「チンチロ」は、サイコロ3つだけで勝敗が決まるシンプルな勝負。計算も戦略も通用しない、サイコロを振った瞬間にすべてが決まる。そんなシンプルな競技で霜降り明星・粗品を中心に集まった「四兄弟」こと、シモリュウ(前田龍二、シモタ)とダブルヒガシ大東翔生は武道館を揺らし、横浜アリーナを沸かせ、ついに過去最大規模となるさいたまスーパーアリーナへと転がり込もうとしている。
なぜ四兄弟による「チンチロ」は、ここまで熱狂を生むコンテンツになったのか。計算ではたどり着けないおもろいの作り方を聞いた。
一番おもろいギャンブル集団の自負

──『粗品 Official Channel』で毎週金曜日に配信している「四兄弟」でのコンテンツですが、改めてその始まりを教えてください。
粗品 当時のことはあまり覚えてないですけど、登録者が100万人を超えて、曜日ごとに違うジャンルのことをしたいと思ったときに、四兄弟で何かやりたいと思ったんですよ。そもそも、2019、2020年に、YouTubeや地上波の番組でギャンブルネタをやったとき、思いのほか反響や手応えを感じていたんです。今は素人がTikTokでやったり、しょうもない芸人がマネしたりして大衆まで落ちてますけど、それってギャンブルが持つ魔力で、数字を持っているコンテンツだということなんですね。自分が市場を引っ張ってきた感覚があるなか、「四兄弟が一番おもろいギャンブル集団」という自負があったし、偉そうですけど、“みんなにおもしろい後輩を見てほしい”という気持ちもあって声をかけたんやと思います。
──2022年に「ギャンブル四兄弟」として初登場し、そのあと『チンチロ』はビッグコンテンツに。ここまでの反響は予想されていたんですか?
粗品 予想していなかったかもしれないですね。最初は再生数も10万台で渋かったんですよ。個人的な理念として、20万回行ってない新企画は打ち切りにするんですけど、四兄弟のコンテンツと、同じく渋かったフリップネタライブ『電池の切れかけた蟹』は絶対に観てほしいから残しました。ほんなら徐々に伸びてきて、今や大看板コンテンツなんで、この3人には世話になってます。
前田 街中で声をかけられるときって、100%「粗品さんのYouTube観てます」なんですよ。100万人行ったあとに出させてもらえるなんて普通ないし、遊びでやってたことがこんなことになるなんて、嘘みたいです。
シモタ 最初はただの会議室でやってたチンチロが、さいたまスーパーアリーナですからね。ゴールはわからないですけど、このあとがどうなるか楽しみです。最終的には、(『ドラゴンボール』の)界王神様が出すカッチン鋼でサイコロを3つ作って「ガンガラガン~」ってやりたいです。
前田 「ガンガラガン」をどう文字にしたらええねん。
大東 僕、まだ大阪におるんですけど、夜の街とかエグいっすよ。ミナミでヤンキー20人ぐらいに囲まれて「翔生くんや!」って言われましたもん。
前田 俺らの呼び方で呼んでるやん(笑)。
大東 ヤンキーしかり、夜の世界の人しかり、普通に活動してたら認知されへん層が観てるんで、ほんまにすごいと思います。最近は飲み屋に行ったらどんぶりとサイコロが絶対にあるじゃないですか。マジでムーブメントが起こってますよね。

