小学生時代のみなみかわ、「無害で無能」の烙印を押す担任教師に“ヤケクソ”の復讐。「テスト中、答えをすべて消しゴムで…」<映画『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』レビュー>

タイ映画のヒット作『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のハリウッドリメイク版、『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』を観たみなみかわ。天才高校生が前代未聞のカンニング計画で世界を欺く、心躍るスリリングな本作に、“普通のバカ”の烙印を押されたという小学生時代の屈辱を思い出す。
注目の新作映画を熱血レビューする「シネマ馬鹿一代」第14回。
忘れられないテストの時間
「自分はそんなに頭がよくないんだ」と気づいたのはいつだろうか。自慢じゃないが、かなり早い段階だったとは思う。
小学校のころ、通知表は「よくできる」「できる」「もうすこし」の3段階評価だった。
小学5年だったか。キレイにずらっと「できる」にしか◯がなかったときがあった。「よくできる」も「もうすこし」にも◯がない。30項目くらいあるのに、すべて一直線で◯が並ぶ。通知表を印刷するときの試し刷りかな?と疑ったほどだ。
クラスで頭がいいとされる子は、「よくできる」に20個以上◯がある。普通の子でだいたい7〜8個は◯があった。
クラスで一番頭が悪いとされるK君は、「よくできる」が0個で、「もうすこし」に7〜8個◯があって、それを自慢げに「最悪や‼ また『よくできる』0個や〜!」と私たちに見せびらかしては踊っていた。
そんなK君を笑いながらも、私は恥ずかしくて通知表を見せられなかった。一列に並んだ「普通」の烙印は私のすべてを評価してるようだった。
当然頭もよくない。かといってバカに振り切れもできない。特徴もない「普通」。それだけならまだいい。その中で、なんの取っかかりもない無能と言われてるようだった。
通知表をもらった日は、家に帰る足取りが重い。なぜなら親にこれを見せねばならない。あなたの子供は普通の、よくないバカだと伝えなければならない。
だんだん先生にムカついてきた。疑問に思わなかったか? この1列の「できる」に。自分の生徒が絶望してるぞ? 1項目くらい「よくできる」に入れてもよかったんじゃないか?
いや、そんな贅沢は言わない。「もうすこし」に◯を入れられなかったか? どうせならバカに振り切らせてくれよ!
何をもってして、全部「できる」なんだよ? お前の感覚だろうが。通知表つけるの途中で飽きたんか?
さんざん独り言のように悪態をついて、家路についた。親は私の通知表を一瞥(いちべつ)して何も言わなかった。我が子の将来を案じただろう。
そして次の学期のテストの時間。一生忘れられない出来事が起きた。前の学期の通知表であんなに悔しい思いをしたのに、やっぱり普通のバカだから、そんなこと忘れてのほほんと過ごしていた。
算数のテストだったと思う。私の席は前から3列目あたりにあって、先生から見て中央あたりに座っていた。
バカなりに算数を解いていた。難しかったし、当然正解じゃないだろうな〜と思いながらも、解答欄を埋めていた。
すると斜め前に、頭がいいとされている女子が座っていて、答案用紙の端っこがこちらから見えるではないか。
別に私が体をのけぞって見てるわけではない。ただその子は余った時間で絵を書いてるのか、答案用紙がこちらにだらんと垂れていた。
最後のほうの答えが見える。いや目に入ってしまったんだ。自分の答案と照らし合わせた。合っている。不安だった答えが合っている。よかったと胸を撫で下ろしていると、鋭い視線を感じた。前に座っている先生が私の行動を見ていた。にらんでいる。私と先生は目が合った。
先生はこう思っただろう、「カンニングしやがったのか? こいつ普通のバカのくせにズルもするのか?」。先生の眉間の深いシワがそれを表していた。
私は沸々と怒りに燃えた。なんでこんな目に。私はカンニングなどしてない。通知表をつけるのに飽きて、遊び心でなんの取り柄もない“普通で無害の無能”のレッテルを私につけた挙句、犯罪者を見るような目を向けている。
私はすぐさま消しゴムで答えをすべて消し、適当な数字で解答欄を埋めていった。こうなったらヤケクソだ。ビビりやがれ。先生はこう思うだろう、「こいつカンニングしてたのに全部間違ってる‼ イカれたバカだ‼」と。
通知表だけでは測れない

『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』を観た。
日本でもヒットした、2017年のタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』をハリウッドでリメイク。
貧しい家庭に育つ天才少女リンは、名門高校に特待生として入学する。ある日、リンは落第の危機に陥った親友グレースを助けるため、試験中に奇想天外な方法で解答を教えてしまう。グレースの恋人で弁護士の息子であるパットは、そんなリンの才能に目をつけ、学校の劣等生たちを救う“裏ビジネス”を持ちかける。やがてその計画は、前代未聞のカンニング作戦へと発展していく。

私のカンニング(いやカンニングではないけども)とは比べ物にならない方法の数々。外国人が強いられる貧困と、圧倒的なヒエラルキーの壁を覆すために、天才がイカれたカンニングを発明する。いや、もはやカンニングではない。通知表だけでは測れない、学校という社会を生き抜く主人公の姿を観てほしい。
ちなみに、私がカンニング疑惑をかけられた学期の通知表は「もうすこし」が2個増えて、メモ欄に「落ち着いて授業を受けましょう」と書かれていた。
映画『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』

2025年7月11日(金)より新宿バルト9ほか全国順次公開
監督:J・C・リー
脚本:J・C・リー、ジュリアス・オナー
出演:カリーナ・リャン、ジャバリ・バンクス、ベネディクト・ウォン
配給:ギャガ
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