鞘師里保が語る“完璧主義”だから心がけたい、自分への向き合い方。人生をおもしろくする日々の工夫とは

2025.6.7

文=羽佐田瑶子 撮影=草野庸子 編集=菅原史稀


鞘師里保が、『Quick Japan』vol.178のSPECIAL EDITION版表紙&20ページ特集に登場する。

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「常に自分を更新していきたい。そのためにさまざまなことを知りたい」という想いを持ち、ジャンルに捉われずあらゆるものに関心を寄せる鞘師の内面にフィーチャーする本特集では、これまでの道のりを振り返りながら、「変わり続けるためには知ることが必要だ」と感じた理由について本人が語るソロインタビューを掲載。

ここでは、QJWeb特別版として本誌未収録のインタビューを公開する。

毎日、微調整

──『十一人の賊軍』で映画初出演、AKB48への振り付け提供、そしてソロアーティストとしてメジャーデビューが決定するなど、果敢に挑戦を続けていますね。今度のファンミーティングではDJにチャレンジするのだとか。(編註:取材は2025年4月に実施)

鞘師 ファンミーティングは、実験的なことをしてもハプニングも含めて楽しんでくれる空気感がありますし、途中段階を見せられる信頼できる人たちが来ているので、やってみようと。そういう意味では、私にとって“研究発表”の場となっているので、ファンミで新しいパフォーマンスの種類を増やす、というのがルーティンになってきています。

──デスティニーズ・チャイルドやリアーナなどがお好きということも、よく話されています。2000年代の洋楽が原点にありつつ、ラジオのプレイリストではラナ・デル・レイなど新しいヒットナンバーを選曲されていて、DIVAに造詣が深いところもDJに反映されるのではないかと期待しています。こうしたアーティストは、ご自身にどう影響しているのでしょうか?

鞘師 母が車にウーファースピーカーを取りつけていたくらい、音楽好きだったんです。特に2000年代のR&BやHIP-HOPを聴いて育ったので、今でも当時の曲を聴くと血が騒ぎますし、実家のお味噌汁を飲んだときのような安心感もあります。

DIVAは存在も含めて、ひとりでステージに立っている姿がカッコイイですよね。いろんな人生経験を経て、あの境地に達していると思いますけど、普段「この先どうしようかな」「強く生きられるかな」と悩むときにDIVAのステージを見ると、理由もなく強くなれた気がする。そういう気持ちにさせてくれるエネルギーに憧れます。

──ステージを見ているだけで、根拠なく自分も強くなれるっていう感覚は、すごくわかります。

鞘師 何年か前に、いろいろ考えすぎてしまって夜に街中を歩いていた時期があったんです。帰らなきゃいけないけど悶々としてて、最後気持ちを上げたいときにデスチャやビヨンセの曲を聴いていました。誰も見ていないので、お尻を振ってノリノリで(笑)。

──憧れのDIVAのようなパフォーマンスに寄せていこうと思ったことはあるのでしょうか?

鞘師 その人にしか出せないものがあるということが根本にあった上で、自分のやりたいことから想像して「今の私ができることはなんだろう」と考えます。なので、自ずとDIVAのエッセンスを取り入れている気もします。

──“今の自分”の感じをつかむために意識されていることは?

鞘師 なんでもないことですが、まわりの人によく意見を聞きます。あとは、言葉の選び方ひとつ取っても、今の気分なら言える/言えないという感覚に素直になる。それはたぶん、日頃から「今の自分はどの程度だろうか」などと自分の中で考えているからかもしれません。今回、特集の打ち合わせのときに、変わり続けたいってお話をしたのですが。

──ご自身から見て「鞘師里保」というアーティストにしか出せないものを伺ったとき、「わからないけれど、変わり続けなきゃいけないみたいな気持ちがずっとある」とおっしゃっていました。

鞘師 私にとっての変化は、思いきって生まれ変わるのではなくて、毎日微調整している感覚です。感覚的には“扇形”に広がっていくようなイメージで。

ただ、前に進むとは限らないので、日によって強気な日もあればうしろ向きな日もあって、気持ちがわからない日もあります。ムラだらけですけど、それでも、半年前よりかは前向きだと思います。

挑戦する上で心がけていること

──今の鞘師さんが、表現の上で大事にされていることは?

鞘師 「自分に嘘をつかない」っていうのは、すごく心がけています。ファンの方が喜んでくださることを第一に、それでも自分のやりたくないことは頑なに守ります。

──AKB48への振り付けに対する鞘師さんのコメントを読んで、ご自身の意思で受けられたんだなと感じました。自分に対して嘘がないからこそ、出てくる言葉だなと。

鞘師 「新しいAKB48の一面を出してほしい」と依頼されたのはすごくうれしかったです。世間では、ライバル関係にあると見る人もいたモーニング娘。とAKB48だからこそ、この選択がプラスに作用するといいなと思って振り付けました。

AKB48さんも世代交代があり、新しい時代を作っていくんだと魂を燃やす感じはかつての自分と重なりますし、その共通点と異物感がおもしろく見えたらいいなと思いました。

──初めてのことと向き合うときに心がけていることは?

