【写真18枚・限定カットあり】蒼井翔太は「感情を昇華させるアーティスト」5年ぶりの声出し解禁ツアーファイナル公演レポート【『蒼井翔太 LIVE 2024 WONDER lab. DETONATOR』千秋楽】

2024.3.6

文=ふくだりょうこ 撮影=上飯坂一、高田真紀子 編集=高橋千里


ライブというのは少なからず、ステージに立つアーティストの素顔が垣間見られる瞬間だ。

それは、アーティスト自身が信頼するファンとの大切な空間だから、というのも大きい理由だろう。剥き出しの感情がぶつかり合う。

同時に、自身の世界観を体現できる限られた場でもある。

1月28日の大阪を皮切りにスタートした『蒼井翔太 LIVE 2024 WONDER lab. DETONATOR』。タイアップも多い自身の楽曲を、ひとつの世界観を築くためにセットリストを組んでいくのは、なんとも難しいようにも思える。

しかし、曲ごとに変化する蒼井翔太の表現力が、その唯一無二の世界観を構築していく。そして変化する表現力が、現場にいる人たちの心を、刺激する。

そんな蒼井翔太のツアーファイナル。2月25日、TOKYO DOME CITY HALLの模様をレポートする。

蒼井翔太が作り出す「唯一無二の世界観」

5年ぶりの声出し解禁となった本ツアー。心なしか、「以前のライブが戻ってきた!」というような高揚感が、開演前から会場全体に満ちている気がする。

定刻を迎えると、より大きくなるBGM。そこから、もう間もなく、の合図を感じ取った客席に、サイリウムがきらめく。

まずは、ドラム音が空気を震わせる。そこにベース、ギター、キーボードとひとつずつ音が加わっていき、厚みを作っていく。

期待感が高まっていくなか、ステージ中央に現れたシルエット──蒼井翔太のボーカルが加わり、歓声が上がる。

昨年リリースされた約6年ぶりとなるアルバム『DETONATOR』を引っ提げての本ツアー。
オープニングを飾るのは、アルバムの1曲目である「Freestyle Lover」だ。

激しいサウンドに力強い歌声を乗せ、体を弾ませ、会場とともにテンションを上げていき、そこから「Eclipse」「イノセント」と、パワフルな楽曲を立て続けに歌い上げる。

MCでは、久しぶりの声出し解禁ライブであることに触れたあと、今いるのがセカンドライブのときに立った会場だと回顧。

「今、こうやって立たせてもらうと、また全然違った景色が見える」と目を細める。

「蒼井翔太のライブはいつもあっという間に終わってしまう」と蒼井自身が言っていたが、最初からトップスピードで蒼井翔太の世界観に引き込んでいく。

続く「Existence」「SMILE SMILE SMILE」では、ダンサー4人とともにキレのあるパフォーマンスで魅せていく。一つひとつが細やかな蒼井の動きに、思わず見入ってしまわずにはいられない。キュートさもありながら、艶やかさものぞかせ、ドキリとさせる。

かと思えば、しっとりと「Key to My Heart」を歌い上げ、冒頭6曲でも自身の多面性を表現していく。

もちろん、蒼井の表現はもっと幅広い。バンド紹介を経て、衣装をチェンジして登場すると、「BAD END」「PSYCHO:LOGY」「硝子のくつ」とクールなナンバーを歌い上げ、圧倒的な歌唱力とともにそれぞれの世界観を構築していく。

さらに、「Harmony」「Tone」などでは改めてその歌唱力の高さで圧倒もする。

「Key to My Heart」から「Tone」までの楽曲はドラマやアニメのテーマソングに起用されているが、その作品ジャンルはバラバラだ。それらの曲の背景を感じさせながらもステージ上でセットリストになじませていく。

蒼井翔太としての表現力と、作品に寄り添った表現力の凄まじさを感じる。

「引きこもっていた人間なのに」軽快なトークで心をつかむ

一方で、MCでは蒼井の素を感じる部分も随所に見られる。

中盤のMCではチャイムが鳴り響き、ダンサーが机と椅子を持って登場。「学園企画」として「蒼井先生」がダンサーやバンドメンバーを生徒と見立て、ひとりずつとトークを繰り広げていく。ツアー中にメンバーたちと話をしてきたようだ。

