正統なる「バカ映画」。『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』

2021.1.10

この世には「バカ映画」というジャンルがある。念のため、「おバカ映画」だと別カテゴリーになる。そこは間違えてはいけないところ。要するに、「バカ」は振り切っている表現、その攻めた姿勢と内容へのほめ言葉なのでありまして。「バカ」の純度を薄めた形容詞、「おバカ」とは一線を画するのだ──。

※本記事は、2020年12月25日に発売された『クイック・ジャパン』vol.153掲載のコラムを転載したものです。

Be noble バカ映画!

と、たしかそんなような説を、みうらじゅん先生も述べていたはずだと思うのだけれど、ゲゲッ! ネットで検索してみると今や「バカ映画」の表記は少なくなり、圧倒的に「おバカ映画」のほうが多いではないか‼ 

まあ皆さん、好んで「おバカ映画」を使っているか、あるいは、「バカ」も「おバカ」も所詮同じ、細かい線引きなどドーでもよいのだろう。が、筆者は頑固にこだわってみたい。ここに紹介する『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』は冒頭記した通りに、正統なる「バカ映画」なんである。

主演を務めるキアヌ・リーブス(と相棒アレックス・ウィンター)の、いわばライフワークと言える『ビルとテッド』シリーズ第3弾。ふたりが演じるのは、歳を重ねてもボンクラなままのバンドマンだ。

お馴染み、未来からの使者が現れるのだが、「時空の歪みによって77分25秒で人類は滅亡する」と告げられ、かつて予言されていたごとく世界を救う楽曲を作らねばならなくなる。といっても為す術はなく、そこで「オレら、未来では完成させてるんじゃね?」と見切り発車でタイムマシンを借りて旅立つ。

どこへ行ってもビルとテッドがボケ倒すのは変わらないが、従来と異なる点は大きくなったそれぞれの娘も時空旅行に参入すること。父親を救おうと“最強のバンド”を結成するため、逆に過去へと向かい、ジミ・ヘンドリックスやルイ・アームストロング、モーツァルトらを現代に連れてくる……って、説明しながらハチャメチャ具合に、思わず顔がほころんでしまう。これぞ「バカ映画」だ。

と同時に、れっきとした「音楽映画」でもあって、ニルヴァーナの元ドラマー、デイヴ・グロールやラッパーのキッド・カディが本人役で登場、最後にはまさかの感動までさせてしまうのだ。

監督はあの傑作『ギャラクシー・クエスト』(99)のディーン・パリソット。『ビルとテッドの大冒険』(89)、『ビルとテッドの地獄旅行』(91)といった前作を、おさらいして挑んでほしい。どれもまっとうな「バカ映画」で、シリーズ合わせて当ジャンルの殿堂入りは確実と見た。エ〜クセレント!



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