宅配業者あるある=配達中に“1万円札で缶コーヒー1本”を買いに行く…その理由は?「嘘でしょ」と言いたくなる受取人も(アンバランス黒川)

2023.10.26

ネットショッピングの普及などに伴い、特にコロナ禍以降は、宅配便の取り扱い個数が急増している。普段人々が何気なく利用している宅配サービス、しかしその荷物一つひとつは人の足と手によって届けられている。

2022年に結成30年を迎えたお笑いコンビ・アンバランスの黒川忠文は、最近まで芸能活動の傍ら宅配業に15年従事したベテラン配達員だった。本コラムでは“宅配のプロ”だった彼が、長年の経験をもとに積み重ねてきた配達テクニックや、その過程で経験した数々のエピソード、宅配業の裏側を明かす。

あなたの荷物はどんな経緯を辿り、どんな思いを背景にして届けられているのか。

代引きのお釣り問題

スマホを操作する人2
この画像はイメージです

最近では、ネットショッピングや通販でクレジット決済をする人が増えました。クレジット決済で購入したお荷物受け渡しの場合は、受取人に荷物が届き次第配達が完了となります。とはいえ、お渡し時に商品の代金と引き換えでの配達もまだまだ一定数あります。そこで今回は、代金引き替えの荷物「代引き」について、宅配業者の視点からお話ししたいと思います。

まず皆様は、多くの宅配業者が、代引きで受け取るお客様のために、自力で事前にお釣りを準備していることをご存じでしょうか。私も宅配業に従事していたときは、1万5000〜2万円を、1000円札と硬貨に両替していました。現金自動預払機で両替もできるのでよく利用しては、崩した現金をウエストバッグに入れていました。

この画像はイメージです

配達中、代引きを利用したお客様にお釣りを渡していると、だんだんと千円札がなくなったり一部の硬貨が減ってきます。そうすると、多くの宅配業者はコンビニへ行って買い物をし、お釣りを補充します。時には5円玉、1円玉の確保のために、わざわざ9円のお釣りがもらえる商品を選んで買うことも。いつも店員さんに「またお釣り補充のために1万円札で缶コーヒー1本買いにきた」と思われているだろうな……と申し訳ない気持ちになっていました。

たまにタイミングよく、同じ地域で別会社の顔見知りな宅配ドライバーと会って両替してもらうこともあるのですが、そんなタイミングがなくて1円玉のお釣りがなくなってしまった場合は、お客様に「端数切り捨てサービスです!」と言って配達することもありました。当然、商品の入金は額面どおりなので、「サービス」した分の金額は自腹です。しかし、数円、数十円なら配達時間のほうを優先していました。

給料日付近は特に注意が必要⁉

そんな“代引きのお釣り事情”ですが、宅配業者にとって気をつけないといけない日があります。それは給料日後の数日間。この時期の直後に代引き荷物のお届けに行くと、高確率で1万円札での支払いが多く、「何回両替しなあかんねん!」といった事態になります。読者の皆様で代引きを利用する方がいましたら、できるだけお釣りがないようにご協力いただけると大変助かります。

中にはピッタリの金額で準備してくれているだけでなく、銀行の封筒に現金を入れてあり、金額も書いていて、購入した商品名も書いてあり……というお客様もいらっしゃって、大変助かりました。

しかし当然この逆パターンもあり、「今、現金がないので、後日来てほしい」「数時間後に来てほしい」などと言われたこともありました。一番困るのが、今からコンビニへ現金引き出してくるから5分待っててほしいという場合。以前こちらの連載でも書いたのですが、だいたいの場合、配達業者は3分あれば荷物を1個配達できるため、かなりの時間ロスになってしまうのです。

「キャンセルで返送してください」

最後になりますが、私が15年間宅配業に携わってきた中で「こんな人もいるんだ」と驚いた出来事を紹介します。

私がいつも回っていた配達ルートにお住まいのお客様で、連日のように代引き荷物が届く方がいらっしゃったのですが、平日はほとんど留守でした。そのため週末に再配達の連絡を入れてくれるか、こちらが在宅を信じて配達に行くことが多かったです。荷物が4〜5個溜まっていることもザラでした。

それに、その方がたまに在宅していてもまだまだ安心できません。こちらが玄関先に4〜5個の荷物を並べると、一つひとつの代金を確認しつつ、何を注文したのかゆっくりと思い出す……そのあと財布の中身をチェックして「コレとコレは支払えるから受け取ります。それ以外はキャンセルで返送してください」と。

「えっ! 嘘でしょ! 購入するから注文したんでしょ? 届いたときの所持金次第で買う買わないを決めるのーー⁉」と、衝撃を受けました。しかもなんとこのやりとり、毎週のように繰り返されていたのです。

物流環境について、そしてSDGsについて、みんなで考えないといけない時代です。皆様、商品購入は計画的に!

この記事の画像(全4枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

黒川忠文(アンバランス)

(くろかわ・ただふみ)1972年生まれ。太田プロダクション所属のお笑い芸人。山本栄治とのコンビ「アンバランス」のメンバー。『ライオンのごきげんよう』(フジテレビ)の前説を18年半務めたことでも知られる。

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。