テーマのひとつは「蒼井の印象」について。すでにいろんな印象が話されてきているので「もう話すことがない」としながらも、メンバーから飛び出すのは、蒼井の優しさを感じさせるエピソードだ。

「家で大きな白い犬を飼っていそう」というバンドメンバーからの言葉には、犬と散歩する小芝居を見せるなどお茶目な一面も。また、「『ほんだらば』が口グセ」ということをバラされると恥ずかしそうにはにかんだ。

感じるのは、コミュニケーション能力の高さだ。メンバーからもコミュ力が高い、と言われていたが、トークのテンポがよく、気がついたら蒼井のペースでこちらも笑ってしまっている。

本人は「ずっと引きこもっていた人間なのに」と言っていたが、そのトーク力の高さはライブを楽しくさせてくれている秘訣のひとつだろう。

また、それは蒼井の会場にいる観客や、バンドメンバーたちを楽しませたい、という気持ちによるところも多いのかもしれない。

「感情の発露」が人の心を揺り動かす

ライブ後半でも、そんな蒼井の気持ちを表すかのように趣向を凝らした演出が垣間見られた。

学園企画直後の楽曲「Alright」では椅子と机をそのまま活かし、どこかミュージカル風に。また楽曲中にはバトントワリングにも挑戦し、投げ技も披露し、客席を沸かせた。

このあとのMCでは客席のリクエストに応えて、緊張しながらももう一度バトントワリングの投げ技をやってみせる場面も。こんなところでも「楽しませたい」という彼の気持ちがうかがえた。

白の衣装にチェンジすると、最新アルバムから「J-E-A-L-O-U-S」を披露、さらに「Virginal」「絶世スターゲイト」と初期の楽曲も織り交ぜながら疾走感を増していく。

さらに「2023年はたくさんの出会いがあった一年だったんです。いろんな作品と出会って、いろんな楽曲とも出会って、『DETONATOR』を作ることができて」と感慨深げに語る。

「出会いといえば、新しい出会いもありますし、再会も出会いです。僕にとっては再会と新しい出会いが重なってできた、新しい曲があります」と「8th HEAVEN」を披露。しっとりと歌い上げた。

そして、本編ラストを締めくくったのは「巡」だ。

「僕はここにいて、みんながここにいる。そのことを忘れなければ、またいつか会えるんじゃないかな。僕もこういう場所をずっと守っていきます。なので、また遊びに来てほしいな」と優しいメッセージを送り、歌い出した「巡」。

思いがあふれ出すかのように、蒼井の瞳に涙が光る。それでも、サイリウムの光と歓声に背中を押され、時折、歌詞を涙でにじませながらも、歌いきった。

その後、大きなアンコールに応えるようにして笑顔で再登場すると「Shake Shake! Together!」と「ずっと…」をダンサーとともに披露。さらに、「give me ♡ me」では客席との大きなコール&レスポンスで最高潮に盛り上がり、ライブを締めくくった。

この日は特別にWアンコールでも登場。自身が主人公を担当するアニメ『出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした』のオープニング主題歌で、3月29日に配信リリースすることが発表されたばかりの新曲「EVOLVE」をイチ早く披露、ファンを喜ばせた。

最後は全員笑顔でライブ、そして『蒼井翔太 LIVE 2024 WONDER lab. DETONATOR』の公演を終えた。

そして、蒼井翔太は進化する

アーティストとしての活動期間が長くなれば、自然と楽曲も増えていく。同時に、楽曲によって引き出される別の一面もあるだろう。

そこにライブでのパフォーマンスが加わると、楽曲とアーティストの双方の新たな魅力を引き出される。

蒼井はMCで「前のライブを超えたい」という思いを語り、「“何が出るかなBOX”のようなエッセンスを毎回入れている」と話していた。

そんな想いがあるからこそ、ライブも蒼井自身も進化し、私たちは毎回新たな表現を目の当たりにすることになる。

そして、特筆すべきは蒼井の豊かな感情の移り変わりだ。笑い、時にはおどけ、抑えきれない感情に涙をあふれさせる。そんな生の感情はパフォーマンスに反映され、観ている者の心を打つ。

進化が約束されているライブパフォーマンス、培われた豊かな感情。

そんな彼が今後も見せてくれるパフォーマンスは、珠玉のエンターテインメントであることは間違いない。

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