ピン芸人・本日は晴天なりによる連載「バツイチアラフォーの幸せだけじゃない日常」。
以前、働いていたキャバクラで出会った韓国人と2022年に結婚した本日は晴天なり。幸せいっぱいの新婚生活だが、言葉や文化の違いに驚かされることも多いという。旦那さんと出会ったからこそ気がついた日本語の不思議や疑問に思った韓国の文化を紹介する。
普段から使っているのに説明できない日本語
私の旦那さんは韓国人だ。
それゆえ天然ボケではないのに、だるまを天狗と言ったり、ガチャピンをデチャポンと言ったり、マンガでもやり過ぎレベルの天然ちゃんみたいな言い間違いをしてくるので、かわいくていつも思わず抱き締めてしまう。旦那は大人しくて控えめな性格のため、フザけてわざと間違えてくるタイプではない。あざとさゼロなのがよけいに愛おしい。
子供のころから日本のアニメが大好きでアニメで日本の知識や言葉を学んだ彼は、10年以上日本に住んでいるため、今では日本語がペラペラだ。しかし「鳥頭白くして馬角を生ず(うとうしろくしてうまつのをしょうず)」など、日本人でもあまり知らない日本語が存在するように、10年以上住んでいても知らない日本語は存在するようだ。
たとえば「のっぴきならない事情」「能書きを垂れる」「ひょんなことから」「さすらい」「ブイブイ言わせる」「否が応でも」など 。
堪能がゆえに遠慮なく日本人かのように対等に話していると、ふとした瞬間に「どういう意味?」と質問される。しかし、当たり前のように使っている言葉にもかかわらず、私はこれらをまともに説明できなかった。
昼間、感動する映画を観て「時間が時間なら泣いてたわ~」と言ったときも、「時間が時間なら?」と言われ、頭を抱えた。抱えたなんてレベルじゃない。まるで言葉のパラレルワールドへ迷い込んだような感覚に陥った。
「相手が相手なら殴ってたわ」。うん、言いたいことはわかる。「場所が場所なら大変なことになってたよ」。うん、通じる。でも、意味を説明はできない。なぜだ? なんだこの新感覚は!! 変な気持ち!!
説明しようとすればするほど、ドツボにハマる。「ドツボ」も説明できない。「説明」も説明できない。「できない」も説明できない。「できない」は「できない」だ、としかいえない。
私はいつから「できない」という言葉を使っている? 誰に習った? 誰にも習わずいつの間にか話していた気もする。いつもギブアップして検索するので、私の日本語力はアラフォーになった今もなお上がっているように思う。
初めて聞いた外国語は、別の言葉に聞こえるという事実は「空耳アワー」が証明してくれていたが、私の旦那も負けてない。
テレビに弁慶を模したキャラクターが出てきた際、「最近の子供たちって“弁慶の泣きどころ”って使うのかな?」と尋ねたところ、「便器の脇どころ?」と言いながら腕を上げて脇を押さえていた。
「あれ、“まさか牛若丸”も知らない?」と、もう一度尋ねると、今度は「“まかさ牛仲間”って何? 牛の友達?」と聞き返してきた。天然ちゃんの域を超えて、クレヨンしんちゃんみたいな言い間違いだ。
「人の名前だよ」と伝えると「『犬夜叉』に出てきそうな名前だね」と言った。何度もいうが、旦那はアニメから日本語を学んだ。
別の日には、旦那が買ってきた石鹸について「粗品みたいだね」と言ったら「粗品」を人名だと思い、不思議がっていた。ほかにも「ディズニーシー」は「ディズニー市」だと思っていたり。このようなちょっとした思い違いは日常茶飯事。
ちなみに私が知らなくて、彼が知っていた日本語がひとつある。「五月雨式に申し訳ございません」。ビジネス用語なら芸人の私より、サラリーマンの彼のほうが詳しいようだ。
韓国の“ラーメン”は日本でいう“うまい棒”
旦那は日本超ラブだが、私は韓国について無知なので価値観の違いで驚くことが多い。
私が900円くらいのお弁当に対して「ラーメンぐらい高いね!」と言ったとき、彼は首を傾げた。韓国には日本のようなラーメン屋さんがないので、“ラーメン=安い袋ラーメン”という認識らしい。だから「ラーメンくらい高い」は「うまい棒ぐらい高い」と言われてるのと同じ気分だという。
旦那は日本に来て初めてラーメン屋さんでラーメンを食べたとき、韓国のラーメンと違い過ぎてラーメンだと気づかず、スープ入りのジャージャー麺かと思ったそうだ。
ある日、すずらんの画像を見ていた私に突然、「そーゆう日になったら、草で髪を洗うじゃん? その草に似てる」と言ってきた。どういう日?草で髪を洗う?その草ってどの草?ツッコミが追いつかないが、彼は「え、日本でもやるでしょ?」と、きょとんとしていた。
いったい、 なんのことだ?
