こたけ正義感が2024年に立ち上げたスタンダップコメディショー『弁論』は、初開催からわずか2年半で全国4都市開催へと拡大し、12月4日(金)に東京ガーデンシアターで開催する東京公演では約8000人を動員予定という、ピン芸人の単独としては異例の規模へと成長している。
コンビやトリオに比べ人(にん)が伝わりづらいとされてきたピン芸人が、自分自身を軸とした芸で観客と関係を結べる、スタンダップコメディという芸。彼は『弁論』という企画以上に、この芸に対して大きな期待を寄せている。ピン芸人の新たな道筋を見つけた、こたけ正義感がその先頭で見ている未来を語る。
※この記事は『Quick Japan』vol.186に掲載のインタビューを一部抜粋し転載したものです
わずか2年半で、キャパ100倍に成長した『弁論』

──『弁論』を始めてわずか2年半で、東京公演のキャパは100倍。全国ツアーを敢行するまでになりました。これだけ規模が拡大した要因はどこにあると思いますか?
こたけ正義感(以下、こたけ) 一応、意識的に拡散しようとはしてるんですよ。SNSで感想言ってほしいとか、グッズをいっぱい買ってくださいとお願いして、拡げる努力はできるだけしてきたつもりです。
──こたけさんは『弁論』をいつか日本武道館やドーム規模で開催したいと話されていますね。それはどのタイミングで浮かんだ目標ですか?
こたけ 第1回で手応えを感じたあと、もう少し勉強しようと思って、漫談やスタンダップを見るようになりました。街裏ぴんくさん、あべこうじさん、ナオユキさん、キャプテン渡辺さんとか、日本の人たちをひととおり観たあと、Netflixに海外のスタンダップコメディ動画が山ほどあると気づいたんです。観てみたら、みんなとてつもなくでかい劇場でやってるんですよ。日本のピン芸人でこの規模で単独をやっている人は誰もいない。これがやれたらすごいぞと、目標にするようになりました。
──こたけさん自身も、「全部は理解しきれていない」という意識で海外のスタンダップコメディを観ているんですか?
こたけ それはめっちゃ思ってます。妻は英語ができるので、「ここなんでウケてんの?」と聞くことも多いですね。解説してもらうと、前提知識を知らなかったとか、実はこういう言い方をわざとしているとか、前のこの言葉とかかってるとか、細かいテクニックがあって。やっぱりスタンダップってそういうもんだよなと思います。

