笑顔の裏に狂気を孕んだキャラクターと不条理なストーリー、そしてほんのちょっぴりの淡いエロ。吉本所属の男女コンビ・蛙亭は、第七世代ブーム真っ只中のお笑い界で比類なき世界観を確立しているコント師だ。
蛙亭のコントには「スポブラに執着する男子中学生」「白い紫陽花に恋した男」など強烈なキャラクターが登場する。彼らはどこまでも欲望に忠実で、だからこそ滑稽でどこか哀しい。「マイナスの感情からネタを作りたい」と語るコント師・蛙亭の、「エロ」と「哀愁」と「神聖かまってちゃん」の話。
人間の切なさや哀しみをコントの中で描きたい
――蛙亭さんのネタは「どうやって考えているんだろう?」と気になるものばかりです。『スポブラ』や『紫陽花』など……。
岩倉 ネタを作るときはいつも、1回は下ネタからスタートして考えてるんです。それで練っていくうちに「これは下ネタじゃなくてもいけるネタだな」と思ったら、外してみて。ただ、エロいままのほうがおもしろいネタだったらそのままやるみたいな感じです。単独ライブだとそのままのネタが1個は入ってますね。
中野 直せないやつはいろいろありますね。テレビでできないやつ。
岩倉 がっつりそのままやってもいいライブだったらそのままでやるんですけど、テレビとか賞レースみたいにそうじゃないときは、なんとか言葉を濁して薄めてますね。エロいネタをそのままやらないのはプライドっていうか、ポリシーなのかな。
――やはり「エロ」へのこだわりは強いんですね。
岩倉 なんて言ったらいいんだろう……。下ネタとかエロいことは好きなんですけど、人間自体の切なさみたいなのをネタの中で描きたくて。エロいことって、基本的に恥ずかしいことじゃないですか。だからこそ、人間の哀しみが出るなと思って。切ない笑いみたいなのが好きなので。
――確かに「花とセックスをしました」と泣きながら懺悔する男性の姿は、笑えるのにどこか切ないです。「人間の哀しさ」を描く上で、今まで何か影響を受けた作品があったりするんですか?
岩倉 日本の映画の、比較的暗いやつとかはよく観てました。『誰も知らない』(是枝裕和監督)とか好きですね。あとはレクター博士の『レッド・ドラゴン』、『ハンニバル』(リドリー・スコット監督)とか。あとはちょっとエッチなドラマを隠れて観たりしてました。『Stand Up!!』(TBS)っていう深夜ドラマがあったんですけど、全員イケメンの童貞がいっぱい出てくるんで、めっちゃおもしろいです(笑)。
お笑いがない、メッセージだけのネタもある
岩倉 あとは、メッセージ性だけのネタとかも作ってますね。笑いがなくて、ただただメッセージを伝えるだけの。本当はそこに笑いを足さないとダメなんですけど。
――メッセージ?
岩倉 今はもうやってないネタなんですけど、中野くんが女の子の家に行って「この部屋、エロ動画で観たことある」みたいなことを言って、女の子を不安にさせるネタがあって。女の子は動揺しちゃって「警察に行こう」って言うんですけど、中野君は「いや、俺が守るから」って言って自分の家に連れて行っちゃうんです。でも実際は中野君の言ってることは全部ウソで、女の子を不安にさせるタネを撒いて、それを摘み取ってる悪い人なんです。最後に中野君が客席に向かって「みんなも気をつけてね! 次は君の番だよ!」って言って終わるんですけど。
――怖過ぎますね……。
岩倉 「不安になったときに助けてくれる人が本当にいい人とは限らないよ」というメッセージですね。
中野 劇場のバトルライブとかでやったときは悲鳴が上がってましたね。そういうネタをやるときは僕も腹をくくって、もっと「ひゃ〜」って言われるように煽るんですけど。笑い事じゃないよ、他人事だと思わないでね、って。
岩倉 今後はそこにお笑いを足せていけたら……(笑)。
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