高校生が個人の都合100%で書き綴る、アーティストEveの楽曲の魅力

2024.1.6

 

現在QJWebには、学校法人自由学園が行っている「飛び級社会人」というプログラムを通して、高校生のインターン生3人が来てくれています。そんな3人から、それぞれ今ハマっているコンテンツについて記事を書いてもらいました。今回は第2弾、アーティストのEveさんの楽曲解説です。

2009年に歌い手として活動を開始して以来、長い期間を通して活動のかたちを変えながらたくさんの名曲で多くのファンを魅了し、来年5月からはアジアツアーを控えている、ネット出身のアーティスト「Eve」。中毒性のあるリズムや歌詞の楽曲を自身で手がけ、彼の持つ中性的な声で歌い上げる、ライブ以外では顔出しをしない、謎に包まれた人物である。

今回はそんなEveの楽曲を、1ファン兼一般高校生である私が完全な趣味嗜好、個人の都合100%でオススメ曲を4曲+1曲ピックアップしてみた。Eveといえばこの曲!というような有名な曲から、少しマイナーな曲まで、オタク特有のこじつけや妄想も少し交えながら紹介していく。

教科書には載せれない手段で誰かに媚びていないで夢を見て/「デーモンダンストーキョー」

2016年10月19日、2枚の自主制作アルバムを経て初の全国流通盤アルバムとして発売された『OFFICIAL NUMBER』に収録され、同日にMVも公開された。作詞作曲は「嗤うマネキン」「アクシデントコーディネイター」などのVOCALOID楽曲を手がけているMI8k(みやけ)。Eve本人の作詞作曲ではないものの、曲調やMVの世界観がところどころ似ているところがある

アップテンポな曲調とリズムや音色が特徴的な楽曲。曲名にデーモンダンスとついているとおり、MVのサビの振り付けが特徴的で中毒性があり、当時ボーカロイドやインターネット発の音楽にハマり始めだった小学生の私の心をも躍らせた。

当時スマホを買ってもらったばかりで、初めての着信音にこの曲を選んだ記憶がある。幼いながらなんとも凝った趣味だ。ただ、それだけリズムや歌詞に中毒性があったことに間違いはないだろう。しかし、今の小学生ほど流通しきっていなかったスマホに友達からの電話はめったにかかってこず、ほとんど流れてこなかった。

この記事を書くにあたって改めて確認したMVの概要欄には「拡声器越しに歌いました」とある。独特の音質はMixによるものだと当時は思っていたが、まさかの拡声器だということに、今さらながらさすがに驚きを隠せなかった。

絶対的ナンセンスな事でさえ君になら僕は任せてみたい/「ナンセンス文学」

2017年12月13日に発売されたメジャーデビュー前最後のアルバム『文化』に収録されている。同年5月にMVが公開された。同じアルバムに収録され、今では1億再生を超えている名曲「ドラマツルギー」と同時期に話題を呼んだ楽曲

主に使われている楽器がギター、ベース、ドラムといったバンドサウンドといえばの楽器が使われており、早いテンポの楽曲。

Eve楽曲のオリジナルキャラクター「人外」の「ひとつめ様」とひとりの人間が主人公。今では多くのMVに出演し、小説にまで登場しているひとつめ様が、初めて登場したMVがこの楽曲である。

同じ歌詞のフレーズがいくつか使われているが、すべてギターやドラムのリズムが違うため、すべて違うように聞こえる。サビのリズムなど、中毒性のあるフレーズが多く、「デーモンダンストーキョー」と同様に、わかりやすいダンスがさらにその効果を引き上げている。

多くの歌い手やゲーム実況者などにカバーされており、カバーしたほうも再生回数が100万回を超えているものが多くある。

今更なんて言わないでね/「お気に召すまま」

「ナンセンス文学」と同じく自身4枚目のアルバム『文化』に収録されている「お気に召すまま」、同年11月29日MV公開。アニメーションはヨルシカの「秒針を噛む」やOrangestarの「快晴」などを手がけているWaboku(わぼく)が担当している

