目を離せない存在だ。

彼らとの出会いは、前述した『M-1グランプリ2023』予選。『タバコ』『ケンタウロス』という2本のネタを観て、私は完全に心を奪われてしまった。もともとお笑い好きではあったのだが、それまではテレビでネタ番組を観たり、配信でライブを視聴することがほとんど。それがエバースをきっかけに、彼らが所属する神保町よしもと漫才劇場をはじめ、さまざまな劇場に足を運ぶようになり、今では彼らの漫才を観ることが日々のモチベーションになっている。

もちろん、彼らの魅力を挙げればキリがないが、特筆すべきはやはりそのネタにあるだろう。ネタの執筆はボケの佐々木が担当している。基本的には、佐々木がハチャメチャな論理を展開したり、町田に無理難題を押しつけていくところから始まり、それに対して町田が淡々とツッコんでいくのだが、これが最高におもしろい。本当の会話のような絶妙なテンポとそれぞれのパーソナリティが投影されたセリフがかけ合いにグルーヴを生み、笑いを加速させるのだ。また、コントインせずしゃべくりだけで展開していく武骨なスタイルも彼らの魅力であり、現代のお笑いにおける多種多様なスタイルの中で、昭和初期に生まれた王道しゃべくり漫才が持つ素晴らしさを再認識させてくれる。

そしてこれはあくまで私の主観でしかないが、彼らがサンパチマイクを挟んで立つ姿は、『M-1』決勝などの大きな舞台に立つ未来を想像させる説得力がある。ほどよい身長差に対照的な見た目で、ビジュアルのバランスも完璧だ。佐々木の青色のスーツや町田のキャッチーな刈り上げ頭、観ている人間に印象づけるにはじゅうぶんな特徴がありながらもけっして派手すぎない。そして常に自分たちのおもしろさを信じ堂々と漫才を披露する男臭い姿勢が、なによりも絵になるのだ。

『ABCお笑いグランプリ』でも披露したネタ『野球肘』

まだまだエバースの魅力を語りたいところだが、文字数に限りがあるため、この先はぜひその目で直接彼らの漫才を体感してほしい。また、8月にはいよいよ『M-1』の予選が始まり、全国の漫才師が鎬(しのぎ)を削り合う。“『M-1』優勝”を目標に掲げる彼らにとって今大会はなによりも特別であり、昨年に比べて世間の認知度が高まっている今年は、初の決勝進出を果たす絶好のチャンスなのだ。『ツギクル芸人グランプリ』『ABCお笑いグランプリ』の2大会において惜しくも優勝を逃した悔しさを糧に、今年の冬こそ、その名を全国へと轟かせてくれることを切に願う。

今、最もアツい漫才師エバースの下半期の活躍、そしてなによりこれから彼らが歩んでいくであろう輝かしい未来への軌跡を、ファンとしてしっかりと見届けていきたい。

■清水尋也
(しみず・ひろや)俳優。主な出演作に、映画『東京リベンジャーズ』、『さがす』など。現在、ドラマ『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)が毎週土曜22時~放送中。W主演映画『オアシス』が今秋全国公開

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