5人組ダンス&ボーカルグループ「STARGLOW(スターグロウ)」のメンバーとしてデビューが決まったKANON。
彼が「日穏(カノン)」名義で映画初出演にして初主演を果たした『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』が、2025年10月24日から公開されている。
映画批評家の相田冬二は、日穏の演技について次のように評した。
「日穏には、不正解の時間をも肯定する抱擁力と優しさがある。だから、主人公の焦りや戸惑い、黙考、熟考、敗北、切なさ、いたたまれなさ……そのすべてに、うしろめたさや後悔が薫らない」
目次
主演・日穏が最も輝く主人公像
何食わぬ顔なのに実はひどく緊張している。
マイペースに見えて手に汗握っている。
私たちは、そのような人間を知っているし、私たち自身、そのように振る舞った経験があるにもかかわらず、映画にはそのような状態の人物はほとんど登場しない。
もし、そのような人物がいたとしても主人公にはならないし、サブキャラクターのそうした部分にスポットを当てることは、時間的な制約から鑑みて、かなり困難だからである。いや、時間的制約というより、映像として「映えない」という問題がある。映えないから、映像フィクションの住人に加わることが難しい。
『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』という謎の魅惑を放つタイトルを有する映画はまず、そのような人物を主人公に据えたという点において、きわめて野心的である。では、その野心はどこに向かっているのか。私は幸運にも監督・木村聡志の意図を知らない。なので、観客のひとりとして、次のように断定する。
主演・日穏が最も輝く主人公像がこれだと確信していたから。
推理に過ぎないが、この確信ほどアヴァンギャルドなものもない。しかし、そう断定させる理由がたしかにあるのだ。
何も想像しないと決めること
ファーストシーンには映画のすべてがある。
本作の冒頭、横移動の長回し。うつむき気味に、しかし、遅くもなく、また速くもなく、歩行する青年の横顔が、画面右手から左手に向かって進んでいく。どうやら、ただならぬことが起きたに違いないと、観客の深層には鈍い疑惑が浮かんでは消える。
カメラは青年の横顔に追随するが、彼の前髪に隠れて、その瞳の表情は見えそうで見えない。私たちは、何かを想像するか、あるいは、何も想像しないか、という二者択一を迫られる。
つまり、ここには、万人を納得させる説明がまるでないにもかかわらず、いや、だからこそ、ぼんやり見てはいられなくなるのだ。何かを想像しようとすること。何も想像しないと決めること。いずれも、意志的な選択である。
なぜか。
その眼差しがギリギリのところで感知し得ない(しかし、想像する者にとっては感知の可能性がもたらされる)にもかかわらず、この被写体がひどく魅惑的だからにほかならない。やがて、魅惑的なタイトルが浮上する。『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』。能天気であると同時に趣の深い文字の連なりが、目線が見えそうで見えない主演・日穏の「魅惑×魅惑」のかけ合わせに到達するまで、あっという間だ。

ただただ目が離せなくなる日穏の演技表現
この映画を要約するほど不毛なこともないと思うが(ファーストシーン同様、全編つぶさに見つめるために本作は存在している)、ひとりの男子高校生と複数の女性たちとの対話がめくるめく呼吸で繰り広げられる、とひとまずはいえる。
女性は多岐にわたり、同年代たちのみならず、年長の女性、母親世代の女性までが、主人公の前に現れる。全員がなんらかの謎を秘めており、その謎はあからさまなものから些細なものまで千差万別だが、物事とその推移にとかく理由を探しがちな主人公にとっては、その都度、大きく立ちはだかる壁となる。

主人公はスカッシュ部に属しており、本来は談話室でしかなかったこの部活はひょんなことから、団体戦に出場するまで本格化するのだが、スカッシュというスポーツ競技の本質が「壁打ち」であることは、主人公と女性たちの対話が意味するものをある程度示唆するだろう。

