『M-1グランプリ2022』(以下:『M-1』)最終決戦での漫才で「『M-1』もうざい。アナザーストーリーがうざい。いらないんだよ。泣きながらお母さんに電話するな」と言い放った、ウエストランドの井口浩之さん。これは優勝したら『M-1グランプリ2022 アナザーストーリー』(以下:『アナザーストーリー』)はどうなるんだ?と、少しワクワクする気持ちがあった。
そして、その期待は現実になった。ウエストランドが優勝し、自らネタでイジっていた『アナザーストーリー』で密着取材されることになったのだ。
今までの『アナザーストーリー』を観ると、優勝した芸人が「誰に優勝を報告しているか」も、かなり注目ポイントになっている。家族はもちろん、先輩芸人、その他お世話になった周囲の人まで、芸人によって特色が出る場面でもある。そんな優勝報告シーンを2019年から振り返る。
目次
【2019年優勝】ミルクボーイ→家族、床屋さん
2019年優勝、ミルクボーイ・駒場孝さんは、徹夜であらゆる仕事を終えて帰宅した際、家族が撮影していた『M-1』優勝シーンで大喜びをしている子供や母親を見て、「よかった」とこぼしたあとに静かに涙を流していた。
内海崇さんは、2年間ずっとタダで角刈りをしてくれていた床屋さんに行って優勝を報告。角刈りを整えてもらいながら、「今日から金もらうぞ」と言う店主に「今日から有料ですか」と笑いながら答えた内海さんの目からは涙がこぼれていた。
【2020年優勝】マヂカルラブリー→家族、グランジ・大、鬼奴、おかずクラブ・オカリナ
2020年優勝、マヂカルラブリー・村上さんは、優勝から3日後、兄と慕う先輩芸人であるグランジの大さんや、鬼奴さん、おかずクラブのオカリナさんと居酒屋で祝杯をあげていた。大さんが言葉に詰まりながら村上さんへの思いを語っていると、村上さんや鬼奴さんも、おしぼりで目を拭いながら、それでも涙を隠せずにいた。
野田クリスタルさんは、優勝した直後に母親からの連絡を見て「認めてほしかったんですけど、たぶん心配だったんですよ、俺のことがずっと」と話していた。それから4日後、母親に電話で優勝の報告をすると、普段は母親にもほとんど連絡してこないという野田さんの兄から「おめでとう」というメールが来たという話から、涙が止まらなくなっていた。
【2021年優勝】錦鯉→家族、バイきんぐ・小峠、ハリウッドザコシショウ
2021年優勝、錦鯉・渡辺隆さんは、優勝翌日に父親と住む家に帰宅し「やったねぇ、まだ信じらんねぇよ」「田舎の兄貴も泣いて観てた」という父親の言葉に目を潤ませた。
芸人になるのを反対していた亡き母の墓前では、長く手を合わせたあとに「喜んでくれてたらいいですけどね」と優勝を報告した。
長谷川雅紀さんは、ずっと心配をしてくれていた母親に電話で報告。うれしさに涙が混ざる母親の言葉に、涙を止められないでいる。「ありがとう」「こっちがありがとうだわ。安心できた」という会話が印象的だ。
錦鯉がそろって、先輩であるバイきんぐの小峠英二さんやハリウッドザコシショウに優勝報告をする場面にもカメラが入っていた。
【2022年優勝】ウエストランド→家族、爆笑問題
過去の『アナザーストーリー』を振り返ると、優勝報告をするときは、ほぼ全員涙をこらえられずにいたし、こちらも思わず涙ぐんでしまいそうになるシーンが多くあった。しかし、今回のウエストランドの『アナザーストーリー』は、今までとは異なる印象を受けた。
「『M-1』もウザい。アナザーストーリーがウザい」と大きくテロップで表示されて始まった、今回の『アナザーストーリー』。優勝直後にさっそく密着のカメラが入ると、「優勝しちゃったんで大変ですね。1ミリも泣けそうにないですけど」と井口さんは伝えていた。
優勝した時点で涙を流していた河本太さんは、決勝戦後の深夜に行われた決勝進出者の集う居酒屋で、家族からの動画を観て「泣きそうです、起きて待っててくれたんですかね」と涙をこぼしていた。
決勝の翌日の昼、ようやく自宅に帰れた河本さんを迎えたのは、妻とふたりの娘。2020年にウエストランドが決勝に進出した際の密着では、家族には芸人を辞めてほしいと言われ、親にも離婚をしてあげなさいと言われているということを話していたが、「優勝したで」と娘を抱き上げる河本さんと、彼を囲む家族には温かい空気があった。
*
そんな河本さんと対象的なのが井口さん。帰宅後、ソファに座って「誰もいないから、帰ってきたとて……なんだよな。誰かが迎え入れてくれるわけでもないし。なんにもないですね」と半ば笑いながら話していた。
その後、自分が子供のときにずっと背が低かったことを親が気にしていたのか、ふいに「芸人だったら武器になるけどな」と言ったことを覚えていて、それが原点かもしれないということを話す。
その流れもあるのか、母親に電話をかけ「『M-1』優勝したわ」と井口さんは伝えるが、「おめでとうございましたね。忙しいやろうけど体に気をつけてくださいね」と返す母親との会話は終始さっぱりとしていて、今までの『アナザーストーリー』とは違う雰囲気を醸し出していた。
電話を切ったあと、しばらくあらゆる感情が混ざったような表情をしていた井口さんは少し笑い、「泣く気はしないなぁ、やっぱ。ちょっとぐらいは親孝行したいですね」と話した。何かを考えて、言葉に出さないでいるような様子の表情だなと思ったが、これは私の推測に過ぎない。
今回の『アナザーストーリー』は、事務所の先輩である爆笑問題の『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)にゲストとしてウエストランドが登場し、田中裕二さんが「あ、これが『アナザーストーリー?』」と気づいてカメラを指差し、太田光さんが「こんなもんいらねぇんだ、バカ野郎」と茶化し、ブース内で笑いが起きる場面で終わる。
このゲストでの登場が、優勝後初めて爆笑問題と会う機会だったふたりは、自身のYouTubeチャンネル『ウエストランドのぶちラジ!』の「『M-1』 優勝のご報告!」回で「爆笑問題さんに褒められたくてやってるみたいなところもあるから、あれだけ褒めてもらえたっていうのは一番うれしかったですね」と話していた。
ちなみに、このYouTubチャンネルでは、12月29日(木)の20時に「アナザーストーリーどうだった!?ウエストランドのぶちラジ!」というタイトルでライブ配信が予定されている。どんな話が出てくるのか、とても楽しみだ。
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