どうやら季節のイベントのようだが「草で髪を洗う 韓国 行事」で調べても出てこず、ヒントを求めると「1年を24にわけて、その中のトンジって日」と、松丸亮吾くんみたいなこと言い出し、さらに謎が深まった。
結局、“トンジ”は冬至のことだった。しかし、冬至に草で髪を洗うという情報は調べても出てこない。うすうす感じてはいたが、おそらく彼は何かの情報同士がごっちゃになって勘違いしていたのだろう。そうなると、もう草で髪を洗う風習自体、実在するのか怪しい気がしてきたが、調べつづけた結果、端午の節句の風習だということが判明した。
韓国の端午の節句では、厄除けの力があると信じられていた菖蒲を茹でたお湯で洗髪するそう。そして日本でもお風呂に菖蒲を入れる風習があるらしい。うちは男兄弟がいなかったから知らなかったのか、その風習そのものをあまりやらなくなっているのかはわからない。
とにかく「そーゆう日」は端午の節句で「その草」は菖蒲ということがわかり、解決。色も形も全然すずらんじゃなかったけど。
韓国人の旦那が好きな芸人
外国人ならではの独特の価値観を目の当たりにしたこともあった。
昔から旦那はテレビ好きではあるが、日本人の名前を覚えるのが苦手らしく、芸能人の名前は有吉弘行さんとマツコ・デラックスさんと和田アキ子さんしか知らなかった。普段の会話ではだいたい「ケンミンSHOWの司会の人」とか「元SMAPの人」などと伝えてくる。私もハリウッド俳優の名前などまったく覚えられず「ランボーの人」と呼ぶし、彼の両親の名前も10回以上聞いてまだ覚えられないので、そういうことなんだと思う。
私と過ごすようになって芸人の存在を覚えるようになり、「オードリー春日(俊彰)さんがさ~」と話してきたときには感動した。
そんな旦那に好きな芸人を聞いてみると、「着物で顔を白く塗って『いー!』とか『うー!』とか言って踊ってる人」と言った。とても信じられなかったが、画像を見せ「この人?」と照合したところ、コウメ太夫さんだった。どうやら和装をしているところが気に入っている様子。そんな理由でコウメ太夫さんを好きだと言ってる人間は日本中で彼だけだと思う。
そんな会話をした数日後、テレビを観ていたらコウメ太夫さんが登場した。番組MCのひとりであったHey! Say! JUMPの山田(涼介)くんがコウメ太夫さんのネタを披露し、スタジオは盛り上がっていた。しかし、コウメ太夫さん本人はネタをやらずに帰っていったので彼はすごくガッカリしていた。トイレを我慢してまで、コウメ太夫さんがネタをやるのを待っていたのに。
落ち込む彼に「全国民が山田君のコウメ太夫さんを見たいのよ」と諭した。どうして好きなのか尋ねてみると、「何がおもしろいか、わからないとこが好き」と言っていたので、コウメ太夫さんの楽しみ方としては意外と正しかった。
彼と出会って食べられるようになった激辛料理
日本しか勝たん!の旦那が唯一、韓国文化でどうしても譲れないもの。それは食事。
そもそもまず食べることが大好きで、国分太一さんの『男子ごはん』(テレビ東京)を毎週録画していたり、デカ盛り系の企画は食い入るように観ている。
韓国料理といえば辛い物。旦那はとにかく辛い物が好き。私の体感だが、トウガラシに関していえば、普通の日本人が一生で食べる量を1年ほどで消費している気がする。
それに引き換え、私は嫌いな食べ物が辛い物。実家のカレーへ密かにガムシロを混入させるほど、なにがなんでも無理だった。エキストラの仕事でケータリングがカレー一択だったときは、ひとりだけ白飯に塩をかけて食べていたし、赤い料理には手を出さないよう無意識にプログラミングされていた。一般的なピリ辛ですらお手上げで「辛み」は味ではなく「痛み」だと認識していた。