だが、ファーストシーンがそうであったように、私たちはのんびり眺めてなどいられなくなる。
数々の対話シチュエーションにおいてホスト役を務める日穏の演技表現から、ただただ目が離せなくなるからである。
生真面目であり、頭も回り、語彙も豊富で、考えすぎのきらいはあるとはいえ、それなりに相手を尊重した上で対処することができる主人公は、男子高校生としてはけっしてコミュニケーション能力が低いわけではない。
しかし、彼は、女性たちにこてんぱんにやられる。ほぼ毎回といっていいくらいに。彼は、彼の優秀さによって、彼のきめ細やかさによって、彼の善良さによって、女性たちに破れ去るのである。
誤解があるといけないので言い添えるが、対話とはラブアフェアではない。文字どおりの対話である。主人公は、いわゆる「どうでもいいおしゃべり」ができない。相手の言葉を理屈で解釈し、理屈で返した結果、こてんぱんにされてしまう。

このテクスチャの、このスリルの、このスピードの…!
日穏は、淡々とした風情に、緊張感と手の汗を滲ませ、沈黙に陥らないようにするあまり沈黙を招いてしまうという、頭脳のハレーションをさりげなく垣間見せる。その絶妙な精緻さは、ほとんど曲芸の域に達しているが、デフォルメは微塵も寄せつけず、生き物からあふれ落ちるリアリティだけを着実に積み重ねていく。なぜ、そんなことが可能なのか。
その表情に、明快な緊張感やあからさまな手の汗は刻印されていないにもかかわらず、平静を装う純情のフラットな地平、己のバイオリズム(いや、ヴァイブスかもしれない)を守りきろうとする愛らしい矜持などが、漂い拡散していく。
このテクスチャの、なんと豊かなことか!

それぞれの女性を前にしたとき、彼のありようは微細に変幻しており、マイペースに見える彼が実はそうではなく、何食わぬ顔などこの世界に存在しないことが露呈する。
このスリルの、なんと優雅なことか!

主人公は走らない。それは対話においても同様で、相手の言葉に耳を傾け、自分の内部から言葉をつかみ取る手間を惜しまない。しかし、その都度、失敗する。
このスピードの、かけがえのなさよ!

不甲斐ない時間を生きるすべての世代の人々へ
本作には印象的なセリフがいくつもあるが、「半分は正解。もう半分は不正解」という言霊こそ、日穏の芝居にふさわしいものもない。
私たちは、正解半分、不正解半分の日常を生きている。だが、こうした無意識が、映像フィクションの中で顕在化することはごく稀である。
日穏には、不正解の時間をも肯定する抱擁力と優しさがある。だから、主人公の焦りや戸惑い、黙考、熟考、敗北、切なさ、いたたまれなさ……そのすべてに、うしろめたさや後悔が薫らない。
青春期のみならず、不甲斐ない時間を生きるすべての世代の人々に、日穏の演技フォームを献上したい。
映画『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』

全国順次ロードショー中
監督・脚本・編集:木村聡志
主題歌:カネヨリマサル「君の恋人になれますように」(Getting Better/Victor Entertainment)
出演:日穏、今森茉耶、松田実桜、西尾希美、一ノ瀬瑠菜、加藤綾乃、吉井しえる、高橋璃央、瑚々、根矢涼香、平井亜門、綱啓永、中島歩、前田旺志郎、安藤聖/マキタスポーツ
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)2025「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」製作委員会
 
									『STARGLOW』最新情報をチェック!
BE:FIRST(ビーファースト)、MAZZEL(マーゼル)に次ぐ3つ目のボーイズグループとして、SKY-HIが主宰するマネジメント/レーベル「BMSG」から誕生した5人組ダンス&ボーカルグループ「STARGLOW(スターグロウ)」。
											2025年9月19日、オーディションプログラム『THE LAST PIECE(ラストピース/通称:ラスピ)』の最終回で発表されたSTARGLOWのメンバーは、RUI(ルイ)、TAIKI(タイキ)、KANON(カノン)、GOICHI(ゴイチ)、ADAM(アダム)の5名。同日がSTARGLOWの結成日となった。
											2025年9月22日、プレデビュー曲「Moonchaser」でプレデビューを果たした。
 
              
                      
                  
											 
							




 
											 
							 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
							 
							 
							 
							
 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
              
             
              
             
              
             
              
             
              
             
              
             
              
             
              
             
              
             
              
             
              
             
              
            