ヤジもチンチロの魅力に
──イベントとしての『チンチロ』は、回を重ねるごとにお客さんの熱も高まっているイメージもあります。
大東 横浜アリーナでは、聞いたことのない野太い声で「翔生ー!」と言われました。あんな呼ばれ方したの親父以来です。
粗品 もともと「スポーツ観戦みたいにしたい」という思いがあったんですよ。前回の横アリも、ヤジが多くて、スベってるヤツがいたり、大事なタイミングでしゃべるヤツがいたり、お客さんによっては不快だったヤジもあったらしいんです。でも、俺らが反応せんかったらええだけやし、野球観に行ったらそんなヤツもおるじゃないですか。そうしたキモいヤジも、大衆化されたスポーツみたいになってうれしかったですけどね。
──『チンチロ』では、四兄弟ならではのノリも生まれていますよね。
大東 それぞれ代名詞があるのがすごい。シモちゃんの「OK!Boy!」も人気ヤバいやん。
シモタ 写真撮るときに「『OK!Boy!』やってください」って言われるけど「大事にしてるんで」って全部断ってる。
大東 ブランディングしてるやん(笑)。
粗品 武道館でも横アリでもみんな「OK!Boy!」がいつ出るのか楽しみにしてたんですけど、あれってシモタが勝ってないとできないノリなんですよ。シモタがお客さんの前で勝たへんからさ。
シモタ なんで勝てないんやろ?
──レギュラー回は強いのに、客前だと調子が狂うこともありますよね。
大東 僕がまさにそうで、全然勝てないんです。ほんまに何が起きるかわからんし、それこそ勝ったらできるノリとか、負けたらできるノリがありますけど、出目次第なんでどうすることもできないんですよ。
前田 そう。こっちは何も準備できへんから、始まる前はわけわからん感情ですよ。お客さんも多いし、ふわふわしてて現実見られへん。
──2024年に横アリで開催した際は約2万人が来場しました。奇跡も多く起こりましたよね。
前田 エグかったっすね。出目で見せられたのがよかったです。たまアリもいい出目が出てほしいな〜。正直、客前は出目がいいと盛り上がるんで。
粗品 前回がすごかっただけに、プレッシャーもあるし、ハードルは上がるよな。
大きい会場で起こしてきた奇跡
──レギュラー回を含めて、みなさん自身の記憶に残る印象的なシーンはありますか?
前田 僕は2023年の『ABCお笑いグランプリ』の前日にやったLINE CUBE SHIBUYAの回です。そこで大東がエグい出目を出して「『ABC』優勝してきます!」って、そのまま優勝したのはすごかった。
大東 エグい沸き方しましたもんね。
粗品 僕はいつも3人に笑わせてもらっているんで、何度も切り抜き動画を観ちゃいますね。翔生くんの「ポンポンポンアホ!」や、龍二の「俺のラマーズヒッヒッフゥ~」など、即興でやるリズム系が好きで腹ちぎれます。
シモタ 今でも怪しんでるのは、横アリでワシが親のときに出た「シゴロ」(前田)、「シゴロ」(大東)、「アラシ」(粗品)です。あれはほんまに疑いました! 粗品さんも僕が見てないところでアラシ出したし。
粗品 そういうときって、だいたい3人で喜ぶんですよ。でもアラシが出たときは、サッカーで点を決めたあとみたいに、駆け寄ってきたふたりも振り切って喜んじゃいました。興奮しましたね。
前田 どうしてもやりたいパフォーマンスがあるヤツやん(笑)。
粗品 ああいうことするサッカー選手の気持ちがよくわからなかったですけど、いつの間にか振り切ってました。
大東 あと、YouTubeには載せない「幻のもう一周」があるんですよ。そこでは、ほんまにおもろいことが起こり続けてる。これは動画に出ないんで、ぜひ会場に観に来てほしいです。
──映像では体験できないことも起こる。だから現場に行くべきコンテンツなんですね。
粗品 武道館では奇跡の出目があって、そのあとの横アリはハードルが上がり倒した状態だったけど、また別のエグさがあった。あれだけ盛り上がってたお客さんから、恐怖で引く音が聞こえたのは新鮮でした。
「チンチロ」が生む一体感に期待して

──今回のさいたまスーパーアリーナ公演は新たなグッズも発売されます。今回は、そのスカジャンを着ていただいてますが。
粗品 グッズの制作は3人にも言わず、ほんまに水面下で動いてたんで、どうやった?
大東 すぐ売れそう。
前田 むちゃくちゃよかった! グッズとして最高っすね。素材もしっかりしてるから、普通に私服で着たい。
シモタ 雨も弾きそうやね。傘がない人も安心。
前田 なんで傘を買わずにこれ買うねん。ほかにも、サイリウムもあるし、ライターとか携帯灰皿とかターゲットに絞ったものもあってめっちゃおもしろかったです。
──さいたまスーパーアリーナ公演でも、何かドラマが起きることを期待してよいでしょうか。
粗品 お客さんに言いたいのは「したことない体験ができる」ということなんですよ。僕は、音楽ライブやお笑いライブを観に行ったときの数十倍の多幸感・満足感を得られるのが『チンチロ』やと思っていて。たとえば、ディズニーのソアリンが実装された当初、アトラクションが終わると、何十人といるお客さんから自然と拍手が起こったんです。自分も一緒になって拍手したんですけど、その空間にめっちゃ感動したし、今でも忘れられないんですね。それって一体感やと思うんです。
一体感を生む素晴らしいコンテンツはこの世の中にいっぱいあるけど、それの数十倍エグいのが『チンチロ』やと思ってください。横アリでは、何人かの客のApple Watchに「聴覚が一時的に失われる恐れがあります」と警告が出たくらい、声の圧がすごかった。ライブって音量規制がありますけど、それを演者ではなく、客側が破るライブって『チンチロ』でしか聞いたことがない。我々は中央にいますが、立ってられへんぐらいの熱気と音が体にくるし、ほんまに感動で泣きそうになりながらチンチロをやっているんですよ。
お客さんも人生で感じたことのない種類の感情になると思うし、エグい一体感を感じられると思います。あと、先に言っておくと、これまでなんとなく1年に1回大きいところでやってきましたが、たまアリを最後に、いったん客前ではやらんと決めています。「毎年やるから来年行こう」ではなく、今年、貴重な体験をしに来てほしいなと思いますね。

『チンチロ』
2025年11月3日(月・祝)開場12:00/開演14:00
会場:さいたまスーパーアリーナ
出演者:粗品・前田龍二・シモタ・大東翔生
料金:7,777円
一般販売受付期間:〜11日2日(日)23:59まで


『Quick Japan』vol.180
2025年10月10日(金)発売
サイズ:A5/並製/144ページ
定価:1,700円(税込/本体1,870円)
【QJストア限定版】インタビュー音声(ディレクターズカット版)付き