鞘師 とにかく緊張しいなのですが「やるしかない」って、まわりの方にお尻を叩いてもらって挑みます。着実に準備をして、あとは勢い。踏み出すのが怖いこともありますが、やると決めた時点でできるはずですし、この先に何があるんだろうってワクワクが勝っちゃうんです。

生活が停滞してくると、自分に対してつまらなくなってしまうんです。自分の人生をおもしろくする細やかさと範囲は人それぞれだと思うんですけど、私はこういう世界にいるから一歩が大きく見えるだけで、どんな生き方をしていても毎日何か工夫しているんだろうなと思います。

雑味が出てきた

──毎日の工夫の中で、ルーティンはありますか?

鞘師 朝は絶対にコーヒー、それくらいですね。なるべく余裕を持っていたいからなのか満腹状態になるのがあまり好きではなくて、空腹をコーヒーで紛らわすことも多いです。帰ってきたら、長風呂。本を読んだり音源を聴いたりしています。

リハーサルや楽曲制作のときにしがちなのが、同じ音源や映像を何時間も見てしまうんです。長いときは、一度も休まずに10時間連続で聴き続けたことも。

──10時間も!

鞘師 何度も繰り返しながら、改善点をずっと探してしまうんです。そのフェーズに入ると、ほかのことに何も手がつけられなくなってしまう。まわりに受け入れてもらってなんとかなっていますが、要領よくできなくて優先順位とかつけられないんです。(マネージャーさんに)ですよね?

MG 優先順位は、難しいですね。

鞘師 直したいんですが、15年間このままなので変えられないって思うようになりました。モーニング娘。のときも振り入れの動画をもらったら、レッスン前までに500回くらい見てしまって。だから、もう踊れちゃうんです(苦笑)。

──完璧主義ですか。

鞘師 (即答で)はい。

──完璧主義な人ほど、改善点も含めて今の自分を認めるってすごく難しいと思うのですが、自己肯定感に苦しんでいる方に鞘師さんなら、どんなアドバイスをされますか?

鞘師 時間とともに変化していくと思いますが、カウンセラーなど専門家の力を借りるのは大事かなと思います。以前は、普段の何気ないことも全部飲み込んでしまうタイプだったので……疑問を持つ前に、自分の中でろ過しようとしちゃうんです。

でも、雑味が出てきたというか、自分を認める“成功体験”を積み重ねてちょっとずつ自信がついてきました。

──これからも日々微調整を続けて、ご自身を更新し続ける鞘師さんの活躍に期待しています。まずは、メジャーデビュー曲が楽しみです。

鞘師 私も、披露するのが楽しみです。私のことを長く知っている人にも、初見の人にも通じ合えるものがある曲だと思います。

鞘師里保20ページ特集&表紙を飾るSPECIAL EDITION版は予約受付中

QJ178鞘師
『Quick Japan』vol.178 SPECIAL EDITION 鞘師里保特別カバー版 表紙/撮影=草野庸子

20ページにわたり鞘師里保を取り上げる本特集では、「常に自分を更新していきたい。そのためにさまざまなことを知りたい」という想いを持ち、ジャンルに捉われずあらゆるものに関心を寄せる鞘師の内面にフィーチャー。彼女を「ここではないどこか」へ突き動かし、表現者としての進化の原動力となっている“知的好奇心”に迫る。

これまでの道のりを振り返りながら、「変わり続けるためには知ることが必要だ」と感じた理由について本人が語るソロインタビューや、自身に関する創作物の制作過程を知り、新しく発見を得る姿をドキュメントする企画も実施。写真家・草野庸子が撮り下ろしたフォトストーリー「インナー・スケープ」を掲載。思慮深くも自由に漂う精神性を表現する。

『Quick Japan』vol.178は現在予約受付中で、6月18日(水)に発売。通常版の表紙&第1特集にはINIが登場し、SPECIAL EDITIONは鞘師里保の撮り下ろしビジュアルを使用した特別カバーがセットになっている。

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「Super Red」

鞘師里保メジャーデビューシングル「Super Red」
2025年6月18日 配信リリース

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羽佐田瑶子

(はさだ・ようこ)1987年生まれ、執筆・編集。女性アイドルや映画などガールズカルチャーを中心に、インタビュー、コラムを執筆。主な媒体は『クイック・ジャパン』『She is』『BRUTUS』『TV Bros.』『CINRA』など。岡崎京子と女性アイドルなど、ロマンティックで力強いカルチャーや人が好き..

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