長年「若者のテレビ離れ」が指摘され、TikTokでは違法アップロード動画が出回る今、テレビ番組はどのような価値を求められているのだろうか。
『激レアさんを連れてきた。』『キョコロヒー』『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』『秋山と○○』シリーズなどを手がけるディレクター・舟橋政宏(テレビ朝日)と、出演者かつ視聴者としてテレビバラエティを愛するタレント・でか美ちゃん。
でか美ちゃんは舟橋の携わる番組のファンで、Xで感想をツイートしまくっていた。その一方で舟橋も、彼女の出演番組やトークイベントをチェックしており、自身の担当番組にゲストで呼ぶようになったのが縁の始まりだ。
互いに関心を寄せ続けてきたふたりが、今回初めてじっくりと言葉を交わす。制作者と演者、異なる角度から語り合う“現在のテレビ”とは?
※取材は2026年5月7日(木)に実施しました
“おもしろいだけの番組”は終わってしまう

でか美ちゃん わたし、テレビ朝日の『バラバラ大作戦』っていう枠が大好きで。特に初期は、若手スタッフがブレイク前の若手芸人さんを起用することが多くてワクワクしました。視聴者投票やTVerの再生数が悪かったら打ち切りになるシビアさも斬新でした。
舟橋 ぼくも最初のころは、自由な枠が始まったと思って『秋山とパン』を立ち上げたんですよ。
でか美ちゃん ロバート秋山(竜次)さんのむちゃくちゃぶりがすごくて毎回楽しみにしていたのに、半年で終わっちゃったんですよね……。
舟橋 開始するにあたって、「マネタイズには気をつけてね」と言われてはいたんです。でも「またまたー。おもしろければ続くんでしょ」と思ってまったくマネタイズをしなかったら、ちゃんとすぐに終わってしまいました(笑)。
でか美ちゃん 舟橋さんの演出している『キョコロヒー』は、『バラバラ大作戦』から始まってもう6年目ですよね。この番組はもはや視聴者にとって居場所になってる感じがあるじゃないですか。みんな「『キョコロヒー』が終わったら、テレビおしまいだろ」って思っている。
だから、先日の番組イベントで、最後に齊藤京子さんとヒコロヒーさんが珍しく涙して「この番組をなるべく長く続けていく」みたいに言っていて、おふたりにとっても大事な番組なんだと改めて知ってグッときました。
舟橋 感謝を伝えて終わる、というのは決まっていたんですけれども、涙の展開となるとは思ってませんでした。すごくエモーショナルでしたね。演者の方の「続けたい」っていう思いは何よりも力になるし、視聴者の「絶対終わらせてほしくない」みたいな熱もありがたいんですよ。
でも、会社に対して「演者さんも視聴者も期待してくれてるんです!」と言うだけではダメじゃないですか。ぼくの番組は熱心なファンに愛してもらえることが多いので、その人たちのためにも視聴率や配信の視聴数で結果をちゃんと出さなきゃいけないんですけど……なかなか難しいですよね。
テレビ最終章は「YouTube化」?

でか美ちゃん 最初のころは、人気投票で存続を決める『バラバラ大作戦』のやり方にワクワクして、番組ファンとしても「俺たちがこの番組を応援するんや!」って熱量が高まった実感はあるんです。でも、テレビなのにだんだんYouTuberみたいな世界観になって、演者さんもスタッフの方々も大変だろうな……って複雑に思い始めたところもあって。
舟橋 たしかに「観てもらわないとヤバいんです!」ってウラの事情を視聴者に伝えるのって、“テレビ最終章”って感じがしますよね。いい意味では、“推し活”感があって一生懸命観てもらえるんだけど、逆にいうとあとがないように思える。マラソンみたいにずっと走り続けなきゃいけないから、番組側も視聴者側も苦しくなっちゃうのは正直あります。
でも「バラバラ大作戦」は、いまだに入社1〜2年目の若手が、特番じゃなくてワンクール担当できる可能性がある枠として貴重なんです。新卒の子がいきなりNetflixで番組を作ることはできないけど、テレ朝ならできるっていうのは魅力だと思いますし。
でか美ちゃん 舟橋さんは、魔が差しそうになることはないですか?
舟橋 魔、ですか?
でか美ちゃん わたしは、コメンテーターの仕事をさせてもらうようになってから考えちゃうんですよ。発言のバランスには気をつけてるんですけど、たまに「思ってること全部言えたらラクだし、そっちのほうが売れるだろうな」って魔が差しちゃいそうになるときがあって。でも度胸もないし、炎上するのも嫌だから、留(とど)まれてるんですけど。
舟橋 ぼくも、そういうリスクを取った番組作りはしないように気をつけています。演者さんが番組を続けたいと思ってくれてる場合は、なんとしてでも存続させなくては、と思いますし。もちろん制作スタッフの生活もかかってるので。
でも、自分の性格的にも能力的にも、露悪的なことをしたり、ネットニュースになるような刺激の強い企画をかましたりすることができないんですよね……。もちろん過激でおもしろいことをしてみたいという衝動もあるし、そのおもしろさも知ってるからこそ、それがうまくできない葛藤はありますね。

