ピン芸人・本日は晴天なりによる連載「バツイチアラフォーの幸せだけじゃない日常」。
ライブやイベントに参加するだけでなく、推しのグッズを持って出かけたり、主役不在で誕生日会を行うなど、今や会いに行くことだけを意味する言葉ではなくなった「推し活」。20年以上オタクをしている筆者も、現在はさまざまなかたちで「推し活」を楽しんでいるという。今回はそんな「推し活」の広がりを紹介する。
推し活の必需品「アクスタ・推しぬい」
推しのアクリルスタンド(通称:アクスタ)は、もう推しグッズとしては定番中の定番となり、アイドルや芸人のみならず、なんと有名歯科医院のきぬた歯科のアクスタまで存在する。
最近では、家に飾るだけではなく、ライブやイベント会場にも持っていけるように、アクスタ専用のポーチも発売されている。
アクスタに並んで人気なのがぬいぐるみ、通称・推しぬい。推しを模したものや、推しが考えたキャラクターなどがある。私の3大推しグルのひとつであるJO1はサンリオとコラボして本人たち発案の「JOCHUM(ジェオチャム)」なるキャラクターがおり、人気を博している。OWVやORβITもUFOキャッチャーのプライズ品で本人たちを模したぬいぐるみを発売している。
公式から推しぬいが発売されていないため、ファンが手作りしている界隈も存在する。そんな推しぬいをオタクたちはアクスタ同様、いや、アクスタより熱心にかわいがっている印象だ。
ぬいぐるみになると、「持っていく」ではなく「連れていく」と表現する人が増える。ライブの遠征に向かう道中だけではなく、推し活とはまったく関係のない家族旅行に連れていって写真を撮るオタクもいる。
さらに、推しぬいをターゲットにしているであろう「ぬいぐるみエコツアー」なるものもあり、自分のぬいぐるみを送付すると、浜辺で遊んだり、シュノーケリングやリバートレッキングなどをさせている様子を撮影して、フォトブックや写真データを現地のお土産とともに返送してくれるというサービスもあるのだ。
手先が器用なオタクは新曲が発売されるたびに、推しぬいの衣装を手作りして着せ替えている。100均の推し活コーナーには手作りうちわキットやトレカケースのみならず、推しぬい用の衣装や、推しぬい本体を作るキットまで販売されている。また、YouTubeでは作り方の動画が公開されていたり、ハウツー本も販売されている。さらには、アクスタや推しぬいと背景、どちらもピンボケせず、上手に写真を撮る方法などもSNSでは拡散されている。
幼少期、着せ替え人形にハマった世代のオタクは懐かしさも相まって吸い寄せられるように推しぬい活動をしているように感じる。私も世代なので、推しぬいやアクスタを持ってウキウキで出かけるのだがズボラなせいか写真を撮るのを忘れ、ただリュックに入れているだけになりがちだ。
そもそも自分の顔をネットにさらすのは危険だし抵抗があるけど、自分がこの現場に行ったんだ!という思い出を残すためにアクスタや推しぬいと一緒に写真を撮っているのかもしれない。そう考えると、すでに芸人として顔出ししている私は自分と一緒に写すので、推しぬいやアクスタを出すのを忘れるのだと思う。
推しは歩く経済効果
バラエティや情報番組のロケで行った場所、MVやドラマや映画の舞台、最近では公式YouTubeでVlogなども流行っているので、毎日のように聖地が誕生している。
飲食店では、お店側も「〇〇さんにご来店いただきました!」とか、「〇〇さんが座った席はコチラです!」など、ご丁寧に貼り出して、集客につなげている。さらに「〇〇のファンです」と伝えたら推しの曲をかけてくれるサービス精神旺盛な店まであるそうだ。
お店側もそこに訪れる側も過度なアピールやマナー違反は禁物だと思うが、オタクが来店したらそのぶん儲かるはずなので、推しはまさに歩く経済効果である。
さらに、推しの実家や親戚の家が飲食店だった場合、推し本人へのメッセージノートが存在していたりもする。実際、本人に届いているのかは定かではないが、実家が実施していたらしっかり届きそうな気がしてしまう。