付き合い始めたころ、けっして辛い物を食べてと強要されたりはしなかったが、内心、食べられるようになってくれなきゃ一緒に暮らすのは難しいかも……と考えていたらしい。一方、私は食べられるようになるつもりすらなく、とりあえず食べられるようになりそうな雰囲気だけ……。つまり伸びしろがあるとだけ思わせておこうと考えていた。
しかし、彼のことを好きになればなるほど、私は本当に辛い物を食べられるようになりたいと思うようになった。最初は「辛いけどおいしい!」と強がっていた。本当はただひたすら辛かったけど。
私は昔からそうだ。好きな人が好きなものも好きになろうとして、好きになったと思い込もうとしていた。ビール好きの人に片思いしたときは、無理してビールを飲んだ。洋楽好きの人に片思いしたときは、よくわからない洋楽CDをジャケ買いした。
ビビンバ、辛ラーメン、キムチ、キムチチゲ、トッポギ、純豆腐etc……。もれなく辛い。でも、愛のパワーで少しずつ、少しずつ……。
最初こそ、いい顔して「辛いけどおいしい!」などと暗示をかけていたが、後半は大声で叫びながら汗ダクで悶えていた。私が半ギレ状態で食事をしているので、彼も「うわ~、辛いね~」と辛いフリをして合わせようとしてくれていたが、この対応に私は「何言ってんだよ、テメーが食べたいって言ったんだろ!?」と思った……。いや、言った。もう、辛過ぎて普段温厚な私も気づいたら暴言も吐いていた。それでも彼は「いやいや、本当に辛いよ」と辛いフリをつづけた。だけど「こんなの全然辛くないよ! ヨユーじゃん!」なんて煽られていたら結婚には至らなかったかもしれない。
今ではうちのカレーも普通の辛口ではない。バリ辛だ。このカレーも絶叫しながら訓練を重ね、食べられるようになった。実家のカレーにガムシロを入れていたころの私に伝えても、きっと信じないだろう。
徐々に変わる韓国文化
韓国では生まれた瞬間から1歳と数え、新年を迎える1月1日に全員一斉に1歳年を取る「数え年(かぞえどし)」という制度は私でもなんとなくは知っていた。しかし、その制度が今年からなくなり、満年齢に統一されるため、自分の年齢が把握できなくなっている。“ってことはえっと~”と、自分の年齢なのであやふやな状態だ。
旦那の友達や親戚に会った際も、年齢を尋ねると「84年生まれ」など、生まれ年で答える。私の旦那は平成元年3月生まれ。“平成と一緒”という覚え方で自分の年齢を数えていたため、令和になってからずっと“ってことはえっと~”状態らしい。
旦那の韓国人の友達が東京に5人ほど住んでいるので、たまに一緒に飲む機会がある。旦那は、みんなによくイジられているし甘え上手だし、年下扱いされているように見えた。
韓国では目上の人に対しての礼儀に厳しい、仲がよくてもタメ口は同い年のみ、親にも敬語を使うなど、上下関係に関するルールが多いイメージがあるので、同い年の間でも生まれた順番とか尊重するのかな?と思い、尋ねてみた。
すると、3月生まれの旦那が学年で一番年下かと思いきや、韓国の新年度は3月スタートらしく、なんと一番年上だったのだ。日本でいうところの4月生まれのポジション。生まれた順番関係なく、ただイジられポジションなだけだった。
食事中にお茶碗を持つのはマナー違反とか、あぐらや肘つきがOKだとか、韓国には日本と真逆の文化も多い。しかし最近は、旦那の親世代でもそれらを強く気にする人はあまりいなくなってきてるようで、そういった慣習そのものが消えつつあるようだ。数え年制度も廃止され、違いが淘汰されていく。それはそれで寂しい。
『秘密のケンミンSHOW 極』(日本テレビ)を観てても思うが、違いがあったほうが驚きや発見があって楽しいのだ。旦那さんと出会って、ほとんど知らなかった韓国の文化にも出会えた。もっといろんな違いを楽しみたい。
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