「ストーリーに関係ないドラクエの村人の気持ち」を初めて知った(夏目知幸)
Amazon Prime Videoで配信中の海外ドラマ『ウエストワールド』。アメリカのケーブル局HBOが製作し、J・J・エイブラムスやジョナサン・ノーランなどハリウッドでも第一線で活躍中のクリエイターたちが製作総指揮や監督に名を連ねている大型ドラマだ。
6月に解散を宣言したオルタナティブ・ギターポップバンド「シャムキャッツ」のヴォーカル&ギターとして知られる夏目知幸は、『ウエストワールド』を観て「まったくストーリーに関係ないドラクエの村人の気持ちになった」という。その理由とは――。
いいないいな人間っていいな。HBOドラマ『ウエストワールド』を観て退屈をぶっとばせ
あなた、自分がAI(人工知能)じゃないって言い切れます? 僕は言えない。AIかも知れないって思う。証明できないもん、自分がAIじゃないって。
ま、たとえAIだとしてもぜんぜんオッケー、仮の記憶めちゃいい感じだし、自分の性格そんなに嫌いじゃないし、「はいおつかれー、全部嘘でしたー」っていきなり言われても「そっかーまあ仕方ないかあー」つって明日からまた普通に過ごせるような気がしてる。そういう性格のAIです私。細いこたあ気にしない。
ただ、もしまったく別の人間になれと言われたらどうだろう。けっこう難しそうだ。コロナで人手が足りないところに仕事に行くことになったりして。まあ俺ロボットだし、ウイルス効かないからちょうどいいよな。今までの記憶を全部消去して、まったく違う人としてプログラム書き換えてくれたらうまくやれる。ばりばり仕事がんばるぜ。でも、そしたらもう僕は僕じゃないから、僕を開発した方、僕を気に入って、違う現場でも使いたいなあって思ったんならどうか全消去全書き換えはしないほうがいいよ、と思う。僕が僕らしいそぶりができるのはやっぱり記憶があってこそだと思うよ、仮だとしても。
さて、「ウエストワールド」の開発者もおんなじように考えたようで。
ウエストワールドってのは、広大な土地にアメリカ西部劇の世界を忠実に再現したテーマパーク。園内はAI搭載のアンドロイドたちがシナリオに沿って一定のループの中で役を演じている。彼らはとっても精巧に作られていてパッと見人間と何も変わんない。リアルな世界に現れたRPGのようなもんだと思ってもらっていい。人間たちはおのおの好きな衣装に着替えて、西部劇の主人公になりきり園内でやりたい放題できる。
それこそ最近のゲームのように、もしあなたがパークの世界観をゆったり楽しみたければ、旅したり、酒飲んだりしてるだけでもいいし、スリルを求めたいならギャンブルだってできるし、そう、人を殺しまくったっていい、農場の娘をレイプしたりだってできる。誰も怒らない。裁かれない。だってゲームだもん。金払って遊んでるだけだから。
パークの完成度とお客様満足度を上げるため、開発者はアンドロイドたちの演技をより自然にしようと「一定のループが終わって次のターンに入っても、前回のターンの記憶が完全には消えない仕様」に基礎プログラムの書き換えを試みる。成果はすぐに出る。ひとりの娼婦アンドロイドが「教えていない」色っぽい表情で客を誘うのだった。
効果てきめん! しかーし! このアップデートをきっかけに、ゲームのシナリオを無視して「自ら考えて行動する」アンドロイドたちが園内にポツポツを現れ始めちゃう。よーし期待どおりの展開だ! ループから外れる変異体たち。そして、彼らに出会い、彼らの中に真の人間味を見出しドツボにハマっていく人間たち……。これが、ドラマ「ウエストワールド」のプロローグ。
ね、おもしろそうでしょ。あ、よくある話じゃんって思った? 思った人もいるねきっと。でもまあ、百聞は一見にしかず。お金がかかったセット、キャスト、スタッフ陣による画面の説得力半端じゃないよ。何より、特にシーズン1は演出がかなりいい。アンドロイドたちが見ている「ループしている世界」の視点で描かれる演出が、最高。そこに音楽的な演出も重なってとても重層的にジューシーです。音楽もループって大事だし。
僕はこのドラマを観て初めて、まったくストーリーに関係ないドラクエの村人の気持ちになった。来る日も来る日も同じ場所に立って誰かに話しかけられたら、いっつもおんなじことをしゃべるんだ。そんな彼らがある日「あれ? 俺いっつもここに立ってていっつも同じことしゃべってねえ?」って気づくわけ。で、ある日いなくなる。そういう話。つまり、僕らの話ってことなのよ。
『ウエストワールド』
Amazon Prime Videoにてシーズン1~2配信中
Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にてシーズン3配信中
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