「自己嫌悪」は誰が誰に嫌悪しているのか(岩渕想太)
『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』や『VIVA LA ROCK』といった大型音楽フェスに出演、人気バンドが多数集結する『パナフェス』の主催もするロックバンド・Panorama Panama Town(パノラマパナマタウン)のボーカル岩渕想太が、世の中の違和感を覚えた事象に、過去の経験から独自の視点で思考を巡らせるコラム連載「岩観(いわかん)」。今回は、「自己嫌悪」について考える。
起きられない自分と理想の朝
起きられない。ベッドから出るのは決まって、アラームを鳴らした1時間後だ。厳密に言うと、起きられないわけではない。起きている。目は覚めている。ただ、だらだらとスマホのアラームをスヌーズしつづけて、たまに今の時刻だけが写った訳わからないスクショを撮ったりしながら、二度寝、三度寝を繰り返してしまう。スヌーズをすることに関しては、覚えていることもあれば、記憶がないときもある。視界はおぼろげで、「レーダー」と名前がつけられた音が「トゥルルル」と鳴り響く。私はそれを、パブロフの犬のように、条件反射で止めている(ようだ)。
目標としていた時刻を1時間過ぎて、ベッドから飛び降り、顔を洗い、コンタクトレンズをはめる間、決まって私は後悔している。もし、1時間前に起きていたら過ごせていたであろう、穏やかな朝の風景を思い浮かべる。
コーヒー豆を挽いて、少し手の込んだサンドウィッチなんか作って、インターネットをひと通り眺めたあと、ストレッチをして、冴えた頭でもって少しの間読書をする。そうした起こりはしなかった朝を勝手に妄想しながら、バタバタと用意をして、服を着替えて、予定がある日は近所の駅まで走る。なんて慌ただしい朝!
私の現実の朝は、機能的で、なんの彩りもない。これから始まる一日のために、時間としてただそこにある朝に対して、無性に悲しくなって、1時間前に起きれなかった自分を責める。私はなんて怠惰なんだろう。たったひと時の怠惰のために、モノクロになってしまった朝。こうして自分を責めるまでが、朝のワンセット。もし私が朝のルーティン動画のようなものを撮影するならば、この自己嫌悪のシーンは欠かさずにカメラに収める。
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