活動の中心だった劇場に加え、『ハチミツ!!』(フジテレビ)や『夜明け前バラエティ トワライト』(テレビ朝日)など、ここ数年はテレビにもレギュラーとして出演した9番街レトロ。“売れてる”を体験したこの期間は、ふたりにとって、改めて自分たちの立ち居振る舞いやおもしろさを見つめる時間になった。
そんな9番街レトロが、2年ぶりにコンビにとっての一大イベント『9番街フェス』を開催する。さまざまな変化を経て、ふたりが見つけた自分たちだけの武器。
京極風斗
(きょうごく・かざと)1995年8月9日生まれ、大阪府出身。NSC大阪校37期出身。個人としてのYouTubeチャンネル『京極風斗の道楽ちゃんねる。』を定期的に更新している
なかむらしゅん
1994年1月24日生まれ、大阪府出身。大阪校38期出身。個人としてのYouTubeチャンネル『えぐいっちtokyo(仮)』を定期的に更新している
“売れてる”を体験した2年間
──9月28日、2年ぶりに『9番街フェス』が開催されます。おふたりにとってこの2年はどんな時間でしたか?
京極風斗(以下、京極) 一回仕切り直したイメージがありますね。“新生”というか……「気持ち新たに」みたいになった期間やった気がします。
なかむらしゅん(以下、なかむら) 僕は人生最大の反省をしたんで、初心を忘れず、まじめに生活をさせていただいています。これまでも手を抜いていたわけじゃないですけど、知らんうちに慣れすぎて、取りこぼしてきた笑いがいっぱいあったんやろうなと思いました。全部本気のほうがやっぱりウケますね。
──この期間には、冠レギュラーなどテレビの世界にも飛び込みました。
京極 キッザニアみたいな感じでした。“売れてる”を体験させてもらいましたね。
なかむら すごいセットも用意していただきましたし、ゲストも僕らより余裕ですごい人たちですから。
京極 今でもたまに特番などでフジテレビに行きますけど、局にビビらんようになったのはデカいです。誰かに聞かなくてもまっすぐ喫煙所に行けるし(笑)。
なかむら いい意味で慣れてきたかもしれないですね。緊張しなくなったし、ほんまにありがたい体験をさせてもらったなと思います。これからさらに収録が増えていったら、「いつもどおりできんかった」がなくなっていくんじゃないですかね。
京極 たまに「俺らが観てたテレビじゃなさすぎる」と思うことがあるんですよ。テレビ局に行っても、劇場でも一緒のメンバーばっかり。本当は嵐とかヘキサゴンファミリーとかの中に飛び込みたかったんですけど、結局みんなで一緒に上がってます。
なかむら 『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)の収録で、みんな楽屋が一緒やったんですけど、「このメンバーでゴールデンやんの!?」と思ったんですよ。僕らが観てた人たちもこんな感覚やったんかな、と思いましたね。

