俳優のみならずダンサーとしても活躍し、“孤高の表現者”とでもいうべき独特の存在感を放ち、第一線で活躍しつづけている森山未來。燃え殻のデビュー小説を原作にした彼の最新主演作『ボクたちはみんな大人になれなかった』が、2021年11月5日に劇場公開&Netflixで全世界配信された。
ライターの相田冬二は、「【森山未來】は、狩人だ」と評する。俳優の奥底にある魅力に迫る連載「告白的男優論」の第16回、森山未來論をお届けする。
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ここではない何処に連れて行って放置する
彼がもし、自分は宇宙人だと表明したとしてもけっして驚かない。優れた表現者たちの能力は、見つめれば見つめるほど、人間離れしている。だが、彼ほど、畏怖の次元を超えた戦慄をもたらす存在もいない。
彼は、生きる伝説だ。
文字どおりの伝説には事欠かないし、彼がこうして今も現役で活動していること、それ自体が伝説なのである。森の奥深くで、伝説は蠢き、獰猛に呼吸している。
伝説の生き物。
それと出逢うことが、私たちの伝説となる。
何度かインタビューしたことがある。撮影現場も目撃している。驚くべきことに、スクリーンで体感できる【森山未來】そのものだった。笑顔のときも、シリアスなときも、あった。どちらも、オーラは同じだった。そこには、ただ、【森山未來】というウェーブフォームがあるだけだった。
【森山未來】は、開拓者だ。たったひとりで、荒野(あれの)を、荒地を、開拓している。孤高の開拓者には、極地がよく似合う。
沖縄、『怒り』の無人島。
北海道、『北のカナリアたち』の極寒。
圧倒的な孤独は、どこまでも鋭く、どこまでも熱い。あらゆるものをぶった斬る、どの温度計もぶっ壊れている。
【森山未來】は、見る者を、誘拐する。
ここではない何処に連れて行って放置する。
ドラマ『岸辺露伴は動かない』(NHK)第2話「くしゃがら」の、途方もない、魂の引き廻し。転がりつづける石にも、苔は生える。そんな非情な、生まれたての真実を、見せつける。
際限のない、夢。天空から、どん底に落下しても、なお平然としている無敵の時間。アメーバのように、拡散する生命の、眩暈呼び込むふてぶてしさ。
野生。
支配。
身投げする陶酔。
あの目。
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