軽快なバンドサウンドで形成されているこの曲は、ひとりの少年が少女に恋をした。だがしかし、うまく想いを伝えられない、そんな葛藤を抱えながら自分自身の中にいる存在や人外をも巻き込んでいく物語である。

ポップな曲調や作り込まれた世界観に魅了されるファンが多く、MVの再生回数は「廻廻奇譚」「ドラマツルギー」など、Eveといえば!といわれる楽曲と並んで1億回を超えている。

この時期のEve楽曲のいくつかには共通点がある。サビの歌い出しが一緒だということだ。先ほど紹介した「ナンセンス文学」は「僕ら馬鹿になって宙を舞って」、自身最初の1億再生突破曲となった「ドラマツルギー」は「僕ら今さあさあ喰らいあって」、そして「お気に召すまま」は「僕ら今さあさあ輪になって」、どの曲もコンセプトや曲調の統一はされているにもかかわらず飽きないところは、いろいろな曲調を使い分けることができるEveの大きな強みではないだろうか。

手放すことに怯えて君は今日もstay/「トーキョーゲットー」

2018年7月6日にMV公開された「トーキョーゲットー」。アニメーションは先述の「お気に召すまま」と同様、Wabokuが担当している

今まで紹介した3曲は暗い歌詞はところどころあるものの、中毒性のあるダンスやアップテンポな曲調など、どちらかといえば明るい曲、といった印象が強いが、この曲はどうだろうか。

Eveの魅力といえばやはりダークな世界観と連想する人も少なくはないだろう。この曲は世界観、歌詞、MVの雰囲気、すべてにおいて今までの3曲とは少し違うように感じる。

独特な世界が特徴的なEveの楽曲の中でも、群を抜いて独特な世界観が広がっており、解釈の幅が広い楽曲となっているため、詳しい内容はぜひMVを観て考えてみてほしい。

今回の記事のタイトルとおり、超個人的な都合だが、MV公開日(7月6日)は私の誕生日である。この年の誕生日は当時から元気にいろいろな界隈をまたいで推し活をしていた私にとって、公式からの供給という名の誕生日プレゼントが数えきれないほどあった年だった。この楽曲の公開も大きすぎるプレゼントのひとつだったのだが、あまりにも供給が多すぎるものだから、興奮のあまりその日の夜はこの曲を延々とリピートしながら夜を明かしたことを覚えている(翌日は翌日で七夕の大供給だった)。

Extra:もうここには望みはないけれど/「チョコレートタウン」

2018年2月2日に歌い手「Sou」のチャンネルでMVが公開されたEve書き下ろしの楽曲「チョコレートタウン」。同月28日に発売されたEveとSou、ふたりのアルバム『蒼』に収録されている

今回は「Eve歌唱の楽曲」に焦点を当て楽曲を選んだため抜けてしまったが、どうしてもご紹介したくてExtra:としてねじ込むことに成功した。どこかエモさを感じるメロディに、Souの高く芯の通った、でもどこか柔らかい雰囲気の声がマッチして儚さが演出されている。

主人公の少年は最後は悲しい結末になってしまうのだが、その結末や過程も含めてぜひMVで見届けてほしい。

さいごに

いかがだっただろうか。冒頭でもお伝えしたとおり、これは1ファンである一般高校生が独断と偏見と個人の都合で選んだ5曲である。

今回紹介させていただいたのは数々の名曲を持つEveの中のほんのひと握りに過ぎない。もともと彼のことを知っていた人は改めてMVを見返すきっかけとなったり、今回この記事をきっかけに知ってくれた人はほかの曲も聴いて、あなた自身のお気に入り楽曲をぜひ見つけてみてほしい。

Profile けー
2006年7月6日生まれ、茨城県出身。自由学園高等科2年。どこにでもいる一般高校生。とにかく声がデカい。小学2年生からニコニコ動画やYouTubeなどでゲーム実況を観始め、小学4年生でEveを知る。VOCALOID楽曲とカップラーメンが勉強や作業のお供。ホラー好きだが、ビビりなため常日頃から頻繁に腰を抜かす。高確率で痛めるまでがセット。インターネットミームや過去の流行はだいたい網羅しているが、最新の流行を検知することは苦手。勉強<お絵かきの素行はあまりよくない高校生。

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