“日本一解散に立ち会った作家”山田ナビスコの伝説を囲碁将棋、オズワルドらが語る

2023.2.2
「東京芸人水脈史トークライブ」

文・撮影=梅山織愛


お笑いライブ作家・山田ナビスコによる著作『東京芸人水脈史 東京吉本芸人との28年』。1994年に銀座7丁目劇場の座つき作家になって以来、東京吉本の芸人と共に過ごしてきた山田が芸人たちとの戦いの日々を綴っている。

その販売を記念したトークライブが2月1日に行われ、親交の深いガリットチュウ熊谷茶、囲碁将棋、タモンズ大波康平、イチキップリン、オズワルド、素敵じゃないかが登場した。

山田が解散を悔やむ伝説のコンビ

「東京芸人水脈史トークライブ」

長年、吉本興業所属芸人のライブ構成や若手芸人のネタ見せ(ライブ本番前に披露するネタを見てダメ出しをする場)に携わってきた山田。オズワルド伊藤俊介が「序章のところで『みんなおもしろいんだよ!』って書いてあって、全員一回は泣いたじゃないですか」と言ったように、本書には携わってきた芸人に対する愛が詰まっている。さらに、今回登壇したメンバーも知らなかったような東京吉本の歴史も。特に銀座7丁目劇場(以下、銀7)については、ほとんどのメンバーが所属する前に閉館してしまっていたため、そこでの日々については「おもしろかった」「痺れました」と口をそろえた。

今回のメンバーの中で唯一銀7への出演経験がある熊谷。当時は違うコンビで出演していたそうだが「1年間、一回も笑いを取ってなかった」という。熊谷が組んでいたコンビのネタについては山田も「ちょっとここじゃ言えないような倫理観に反するネタをやってました」と述懐。その後、ピンとなった熊谷は山田から「熊谷、猪木(のものまね)やれ! それがお前の一番いいところだ」と言われ、ガリットチュウを結成するまでは全力でものまねに取り組んでいたと振り返った。

日本で一番多くのコンビの解散に立ち会った作家ではないかという山田。本書では解散を止められなくて最も悔やんだコンビとして「ピンポイント」を挙げた。しかし、今回出演した芸人たちのほとんどは「ピンポイント」を知らなかったという。山田は「彼らは杉兵助師匠の弟子だったコンビで、銀7に来る前に道頓堀劇場で修行していたんですよ。当時はみんな私服で舞台に出ていたなか、スーツを着て漫才したり、東京弁でスピードの早い漫才をしていて、それがすごいかっこよかったんですよ」と語った。

一方、山田のおかげで解散せずにすんだという素敵じゃないか。解散目前となった際、「それぞれ別で3日間くらい山田さんと支配人で呑んで、説得してもらったから解散を踏み留まった」と明かした。

「東京芸人水脈史トークライブ」

伝説のエピソードが続々

プライベートでも親交の深い芸人が多いため、プライベートに関してもさまざまなエピソードが。タモンズ安部浩章が山田の実家を訪れた際には、山田の発案で突然、しりとりが始まったという。しかし、そこで安部が笑いを狙って一発目から「きりん」と言ったところ、山田が「てめぇ、真剣にやれよ!」とブチ切れたというエピソードが大波から語られた。

また、伊藤は「一時期、山田さんが俺らの一期上のちゃらん婆さんとばっかり吞みに行ってるときがあったんですけど、あるとき、ネタ見せに山田さんとちゃらん婆さんがベロベロに酔っぱらって来て。そのまま山田さんの横にちゃらん婆さんもなぜか座って、ネタに対してダメ出しされた」という。ネタ見せで山田の隣に座れるということは、吞み仲間としてかなりの信頼を得た証なんだというが、伊藤は「あの席いて出世したやつはひとりもいないけどね」と毒舌を振るった。

「東京芸人水脈史トークライブ」

「OKが出ないと帰れなかった」という山田とのネタ見せについても、さまざまな思い出があるという。「深夜から初めて、ライブまで5時間を切った朝方にネタを全取り換えした」などの話が飛び出すなか、ネタができず「逆立ちしながらやれば?」と言われたというコンビが多数。これについて山田は「手を出さないで一番つらいの何かなって考えたら、逆立ちだった」とその理由を語った。

ムチャ振りだけでなく時には怒声を浴びせることもあるそうだが、若手時代、何十組といる芸人すべてのネタができるまで何時間でも付き合ってくれるという山田に芸人たちは感謝を述べた。

そんな山田が最近特に手をかけているというのが、通称“山田3兄弟”こと中華兄弟、イチゴ、鬼ぷりんの3組。囲碁将棋・根建太一はよしもと神保町劇場でMCをした際に、オープニングで暴れ回る中華兄弟に手を焼いたそう。しかし、ライブ中、次のコーナーまでの間に山田にかなり怒られたようで、別人のように大人しくなっていたという。この3組に注力している理由について山田は「神保町は正統派が多いイメージなので、そうじゃない流れを入れていきたい」と明かした。

さらに、これまで山田が携わってきたライブについての情報をまとめた資料も登場。ネタ以外の魅力を持つ芸人の個性を引き出すために行われていた企画ライブ『needs』で披露された特技をまとめた資料や2008年ごろに『M-1グランプリ』前哨戦として開催されていたライブの採点結果など貴重な資料が登場した。

「東京芸人水脈史トークライブ」
ライブ中に登場した貴重な資料

そして最後は芸人たちが続編への期待を語り、ライブを締め括った。

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  • 『山田ナビスコ著「東京芸人水脈史 東京吉本芸人との28年」を読んだ芸人が感想と考察を熱く語るトークライブ』

    2023年2月1日(水)配信開始18:30/配信終了19:30
    ※見逃し視聴は2月3日(金)18:30まで
    ※販売は2月3日(金)12:00まで

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  • 『東京芸人水脈史 東京吉本芸人との28年

    価格:1,760円(税込)

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梅山織愛

(うめやま・おりちか)1997年生まれ。珍しい名前ってよく言われます。編集者・ライター。自他共に認めるミーハー。チョコレートとかき氷が好き。

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