おもしろさを原液で出せるスタンダップという形式
──今年、ラストイヤーとなる『ABCお笑いグランプリ』に参加し準決勝まで進出されました。『R-1グランプリ』を含む賞レースについては今、どんな気持ちですか?
こたけ 賞レースのヒリヒリ感は嫌いではないですけど、今の自分はそれよりもやりたいことがあるという感じですね。たまたま賞レース向きのネタができれば出るかもしれない、くらいの感覚。賞レースに賭ければ賭けるほど、特にピン芸人はいろんな損をしている気がするんですよ。
──こたけさんは、ピン芸人のみなさんに積極的に漫談、スタンダップコメディを勧めていますよね。
こたけ おもしろいピン芸人は山ほどいるけど、なかなか集客できなかったり、テレビの仕事が少なかったりする。でも海外のスタンダップを観て価値観がひっくり返ったんですよ。みんな気づいていないだけで、ピン芸人はみんなこうなれる可能性を秘めてる。先日もZAZYさんとのツーマンライブでZAZYさんに漫談をやってもらいました。結果的に45分くらいの長尺になって、めっちゃおもしろかったですよ。もともとおもしろい人がしゃべったらおもしろいのは、確信していたことですけど。みなみかわさんの単独ライブ『ニヤる~話を3つ用意しました~』も「『弁論』を意識してる」とご本人が言っていましたけど、完全にスタンダップコメディで、とんでもなくおもしろかった。
──そうやってピン芸人の方がどんどん漫談に参入し、それぞれ規模を拡大していくのは、こたけさんの望んでいるかたちですか?
こたけ そうですね。スタンダップという形式は、その人のおもしろさを原液の状態で出せて、観る側も一滴もこぼさず受け取れるものだと思うんです。自分の話をするから、人となりがどうしても表れる。するとその人のファンになる。観れば観るほどその人を好きになるし、好きになればなるほどおもしろく見えてくる。そうやっていい循環になっていくんです。
──それは、特に今までピン芸人の方が苦手としていた部分でもある気がします。漫才師は関係性でその人となりが見えるけれど……。
こたけ まさに。これまでのピン芸人は、関係性が存在しないからキャラもわからない。だから無理やりキャラクターをつけて、一発屋になる人も多かった。もちろんそれもいいんですけど、まっすぐ自分を表現して、そこを好きになってもらうのは最高の流れだと思うんですよ。そうやっていろんなピン芸人が長尺のスタンダップをやるようになったら、それをしっかり楽しむ層も育まれて、文化として醸成されていきそうな気がするんです。「お笑いはわちゃわちゃしているから苦手だけど、スタンダップなら見ていられる」という人たちがいるのは、『弁論』を通じて知ったことで。スタンダップをやる芸人が増えれば増えるほど、新しいお客さんも取り込めるような、いい市場ができていく気がしています。
──芸人としてやっていくには、人として好きになってもらわないと難しいということですね。それは以前から考えていたことですか?
こたけ そうですね。テレビに出ていれば食べられるという時代ではないので、いかに自分自身のことを好きになってもらうか、ファンになってもらえるかは、これまで以上に重要な気がしていました。
──『弁論』でこたけさんを知った方、お笑いファン以外の方は多いと思います。そういう方に継続的に見てもらう、ファンになってもらうという部分を大事にされている?
こたけ そこはめっちゃ意識的にやってますね。そもそもをYouTube(『こたけ正義感のギルティーチャンネル』)始めたのも、そこがきっかけで。賞レースでウケていても決勝に行けなかった理由は、自分にファンがいないことだと思ったんですよ。『R-1』は特に、どうしても知名度も影響しますから。
──2023年に『R-1』決勝に進出し、YouTubeのゲーム実況で注目され、『弁論』を始められて今とても順調に活躍されていますが、それまでは厳しい時期もあったと思います。弁護士のお仕事もあるなかで、それでもお笑いを続けられた理由は?
こたけ お笑いを辞めたいと思ったことはないですけど、辞めなあかんのかなと思った時期はあります。でも、やっぱり好きだったので。お笑いの世界が。
──『弁論』はこたけさんが弁護士だからこそ話せる内容です。でも、ご自身では弁護士の前に芸人であることを大事にしているし、弁護士であることだけを求められるのをよしとしないですよね?
こたけ 先日『しくじり先生(俺みたいになるな!!)』(テレビ朝日)の収録があって、まさにそこをこじらせているという話をしてきたばかりです(笑)。キャラクターとして見せてるくせに、真正面から弁護士キャラを求められたくない。勉強も実務もして、弁護士であることは自分の考えの根底に根づいてもいる。でも、けっしてそれがすべてではないんですよ。だから出身地とか性別とか、それくらいの要素のひとつとして受け止めてもらえるようになったらいいなと今は思っていますね。
インタビュー全文は『Quick Japan』vol.186に掲載
10月21日(水)より発売中の『Quick Japan』vol.186のバックカバー&特集に、お笑い芸人のこたけ正義感が登場する。
こたけ正義感が2024年に立ち上げたスタンダップコメディショー『弁論』は、立ち上げからわずか3年で全国4都市開催へと拡大し、12月に開催する東京公演では約8000人を動員予定という、ピン芸人の単独としては異例の規模へと成長している。
「しゃべりで立つ」と題した今回の特集では、そんな『弁論』の立ち上げからこれまでを振り返りながら、ピン芸人の新たな道筋を見つけた、こたけ正義感がその先頭で見ている未来について紐解く。
さらにこたけが信頼する先輩芸人、みなみかわ、ニューヨーク屋敷裕政、そしてこたけ自身や『弁論』に魅了された小説家の朝井リョウ、歌人の俵万智もその魅力について語る。

『Quick Japan』vol.186
発売中
サイズ:A5/並製/144ページ
価格:1,650円(税込)
『弁論2026』
2026年11月4日(水)東京エレクトロンホール宮城
2026年11月11日(水)福岡県立ももち文化センター 大ホール
2026年11月24日(火)ロームシアター京都 メインホール
2026年12月4日(金)東京ガーデンシアター
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