テレビ、YouTube。自分の色の出し方
──テレビと劇場では、やはり戦い方も変わってくるのでしょうか?
京極 そうですね。いろいろな職種のタレントさんが出るバラエティはあまり経験がないですが、今僕らが出るバラエティって、結局まわりに劇場メンバーがいてカメラが回っているだけ。その中でも、「テレビでも出るのがウマいな」と思う先輩もいます。
──劇場とテレビでは、いわゆる前に出る方法に違いがあると。
なかむら サッカーとフットサルくらいの違いなので、まったく別ではないし、通ずる部分もかなりあると思うんですよ。おそらく「締めの1ワード」を言える人がいいとか、そういうところやと思います。
京極 劇場では「スベるヤツ」と思われている人が、テレビで新鮮にウケているのを見ると、「まるで見てる人が違うんやな」と思いますね。
──そうした劇場とは違うフィールドで戦うなか、コンビで成長や変化を感じる部分はありましたか?
なかむら 僕は何周もして、結局力を入れてテレビに出るのはよくないかもな、と思いました。「やる気がある」と「力を入れる」はまた別。「お願いします〜!」みたいな状態で入るとナメられてしまうので、そのあたりの力の入れ具合は学んだ気がします。
京極 「劇場の若手」みたいな出方を求められるので、どこに行っても同じ説明をするんですよ。それに慣れましたね。端的に自分たちの説明ができるようになりました。
──一方、YouTubeや主催ライブは自分たちが生み出す側のコンテンツです。そうしたコンテンツを生み出す際に大切にしている軸を教えてください。
京極 「色味」じゃないですかね。できるだけ新鮮で、凝りすぎず、あまり見たことがないものをやりたいなと思っています。まず「構造でおもしろい」を大事にし、「絶対に盛り上がる」「絶対にウケる」が前提にあって、あとは本番をがんばる。人の番組と違って、完全なる責任感がありますね。
なかむら 個人のYouTubeでいうと「こういうことをオモロがっている人です」という自己紹介になればええなと思っています。自分のおもしろいと思うものを共有できる説明書みたいなチャンネルですかね。ただ、あれによって得られるものはないです(笑)。
マヨネーズみたいにちょっとした味を足せる
──自分たちの強みや武器はどんなところにあると思いますか?
なかむら めっちゃ舞台におるんで、そこで培われた「舞台感」や「ライブ感」はだいぶ武器やと思います。毎日舞台でトレーニングしている感覚ですね。
──経験がものをいう領域ですね。
なかむら そうですね。「全然無理やった」みたいな日もあるんですけど、盛り上がってないライブに入れてもらっても、どうにかできる自信はあります。あと僕、「何かある人!」と言われたときに「はいはい!」と手を挙げる特攻隊長ではないんですよ。誰かが沈んだときに引っ張り上げることで目立つという……そのあたりは経験がないとできひん部分なんちゃうかなと思います。
京極 それを「ハイエナお笑い」と呼んでいます(笑)。なかむらは絶対に舞台の真ん中に立たないんです。上手側の端に立って、ずっと真ん中を見てる。何かあったら真ん中に行って死肉で笑いを取る(笑)。藤崎マーケットのトキさんがいるとダブルハイエナになるんで。
なかむら トキさんと一緒の平場になったとき、反対の端を陣取っててびっくりしました。
京極 ここにフースーヤもおったらマジでサバンナです。全員ケツを取りたいから終わらないんですよ。

──京極さんの思う自身の強みは?
京極 「相手を選ばないところ」ですかね。先輩、後輩、あまり絡んだことはないですが女優やアイドル、俳優、一般の方……どんな方とでも、なんとなくおもしろい感じにできるんじゃないいかなと思います。僕らはふたりともコミュ力が高いんやと思います。
──その武器が認知されていけば、仕事の幅も広がりそうですね。
京極 番組でキャスティングしているときに、「何か足りへん気がする」となったら、マヨネーズみたいに、どこにでも合う自信はあります。