でか美ちゃん そのベースがあるから、わたしは舟橋さんの番組が好きなんだろうなぁ。『秋山とパン』も『激レアさん』も『キョコロヒー』も、観ていて嫌な気持ちになることが本当にないんです。舟橋さんは、昔からそういう性格なんですか?
舟橋 どうだろう。若手のときに先輩に言われた言葉は大きいかもしれないです。「視聴者にとっておもしろいのはもちろん、ロケ先で協力してくれた人たちもいい思い出になって、制作的にも手応えがあって、演者さんも楽しくて……みたいに、関わった全員が“よかった”と思えるのが正解だからね」って。
その感覚を大事にしているので、たとえば演者さんが収録中にめちゃくちゃウケても、よくない誤解をされそうだったら、いったん編集で落とすこともあります。その上で演者さんに確認を取って復活させることはありますけど。
数字を気にしないと、好きな表現も続けられない
でか美ちゃん 舟橋さんみたいに「なにがなんでも数字を取るんだ!」って人でなくても、数字を気にしていることは、みなさんにも伝わってほしいですね。
わたしもそうなんですけど、ニッチな方向に行ってる人とかコンテンツって、「数字は気にせず、自分の好きなことを貫いている」とか思われがちじゃないですか。でも、数字がないと好きな表現だって続けられない。
舟橋 そうですね。ぼくも「なにがなんでも数字を取るんだ!」と思ってはいます(笑)。
でか美ちゃん たまに言われるんですよ、「でか美ちゃんはバラエティ番組のど真ん中で活躍したいタイプではないよね」って。そのたびに「いや、ど真ん中で活躍できるならしたかったよ! 数字とともに生きてみたかったよ!」って思うんです。「独自路線だよね」で済ませないでほしい(笑)。
舟橋 この世界にいる人はみんな多かれ少なかれ、そういう気持ちはありますよね。

でか美ちゃん だから、この記事も多くの人たちに絶対リポストしてほしい。もちろん、SNSってみんなそれぞれのスタイルがあるから、おもしろいと思ったものすべてに言及するのは野暮だっていう気持ちもわかるんです。でも今回ばかりは、読んでくださった方、ぜひ拡散お願いします!
舟橋 ぼくからもお願いします。
でか美ちゃん なぜかこういう「お願い事」をまっすぐにできない人間なんですけど、これからは言っていこうと思います。
「最近の若者はテレビを観ない」は本当なのか?
でか美ちゃん 「最近の若い子はテレビを観ない」ってよく言われますけど、あれも違うなって思ってて。実際、TikTokとか見てると、テレビ番組の違法アップロード動画がめちゃくちゃ流れてきて、すごい回っているじゃないですか。
わたし自身も、出演した番組が放送された直後よりも、違法アップロードされたときのほうが反響がすごいんです(苦笑)。なんでテレビ番組の違法な切り抜きがバズるかって、結局プロの作る映像がおもしろいからなんですよね。
舟橋 違法アップロードは絶対ダメですけど、ひとつ思うのは、TikTokとかの違法アップロードって「ここからがおもしろいところなのに……」ってとこでぶった切られてません? オチの前で終わっちゃうというか。あと、こっちがめちゃくちゃ気を遣ってる「間(ま)」も削られていることが多くて……。
なんか最近、世の中の「おもしろい」の感覚が変わってきてるような気がして焦ります。結局、オチがどうとか、絶妙な間っていうのはどうでもよくなってて、共感するかどうかが重要なんだろうなぁ。せめて違法アップロードの再生回数も、番組の評価に反映されれば、ガマンもできるんですけど(笑)。
でか美ちゃん 前に某バラエティ番組が違法アップロードの再生回数も含めて「話題沸騰! 総再生数○億回!」って打ち出しているのを見て、これアリなんだ!って笑いました。そうやってあっけらかんと言っちゃうのは新しい。
舟橋 公式で上げた動画って、なぜか全然バズらないんですよね。なんでなんだろう?
でか美ちゃん でも、テレビのいいところってネットとは無関係なところに届くことだと思っていて。わたし、テレ東の『昼めし旅』にちょくちょく呼んでいただくんですけど、あの番組が突然TVerから引き上げたんですよ。
舟橋 もともとTVerに流していたのを引き上げるって珍しいですね。
でか美ちゃん そうなんです。でも実際、出演後にエゴサしても、観てくれてるのはわたしのファンだけで、SNSでの反響は少ないんです。
そのかわり、町中では明らかに声をかけてもらう機会が増えました。自分のファン層とは異なる、おじいさん・おばあさんから「『昼めし旅』出てたよね?」って言われて。みなさん、テレビ観ながらご飯食べてるらしくて。
舟橋 あぁ、それがリアルですよね。
そういえば『激レアさん』のイベントをやったときも、お客さんの6割くらいがご年配の方だったんですよ。どうやら『報道ステーション』からの流れで観始めた方が多くて。ぼくはその客層に気づいてなかったから、Hi-Hi・岩崎一則さんの企画をやっちゃいましたけど(苦笑)。
今、SNSとかTVerばっかりを意識しがちだけど、ネットの外にもそれと同じくらい大きな世界がある。ネットでバズっても視聴率には反映されてなくて、苦戦している番組も少なくないですし。「ネットで話題」といっても、それが世の中でどれくらいの面積を占めるのかは、常に意識しないと忘れてしまいがちですね。

後編は8月13日(木)19時に公開予定! ディレクター目線でオファーしたくなる人や、思わず圧倒された出演者など、“人”に焦点を当てて語り合います。
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