私は昔、嵐が『ARASHI SUMMER TOUR 2007 Time -コトバノチカラ-』というツアーを行っていた際は、「Time」にちなみ、ライブ後にオタク友達と語るために「時(とき)」という居酒屋を予約したし、『2004 Dの嵐!Presents 嵐!いざッ、Now Tour!!』では、「いざッ、Now Tour!!」から「いざなぎ」という店を予約した。ぜんぜん聖地じゃなくても勝手に関連づけて盛り上がっていた。
以前、ふらっと立ち寄ったラーメン屋さんのカウンターテーブルのへりに「春日」というシールが貼ってあった。ふと隣を見ると「若林」のシール。そこは、オードリーさんがロケで訪れたラーメン屋さんだった。オードリーさんのオタクが来店しているのかは定かではないが、アイドルのみならず聖地巡礼は、オタクも施設側も幸せにする。
日本の各所にある聖地
都内に住んでいると、たまに家のすぐ裏の路地や商店街が突如、聖地になったりする。かなり昔の話で時効だと思って話すが、15年近く前、推しが出演していたドラマのロケで使われている店舗が自分の家から3分くらいの場所だと発覚し、さらに、その場所からゲリラ生番宣していたことがあり、驚きすぎて失禁したことがあった。
慌てて着替え、家の鍵も閉めずにダッシュで現地へ向かったが、生番宣は1分ほどで終わり、人だかりの中、黒いフィルターの貼られたロケバスはあっという間に去り、推しを拝むことはできなかった。漏らしてなかったら間に合っていたかもしれない……でも突然、家から3分の距離に推しがいるとわかったら誰でも失禁すると思う。
最近、アニメ作品を観ていても街並みがやたらと具体的に描かれていることが多く、調べてみると実在する風景だったりする。映画を観ていて、印象的な街並みが出てくきたときもすぐに検索してしまうが、すでに聖地巡礼スポットとしてまとめられていたりする。
つい先日観た映画でも、元旦那と暮らしていた街の商店街が舞台となっており、まとめサイトにもしっかり載っていて複雑な気持ちになった。
私はアニメや映画作品の舞台が田舎街だったりすると、意図的に町おこししようとしているのか?と勘ぐってしまうほど、影響力は大きいと思う。
推しが広げてくれた友情の輪
先日、JO1の金城碧海くんが24歳を迎えるので、碧海くん最推しのオタク友達を中心に集まり、本人不在のお誕生日パーティーをした。
お祝いをしたお店もオタク友達のお店で、碧海くんをイメージしたオリジナルケーキを制作してもらったのだ。お祝い広告以外にもSNSでよく見かけるオリジナルケーキ。誕生日当日の午前0時は、自分や友達の誕生日では見たことのないような趣向を凝らしたメンバーカラーのケーキがSNSを埋め尽くす。
オタクたちが推しの誕生日お祝いをするのを見越してか、最近、公式グッズでケーキピックが発売された。ケーキピックがあればコンビニのケーキで推しのお祝いをしても見栄え的にはじゅうぶんだ。ケーキに金をかけるなら推しに落とせという意味か?と勘ぐってしまったが、おそらく純粋にお祝い文化を盛り上げるためだろう。
一緒にお祝いしたオタク友達は、もともと知り合いだったわけではなく、JO1好きからリアルな友達になった。相手は何が好きなんだろう?どんなことに興味があるんだろう?と、探る時間がいらないので、仲よくなるスピードは早かった。年代も性別も飛び越えて共通の話題で盛り上がれる。この日もプライベートな話はほぼせず、ひたすら推しの話題で持ち切りだった。プライベートの話をするのが嫌なわけではない。推しの話題が尽きないだけなのである。
現在、私のオタ友との交流場は主にXだが、過去にmixiやファンが作ったコミュニティサイトの掲示板で出会ったオタク友達とも長く付き合いが続いており、20年来の友となった子は、一緒に住んだこともあった。キッカケはSNSでも、一緒にライブに行ったりするうちに推しの話だけではなく、仕事の話、恋愛の話、お互いのことをなんでも話すようになった。
オタクの輪は広がり、海外のオタク友達もでき、ライブに参加するために日本に来た際は私のうちへ泊まったりした。ネットのつながりからトラブルに発展したり、詐欺に遭うこともあるので注意は必要だが、推し活を通して、推しがいなくても楽しめる関係の友人に出会えたことは私の中で大きかった。推しがいなくちゃ始まらないが、推しと直接的な関わりがなくても推し活はじゅうぶん楽しめる。
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