あいさつミスで始まった久しぶりの『M-1グランプリ』
──おふたりの中で「こうなったら芸人として勝ち」と思う理想像はありますか?
なかむら 「勝ち」でいうと結局『M-1』じゃないですか。
京極 「『M-1』優勝」はめっちゃ勝ちっすね。
──この2年で漫才の取り組み方や向き合い方に変化はありましたか?
京極 寄席用のネタと賞レース用のネタって全然違うじゃないですか。これは喜ばしいことでもあるんですけど、賞レースのために(ネタを)叩く現場が減っている気がします。昔は“ちゃんと”事務所を通して、いわゆる外箱に行き、他事務所の『M-1』戦士と交流し、その人たちのお客さんもおって……という感じでしたけど、最近は難しいですね。
なかむら たとえば、『M-1』の予選で自分たちのお客さんがたくさん観に来たら、知っているネタやから大爆笑はできないと思うんですよ。だって、今からどういうボケを言うかバレてるわけじゃないですか。大阪に行かせてもらったとき、いつもやっているネタをしたら「やっぱりそうやんな。こんくらいウケるよな」と思っちゃいます。だからこそ、僕らはネタを隠さないといけない。それこそエバースとかは、そのあたりもっと難しいと思います。
──先日は久しぶりに『M-1』の1回戦に参加されました。いかがでしたか?
なかむら 緊張はしなかったんですけど、してなさすぎて変なことになっちゃいました。
京極 震え上がりました。「こんなでかい大会でひとりで背負わなアカンねや」って。寄席やったらツッコめるけど、2分しかないんで、なんも言われへん。心の中でずっと笑いをこらえていました。
なかむら 1回戦の動画がYouTubeに上がっているんで、よかったらそちらを見てもらえたら。
──昨年の『M-1』は不出場でしたが、決勝はどうご覧になっていましたか?
京極 同期(たくろう赤木裕)が優勝しましたからね。でも、大阪NSC37期、東京20期の同期は結果が出てなさすぎるので、「行ってくれ!」と思ってました。歴史的な“泥の期”に、ようやく光が差したと。
なかむら 「まさか」でもないし、(ファイナリストのおもしろさは)知っているんでね。でも、3年前の敗者復活でエバースが『ケンタウロス』をしたときは「やっぱりバレたか」と思いました。
──近い人たちの活躍は「自分たちも負けないように」という着火剤になりますか?
京極 もちろんそれもありますけど、何年か前に悔しさはなくなりましたね。舞台に出られているのが大きいのかもしれないです。
なかむら たしかに初動の感情として「悔しい」はあるかもしれないですけど、それによって何が待ってるかって「自分らも決勝に行かな恥ずかしい」という感情ですね。
集大成に向けて絶賛稽古中

──さらに力をつけたおふたりで作る『9番街フェス』はどんなイベントになりますか。
京極 僕らのことを知っている方はもちろん、新規の方も楽しめるイベントです。今回は間が空きましたが、一年の集大成としてきたライブです。
なかむら ほかにも主催ライブはやりますけど、『9番街フェス』はより気合いが入っているし、グレードも上がります。本気で取り組む年一の一大イベントです。
──近年の『9番街フェス』はどんな内容だったんですか。
京極 2023年でいうと、大阪公演と東京公演で、それぞれプロデュースをしたんですよ。僕は東京公演のほうで、でっかいピアノを借りて「Summer」を弾きました。
なかむら “ちょっと変わった”9番街レトロ(※本人とは限らない)が舞台に上がるので、毎回ネタは印象的ですね。
京極 これまでネタゲストは1組も呼んだことないです。あくまで“9番街レトロがネタをやっている”ので。
──(笑)。
なかむら 今回は1日で3公演。それぞれ内容が違いますし、あまり感じたことのない労力を感じています。でも、僕らよりもスタッフさんのほうがイカついと思います。
京極 一番の不安は(元マネージャーの)桑子がいないことですね。正直、これまでは桑子ありきで回っていたところがあるので、今回ノーミスで終われるかどうか。
なかむら みんな必死こいて動いてくれています。助かりますね。
──今年はどんな雰囲気になりそうですか?
京極 ダイナミック。
なかむら 例年にも増してお金がかかっているだろうな、という感じはします。
京極 何をするかは言えないですけど、これまでになかった稽古をやっています。
──それぞれ楽しむのはもちろん、3公演通しで見るのもよさそうですね。
京極 そうですね。もちろんそれぞれでもいいのですが、通しで観たほうが「何種類やんねん」と感じられておもしろいと思います。
なかむら バラバラすぎるところが共通点です。劇場は完売しているので、できれば配信で3公演観てほしいですね。

『帰ってきた9番街フェス』
2026年9月28日(月)
場所:ヒューリックホール東京(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町センタービル 11F)
第1部:開場15:00/開演15:30
第2部:開場17:00/開演17:30
第3部:開場19:00/開演19:30
配信チケットはこちら
※配信チケットの販売は10月5日(月)12:00まで
※見逃し配信期間は10月5日(月)23:59まで
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