天才に追いつくためには、努力して秀才になるしかない。ストレッチーズが賞レースに懸ける理由

2022.7.16

文・編集=佐々木 笑 撮影=TOWA


若手芸人の筆頭株・ストレッチーズ。

大学時代から賞レースで結果を残し、2022年5月に放送された、期待の若手芸人による賞レース『ツギクル芸人グランプリ』(フジテレビ)では優勝。一見、エリートコースまっしぐらのようにも見える彼ら。
しかし、慶應義塾大学出身のふたりは、親からの猛烈な反対を乗り越えつつ、同期芸人の活躍に焦りを抱えて生きてきた。

漫才、そして賞レースにこだわる理由を「僕らは天才ではないから」と語る。

高木貫太(たかぎ・かんた)1991年7月生まれ、埼玉県出身。ツッコミ担当
福島敏貴(ふくしま・としき)1992年3月生まれ、埼玉県出身。ボケ担当

頑固な福島と、寂しがり屋の高木

──ストレッチーズさんは、高校~大学の同級生なんですよね。まずは記事を読んでいる方におふたりのことを知ってもらいたく、他己紹介をお願いできますか?

高木 福島は高校も男子校で、大学も男子寮で、縦社会に入ってたからなのか男っぽいです。ポーカーフェイスだけど、上下関係も大事にするし、中身は熱血系です。あと、めちゃくちゃ頑固。自分が決めたことは曲げたくないタイプだと思います。……すごいマジメに話してますけど、おもしろエピソード交えたほうがいいですか?

ストレッチーズ福島
ミーハーな一面もあり、日本酒検定準1級、ビール検定3級を取得している福島。

──大丈夫です(笑)。福島さんはいかがですか?

福島 僕はマジメパートとボケパートで分けますね。マジメパートは、人が好きだと思いますね。だからこそ、寂しがり屋。実家を出てからずっと芸人とルームシェアをしてるし、趣味も麻雀とか『ぷよぷよ』とかみんなでやるものだし、ひとりでいる時間がほとんどない気がします。ボケパートは、咳が大きいです。

高木 性格じゃないだろ。生き物としての性質じゃん。

福島 高層ビルで違う階にいても、高木が咳をすると「今どのへんにいるな」「ちゃんと間に合って来てるな」とかわかるんで、すごく助かります。

ストレッチーズ高木
咳が大きい寂しがり屋の高木。

──(笑)。寂しがり屋とのことでしたが、高木さん、合ってますか?

高木 合ってはいるんですけど、ぷよぷよを“人と一緒にやる趣味”に括ってほしくないですね。全国のぷよぷよファンの人が寂しがり屋だと思われるのがちょっとよくないんで、それだけは否定したいです。

福島 ひとりで練習する時間もあると思うんですけど、基本的には誰かと対戦するための練習なんで。

高木 全然そんなことありません。ぷよぷよはレーティングゲームで、レートを上げる目的があるんで。

福島 でも、そのレートも誰かと競うために存在するものなんで。

高木 やっぱり彼は頑固ですね。

福島 こいつも、ぷよぷよに関しては頑固ですね。

──学生時代から仲よかったんですか?

高木 部活も一緒だし、すごい仲よかったですね。目立ちたがり屋っていう共通点もあって、文化祭で出し物をしたりもしてたんですけど、そのころは“おもしろいと思った言葉を変なポーズで言う”とか……スベりまくってました。

ストレッチーズ高木
取材時、とっさに出てきたおもしろいと思う言葉は「芝生」。

福島 漫才もやってないし、そのころは特にケンカもなかったです。

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──相方になってからは、ケンカをすることも?

福島 そうですね。細かい意見が対立することは増えました。

──思い出に残っているケンカはありますか?

福島 組んですぐにも大きいケンカはあったんですけど、芸歴4年目のときのが……かなり。ネタは高木が100%作ってるんで、練習中に僕がちょっと間違えると指摘が入るんです。『Amazon』っていうネタで、詰め将棋をモチーフにするくだりがあるんですけど、台本に「4手詰み」って書いてあったのを、僕が「4手詰め」って言っちゃったんです。そしたら、一文字間違えただけなのにけっこうな剣幕で「何やってんの、将棋知らないの?」って指摘されて。でも、その後ネットで調べたら「4手詰め」の呼び方のほうが主流だったんですよ。

ちょうどいろいろ積み重なってる時期でもあったから、根拠がないのに怒られたことに対してすごいイライラしちゃって。そこから、「怖いから話したくない」って思って、ビジネス的なこと以外は話さないっていうのを決めて、全然口利かない期間が何カ月か続いたんです。

──どんなタイミングで会話をするように……?

福島 そんな時期に、何組かでオールナイトのトークライブがあったんです。5時間もあったら絶対ふたりで会話することもあるのに、僕が頑固だから「舞台上でも話したくない」みたいなスタンスを取って、変な感じになっちゃって。そのとき一緒にいたかが屋の加賀(翔)くんが、「ストレッチーズさんがこんなふうになっちゃって悲しい。どうにか仲よくなってほしい」って、楽屋でちょっと泣いちゃったんです。その加賀くんを見て「ああ、これはダメだな」と。

高木 福島の性格的に、このケンカをお笑いとして消化したくないっていうのはわかるんですけど、この空気をみんなが舞台上でお笑いにしてくれようとする流れがあったのに、変な空気にしちゃって。僕は、プロとして嘘でもその場でやったほうがいいじゃんって思ったけど、そうじゃない福島を見て、「あ、マジなんだ」って思うのと同時に「マジで嫌だな、もういいかな……」とかまで思っちゃって。 そうなったときに、僕のほうには賀屋(壮也)くんが来てくれて「コンビってこうですよね」とかフォローしてくれて、そのおかげで踏み留まったんです。だからけっこう、思うところのあるトークライブでしたね。

──……今は大丈夫なんですよね?

ふたり 大丈夫ですよ(笑)。

──もともと仲がよかった同級生とビジネス絡めてのケンカって、よりストレスが大きくないですか?

福島 同級生って感覚は1、2年目ぐらいで終わりました。同級生と相方のギャップに対してのストレスとかは思っちゃいけないというか……同級生だった過去を消すことはないけど、そことの差を比べるべきじゃないなと。

高木 切り替えっていうか、グラデーションみたいな感じで徐々に変わってきた感じだと思います。今は仲いいですけど、友達って雰囲気ではないですね。もちろん共有できる思い出はたくさんあるけど、ふたりで飲みに行ったりすることもないですし、 まあ……変な関係ですね(笑)。

ストレッチーズ
大ゲンカを乗り越え、今ではいい関係のビジネスパートナーに。

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